087.あきんど
私は世界的に有名な商人である。
安く仕入れ、高く売る。
どの町にいっても商品が残ることなどあり得ず、高い利益を叩き出す。
しかし、そんな私がどうしても安値でしか売れない町があった。
東にある小さな島国にある町だ。
同じ国の他の町では問題なく売れる。
だが、その町では仕入れ値以下でしか売れたことがない。
何度商品を変えて挑戦してもダメだった。
どうすれば彼女らに高値で買わせることができるのだろうか。せめて、仕入れ値以上で売りたい。
自身のプライドの為、今まで何度も赤字を出した町に私は再び足を踏み入れた。
自信のある品物を揃え、市に店を構えたのだが、呼び込みからつまずいている。
今回のターゲットである主婦層に声をかけているのだが、誰も足を止めようとしない。
「さあ奥様方、異国の珍しい品をご用意しております。
どうぞお手に取ってご覧ください」
あまりにもスルーされ続ける私を見かねたのか、隣の店の店主がアドバイスをしてくれた。
「兄ちゃんそんな呼び込みじゃアカンで!
女性に対してはババアだろうと子どもだろうと『そこのお姉ちゃん』て言わな!
見本見せたるわ、見ときや!
ちょっとそこの綺麗なお姉ちゃん、見ていくだけでもいいから寄ってってやー
ええもんあったら友達に宣伝たのむでー!」
そんな失礼な呼び込みで客が来るはずが、と思ったのだが、彼の店舗スペースには次々と客が入っていく。
呆気にとられて見ていたら、隣のスペースから出てきた客が、ついでにとこちらにも目を向けてくれた。
チャンスだ!
「お美しいご婦人、どうぞこちらの商品もお試しください。
エルフの里にある世界樹の雫で作った化粧水です。
その美しさを保つために最適な商品かと」
「……はぁ。
高いわ」
「値段に見合う効果がございます!」
あからさまに顔をしかめた年配の婦人であったが、商人に興味があるのは確実だ。
これならば押せば売れる!
「兄ちゃん。
この商品やったら仕入れはこのくらいやろ?輸送費や保管料考えてもこの値段はぼったくりやで。
兄ちゃんみたいなのを転売屋いうんやろ。
ウチは転売屋からは買わへんのや」
な、何故仕入れ値がバレているんだ?!
同業者の関係者か何かか??
だが、その後に来る客全てで同様の対応をされた。しまいには憐れまれたのか、「飴ちゃんやるわ」と菓子の施しまでうけてしまった……
どうしたらこの町の婦人に勝てるのだ……
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