第4話

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……のだが。


「なぁ、今日とうとう新しいモデルが新発売されたな!」


 隣に座っていた久山に話しかけられた鈴木は、見せられたタブレットに目を見開く。


 タブレットに映っているのは、小柄な女の子。

 小柄な体に地味目なスーツ。黒髪のおさげに、幼い顔立。


 そう。先ほど、そのものだった。


【新モデル【山田花子やまだはなこ】本日発売! 【山田太郎】モデルに馴染めない人もこれなら安心! お値段は~】


「お前見たか? アマゾンで事前予約できるから、昨日の夜に手に入れて早速レビュー動画をあげているヤツもいるんだぜ」


『【山田太郎】になるのも、元の自分と違うから抵抗があるし』


 彼女が言った本当の意味は?

 彼女は、いや、もしかしたら、彼なのかもしれないけど。 


「…………」


 黙り込んだ鈴木に気付かず、久山は「ようやく女の子が拝めるな~。よかったな」と話しかける。


 鈴木はそれどころではない。

 もう、この世界はもとに戻らない予感がして、【山田花子】の顔をした絶望感が、鈴木の正気を削ってくる。


――ねぇ、君は今、どこにいるの?


 耐え切れずに、鈴木は気絶した。


【了】

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山田太郎で溢れた世界 たってぃ/増森海晶 @taxtutexi

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