003.天界

 私は大勢いる天使の中でも下っ端も下っ端である。

 日々の勤めを終えて戻られる上の方々が快適に過ごせるようにするのが仕事だ。

 親父からの直接の仕事など回ってくるはずもなく、ミカエルの兄貴若頭から仕事を任されている程度だ。

 たまに、ジブリールやラファエルの叔父貴舎弟頭からちょっとした用事を頼まれることもあるが、せいぜいタバコを買ってきたりする程度だ。

 少し前までは、ミカエルの兄貴と衝突し神と袂を分かち、地獄組を立ち上げたルシフェルの兄貴若頭補佐の舎弟が特攻かましてくることもよくあり、毎日気が抜けなかったが、最近では天獄会と地獄組の抗争はかなり落ち着いてきている。

 幹部の方々は流石にまだピリピリしているが、下っ端構成員である天使たちは上からの命令がなければ気楽なものだ。気楽すぎて、たまにカタギに手を出す馬鹿が出ることもあるので、任侠とは、という高説を叔父貴たちが垂れることが多くなる。酒が呑めるのは嬉しいのだが、年寄りの長話は正直辛い。最終的に、大酒呑みの叔父貴たちが満足するまで呑むのだから、付き合って呑んで潰れた下っ端連中の世話も大変だ。

 天獄会のこんな実態が人間カタギに知られたら威厳も何もあったもんじゃない。

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