019.最初の冒険


 冒険とは街や村の外に出てモンスターと戦うものと、そう決めたのは誰だろうか。

 辞書には「危険を冒して行うもの」と定義されている。

 ならば、これもまた冒険である。

 私は閉じ込められていた高所に作られた檻を乗り越え、そっと地に降り立った。

 そしてそのまま、監視に見つからぬよう、低い姿勢でドアの陰に潜み息を殺した。

 監視の女がやってきた時、私は隙を見て開いたドアから外に出、逃亡を開始した。

 順調にいっていると思われたが、毒ガスでも撒かれたのか、数メートルもいかないうちに、私の体は動かなくなり、意識もだんだんと遠のいてきた。

 なんということだろうか。

 そして、私が檻の中にいないと気付いた監視の女が慌てて近づいてきて、私を捕まえた。

 彼女は私を再び檻の中に入れると胸を撫で下ろしてこう言った。


「随分とわんぱくなお嬢様ですねえ。

 ですが危ないですからベビーベッドから抜け出してはいけませんよ。

 少しとはいえハイハイして疲れたでしょう?

 そろそろ乳母もやってまいりますからね。

 起きたらミルクにいたしましょうね」


 こうして私の最初の冒険は幕を閉じた。

 私が倒すべき最初の敵は睡魔だったようだが、あっさり負けてしまった。

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