第7話:ヨーちゃん・・・したい。

鈴蘭が俺の事務所に来て、最初の仕事が近所の雑貨屋のばあちゃんちの

猫探し・・・よくいなくなるんだこれが・・・。

また行方不明になったって、おばちゃんからの依頼だった。


「な、こういう仕事ばっかなんだわ・・・」

「ところで鈴蘭、パソコン使えるか?」


「うん・・・少しは」


「チラシ作れるか?」


「作れると思うけど・・・」


「雑貨屋のばあちゃんちの猫の指名手配書作って欲しいんだ 」

「印刷屋に頼むと金かかるからな」

「コピー用紙買ってくるからさ・・・鈴蘭のセンスでよろしくな」


「とりあえずチラシ作ってこの一帯の各家に配ろう・・・ 」


「分かった、やってみる」


鈴蘭は画像ソフトを案外、器用に使ってチラシを作って行った。

俺より、よっぽど上手いんだな・・・これが。


チラシのデザインが出来上がると、さっそくプリントアウトして、

鈴蘭と近所の家にチラシを配って歩いた。


ついでに電柱もあるだけベタベタ貼っておいた。


こんなチンケ・・・そんなこと言ったら雑貨屋のばあちゃんと猫に悪いけど・・・

こんなチンケな仕事でも、鈴蘭は楽しんでやっていた。

なんでもいいから何かをやってる時は嫌なことを忘れていられるんだろう。


チラシの他に猫がいそうな場所を俺たちは探した。


商店街とか路地裏とか近所の公園とか・・・。


公園の遊具のある場所には猫は見当たらなかった。

鈴蘭は服が汚れるのもかまわず公園の植え込みや草むらを探していた。


「ヨーちゃん・・・こっち」

「こっち来て・・・」


鈴蘭に呼ばれて俺は彼女のところまで行った。


「ヨーちゃん・・・したい・・・」


「なに?・・・なんだって?」


「だから・・・したい」


「ん?・・・ああ、しょんべんか?」

「コンビニもないし・・・そのへんの茂みの中にしゃがんでしろよ」


「違う・・・したい・・・なんかね・・・死んでるみたい」


「え?猫が死んでるのか?」

「ばあちゃんちの猫も、ずいぶん年寄り猫だったからな・・・」

「そりゃおまえ、それ聞いたらばあちゃん悲しむぞ」


「猫じゃなくて・・・人が死んでるの」


「人?・・・・」


俺は鈴蘭が言った場所を見た。

鈴蘭が指摘した場所に上向きに大の字で男が倒れていた。


「ほ、ほんとに死んでるのか?」


「ほら、胸にナイフがつき刺さってて血がいっぱいでてるよ」


「あ〜そうだな血の乾き具合から見て男が殺されたのは昨夜か・・・」

「けど鈴蘭・・・おまえ、平気なのか、こんなの見て」

「平気じゃないけど・・・でもほっておけないでしょ」


「とりあえず警察に届けなきゃ」

「でも、私、この人見たことあるよ」


「まじで?」


「鈴蘭の知り合いか?」


「う〜〜〜ん」


鈴蘭は首を横に振った。


「この人、たぶんお父さんの知り合いか、知ってる人だと思う」


つづく。





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