第3話ドライブデート後…

同期会を終えた僕らは各々の家に帰宅してベッドで休んだことだろう。

翌日を迎えるとスマホを手にする。

連絡先を交換していた女性社員達から沢山の連絡が届いており僕はそれに丁寧に一つ一つ返事をする。

最後に佐藤静に起きたことを告げると彼女はすぐに返事を寄越す。

支度が整ったら最寄り駅で待ち合わせということになった。

すぐに十分な支度を整えると佐藤静に連絡をして家を出るのであった。



駅のロータリーで彼女を待っていると一台の車が僕の前で停車した。

「おまたせ。乗ってよ」

何故か彼女は何も言わずに車で現れると僕は苦笑交じりに微笑んで助手席に乗り込んだ。

「車持ってたんだ?」

「親のだけどね。車移動のほうが便利でしょ?」

「まぁそうだけど…先に言ってよ」

「驚かせたかったんだ」

「………」

何とも言えない表情で再び苦笑すると佐藤静の運転でドライブは始まっていく。

「何処か行きたいこところある?」

「どうだろう。海とか?」

「ドライブの定番だよね。じゃあそうしよう」

そうして僕らは海へと向けて車内で揺られていた。

オーディオから懐かしい音楽が流れていて僕らはお互いにそれを口ずさんでいた。

「懐かしいね。このアーティスト好きだったんだ」

「私も好きだったな。最近新曲出さないけど活動しているのかな?」

「どうだろう。わからないけど。また出して欲しいな」

「だね〜。もっと世間に知られていても良いと思うんだけどなぁ〜」

僕と佐藤静は他愛のない会話を繰り返しながら音楽に身を委ねていた。

「佐々木くんはどんな学生だったの?」

不意に過去の僕についての質問が飛んできて苦笑せざるを得なくなる。

「う〜ん…どうしようもない学生だったよ」

「そうなの?悪かったとか?」

「そうじゃないけど…。女性に執着していたかな」

「ふぅ〜ん。その頃からモテたんだ?」

「いや、全然。モテないから告白しまくっていたよ」

「何でモテないの?その容姿で…」

「誰彼構わず告白していたらモテなくもなるよ。節操なしだって思われていたと思うよ」

「ふぅ〜ん。なんだろう…子供の潔癖さが邪魔していたのかな。佐々木くんに告白されたら普通にOKしそうなものだけど…」

「学生の頃は全然落ち着きも無かったんだ。単純にガキだったんだと思う。女性に相手にされなくて当然だったって今では思うよ」

「へぇ〜。落ち着きのない佐々木くんかぁ〜…どんな感じだったのか見てみたかったなぁ〜」

「そんなに良いものじゃないよ。今の僕のほうが僕は好きだな」

「そうなの?過去を否定したい?」

「そういうわけじゃないけど。往々にして学生時代は黒歴史じゃない?」

「そうなの?学生時代に戻りたいって言う人もいるじゃん。それは過去が輝かしいからでしょ?」

「そういう人は今が苦しいのかな?僕は今のところ学生時代に戻りたいって思ったことはないかな」

「へぇ〜。それはそれで羨ましいな。今が充実しているってことでしょ?」

「それはそうだよ。素晴らしい会社に入社できて。沢山の同期に囲まれて。良いことしか無いでしょ?」

「そうだね。プライベートの方はどう?」

「ん?今こうしてドライブが出来ているし。普通に幸せだよ」

「凄いね。そんな簡単に幸せって言えて」

「何で?生きていられるだけで幸せでしょ?」

「なるほど。相当ポジティブなんだね」

「そうかな…?静さんは幸せじゃないの?」

「そんなことないけど。今は幸せだって思ってるよ」

「そっか。それなら良かったよ」

そんな他愛のない会話を繰り返すと海の近くの駐車場に車を停車した。

僕らは車外に出ると大海原を眺めて心を浄化していく。

しばらく無言で海を眺めて波の音に心を委ねていると佐藤静は不意に口を開いた。

「家来る?何か食べようよ」

「家?外食じゃないの?」

「家の方が落ち着くでしょ。私が作るし、その間に会話も出来るし。ちょうどいいでしょ?」

「そう…なのかな…?」

「そうだよ。行こ」

佐藤静に手を引かれると車に乗り込んで彼女の家へと向かうのであった。

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