019.最初の冒険
冒険とは街や村の外に出てモンスターと戦うものと、そう決めたのは誰だろうか。
辞書には「危険を冒して行うもの」と定義されている。
ならば、これもまた冒険である。
私は閉じ込められていた高所に作られた檻を乗り越え、そっと地に降り立った。
そしてそのまま、監視に見つからぬよう、低い姿勢でドアの陰に潜み息を殺した。
監視の女がやってきた時、私は隙を見て開いたドアから外に出、逃亡を開始した。
順調にいっていると思われたが、毒ガスでも撒かれたのか、数メートルもいかないうちに、私の体は動かなくなり、意識もだんだんと遠のいてきた。
なんということだろうか。
そして、私が檻の中にいないと気付いた監視の女が慌てて近づいてきて、私を捕まえた。
彼女は私を再び檻の中に入れると胸を撫で下ろしてこう言った。
「随分とわんぱくなお嬢様ですねえ。
ですが危ないですからベビーベッドから抜け出してはいけませんよ。
少しとはいえハイハイして疲れたでしょう?
そろそろ乳母もやってまいりますからね。
起きたらミルクにいたしましょうね」
こうして私の最初の冒険は幕を閉じた。
私が倒すべき最初の敵は睡魔だったようだが、あっさり負けてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます