小っちゃくなった!

夕日ゆうや

一寸法師!?

 家の中、リビングでコタツに入っていた父を認める。

 今日も疲れていたのか、ぐっすりと寝ている。

「そんなところで寝ていると、風邪ひくぞ」

 俺はため息交じりに言う。

 ケトルでお湯を沸かし、コーヒーを煎れる。

 香ばしい匂いがたちこめてくる。

 二階の自分の部屋に向かう途中、コタツを見やる。

「……え?」

 思わず二度見する。

 先ほどまでいたはずの父の姿が見えない。

 リビングと台所はつながっている。

 見過ごしたとしても一瞬。

 その一瞬で父が消えたのだ。

『ここだ。ここ』

 小さく声が聞こえる。

 思わずそちらに顔を向ける。

 そこには小っちゃくなっちゃった父がいた。

「え! ええ!?」

『なんか知らんけど、小っちゃくなった!』

 そこには一寸ほどの小さな父の姿があった。


 俺はこれを研究し、学会に発表した。

 小さな父は瞬く間に有名人になり、その縮んだメカニズムも解明され、全ての人類が小さくなった。

 そのお陰で少ない食糧。小さいエネルギー。少々の資材で済むようになった。

 これは革命である。

 小さくなったことで、世界の平和が約束されたのだから。

 今や地球にはアリのごとく人々が生きることとなった。


 だが、その平和は長くは続かなかった。

 巨人と呼ばれる、小さくならなかった人類が一寸の人々を襲い始めたのだ。

 体格差があり、とてもじゃないが刃が立たない一寸法師たち。

 しかし、巨人がいなければ、社会はなりたたない。

 動物たちから守ってくれる人が必要だったのだ。

 そのことが災いとなった。

 全ての人類が小さくなり、地球という大きな土地を、資源を、維持する。

 そんな妄言めいたことを言っていた時の首相ももういない。

 人類は巨人によって滅ぼされたのである。


 こうして世界は再び混迷と戦いの中に生きることとなった。


 人は学習しないのである。


                     ~完~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小っちゃくなった! 夕日ゆうや @PT03wing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ