第9話 天才と書いて「チート」と読むのか

 

 あの時、『鑑定』しようとしたのなら、行動の理由が分かるわ。

 わたしが咄嗟に結界を張ったから鑑定出来なくて、近づいて高魔力で威圧して結界を破ったのね。

 そして視た訳だ。


 うわぁ、やだなぁ。

 個人情報勝手に覗かれるのって、気分のいい物じゃないし、あの見えない手に触られているみたいな気持ち悪さって、もしかしら鑑定魔法の影響かもぉ。


「ベティはどうしてそう思うのかしら」


「わたしの事をじっと見て、道具も使わず、魔力量が八十で一つ増えているなって言われたのです。

 だから、その場で判定出来たという事は『鑑定魔法』ではないかと思ったのですわ」


「そう……でも、それをみだりに他人に言っては駄目よ」


「はい」


 王族の非公開情報なんて言いふらしませんよ。罪に問われるかもしれないからねぇ。

 コワーイ。

 でも、おじいちゃんには言っておこう。




 ***




 そうして時は流れ、二月。


 あ、そうそう、この国と同盟七か国と友好国は、同じ暦を使ってます。

 昔はそれぞれの暦があって、月や曜日の呼び方もお国柄が現れていたのに、情報伝達のスピードが上がるにしたがって、各国とのやり取りも頻繁になり、そうすると日付とか国によって違うと不便だって事になって統一されました。


 しかも数字で表すなんて味も素っ気もないけれど、分かり易いっちゃー分かり易い。

 一年は一月から十月まで。

 曜日は一曜日から九曜日、週末が休息日という表記。


 一週間が十日間だから、中間の五曜日も休暇に当てる所もあるのよ。

 学校がそう。

 職場は職種によって。


 貴族学院は十月半ばから長期休暇に入って、三月から新学期。

 それもあって王子の遠征は、二月に実施される事になったそうだ。



 例の研修施設での訓練、『俺tueeee!!王子』と随伴する第一騎士団のメンバーの内、合格したのが半数以下だってさ。


 いやいやいや、大丈夫なのか、第一騎士団!


「全く不甲斐ない!」


 ぼやくのはおじいちゃん。


 研修内容は、初級、中級、上級のレベルがあって、遠征に参加出来るのは中級を突破した者だけにしたとか。


「この短期間に、第一王子殿下の上達ぶりは目を瞠るぞ。お一人だけ上級レベルに達したんだ」


 ええ!?

 護衛を兼ねている第一騎士団のメンバーが、中級で半分落されているのに?

 あらあら、本当に『俺tueeee!!』なのねぇ。


 そういう不安要素を抱えながらも遠征に出発した一行。

 二週間後に帰ってきました。


 おじいちゃん情報もあるんだけど、新聞に載ってたの。

 ニュース映像も配信されてるけど、わたしは新聞を読んだわ。


 その一面。

 ボロボロに窶れていた第一騎士団メンバー。

 一人だけ元気に無傷で帰ってきた『俺tueeee!!王子』の雄姿が写真で載ってたのよねぇ。


 えーとぉ、『天才』って「チート」って読むのかなぁ。


 お城で婚約者候補たちがお出迎えしたんだってよ。

 一般的には羨ましい限りの状態ですね。

 どうせあの王子様は、上っ面だけ微笑んでいたに違いない!



 久々のお外情報がそれで、ムカムカとしてた二月末。

 やっと、やっと、お医者さんから完治の診断を下されたわ!

 魔法は基礎から徐々に馴らして行こうねって言われて、まずは測定から。


 十歳の誕生日後、神殿で魔法適正検査を受けた時以来だわ。


「……適正属性に変化なし。ただ、魔力量はずいぶん減ったねぇ。まあ、また魔法が使えるだけでも良かったと思おうね」


 そんな風にお医者さんから慰められた、わたしの現在の魔力量は『六十』。

 うぉー、二十近くも減ってるぅぅぅ!


 でもお医者さんが言う通り、また魔法が使えるんだもん、良しとしておこう!

 一からコツコツと訓練開始ねぇ。


 思わず、ふぅと溜息を吐いたら、家族みんなから励まされたわ。

 叔父ワンコも頭を撫でてくれるし、今はいい家族に囲まれてるって実感してる。


「もしよかったら、ウチのチビたちと一緒に訓練するかい?」


 六歳と四歳の従弟たち。

 結局まだ会えていなかったんだよねぇ。


「ええ、楽しみにしていますわ」


 二人とも光属性を受け継いでいるんだってよ。

 エルガド家の遺伝子、強いな。


「ほのぼのしている所悪いんだが、完治報告を上げると、すぐにでも王宮から教育係が飛んできそうなんだよ」


 王宮医務官であるマリニンさんの所に、今まで何度も問い合わせがあったんだってぇ。

 未だに婚約者候補を降りられていないから、まあ、そうなるかなぁ。


 今月から、我が家で雇っている家庭教師陣からは、少しずつ勉強再開してもらってはいたのよ。

 だからと言って、急に厳しい妃教育が始まっても、付いていける気がしなわよぉ。


「ああ、それはこっちで抑えるから大丈夫だぞベティ」


 頼れるおじいちゃん! 好き!

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