002.囚われた娘⭐︎

(注意)

自分で書いてて気持ち悪い内容になりました。

虫注意です。

食事中の方マジでごめんなさい。





先日、バカバカしい女王アリ退治をしてそこそこの金を手に入れた俺は、嫌な予感がしたので、急いであの領地を離れることにした。

 もちろんあのバカ息子を置いてだ。

 あいつと一緒に旅をするなんてとんでもない。

 酒場の親父や騎士団の妨害により、どの街に行っても「生贄を逃すな!」と手配書が回っていたので苦労したが、

「あの馬鹿と一緒に行動しつつ領地から無事に帰ってきたやつがいると広まれば、新たにやってくる生贄(賞金稼ぎ)が一定数出てくるだろ、という詭弁が功を奏し、どうにかこうにか領地を抜けることが出来、今は隣の領地にある村で小休止中だ。


 今まで妨害によりろくに休憩も出来なかったからな……


 村には宿屋も酒場もなく、村長の家が宿屋代わりになっているとのことで、そこに泊めてもらえることになったのだが、何故かここでもまた嫌な予感がしている。

 早くここを立ち去るべきだと本能が告げているが、同じ本能がもう疲れた休憩させてくれとも訴えている。




 結局、出された食事類には一切手をつけず、一夜の宿だけ借りることにした。

 また薬でも盛られてたら溜まったもんじゃないからな。




 体を休めていると、階下が慌ただしくなった。たくさんの話し声がする。

 厄介ごとの臭いだな……

 そっと出立の準備をしていると、村長が部屋を訪ねてきた。


「お一人で旅をされていることから、腕には自信のある方だとお見受けします。

 どうかお力を貸してはいただけないでしょうか。

 ここ数日、村外れの屋敷に行った見目の良い若者たちが帰ってこないのです。

 屋敷の周囲で毒ガスが撒かれることもあります。

 その屋敷に様子を見に行った私の息子と娘を助け出していただけませんか。

 お礼はいたします!」


 厄介ごとだった……

 人さらいかよ。

 この手の依頼を断ると後々さらに厄介なことに発展することがあるし、何より良心が咎める。

 助け出すと確約はしないが行くだけは行く、と返答し、荷物を全て持って件の屋敷の前にやってきた。




 どこか既視感がある屋敷だと思いつつ、そっと屋敷に足を踏み入れた。

 と、同時に足が動かなくなった。

 床一面にとりもちが仕掛けられており、入ったものが出られないようになっているようだ。

 夜なのに明かりも点いていないため分からなかったが、よく見ると、そこかしこに若い人間がくっついているのご見える。帰ってこないというのはこれが理由だろう。


 娘と息子の特徴は……頭頂部の髪を左右一房ずつ束ねていて、艶のある黒髪だとかいってたな。

 ここにいるのは茶髪がほとんどだから違うだろう。

 助けてと言われたのは村長の息子と娘だけだし、他の奴らは知らん。別に命の危機って訳でもなさそうだし大丈夫だろ。

 あ、でも数日捕まってるなら飲まず食わずの可能性があるのか。

 ……仕方ない、帰りに脱出手伝うか。

 考え込みながら、なんとか足についたとりもちを剥がし、浮遊魔法で微妙に浮きながら奥へと向かった。

 そこには、全身とりもちに絡め取られた黒髪の男女がいた。

 恐らく彼らが村長の息子と娘だろう。

 だが……左右の髪を一房束ねている、というより触覚じゃないのか?コレ。

 艶がある髪、というか、テカテカしている気がする。

 助けていいのかコレ。





 嫌な予感はますます強くなっている。

 屋敷の中には捕まっている奴ら以外の気配はなかったし、そもそも行くとしか約束はしてないし、と捕まっている奴らをそのままにして外に出てきた。

 屋敷の前には村長を含めたくさんの村人がいた。

 よく見ると全員触覚がある。


「村長……聞きたくないが聞く。

 この村にいるのは人間じゃないな?」


「ああ、なんだ気付いてなかったのか。

 そうだ、ここはコックローチの村だ」


 全身に鳥肌がたった。

 台所の悪魔と異名をとるアイツらのことだろう?


 俺は吐き気を催しながら、目の前の屋敷を含め、村を囲むように火を放った。


 焼却処分しなければ。

 なんで人型になってるのかとかどうでもいい。

 まず奴らを抹殺しなければ。

 村人が襲いかかってきたが、ことごとく火炙りにした。

 近寄るな気持ち悪い。

 出された食事を食べなかった俺グッジョブ。

 あの領地に行ってからろくなことがない。

 神殿でお祓いでもしてもらうべきか……?

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