第6話:私をひとりにしないで。

行くところもなく、俺の探偵事務所にやってきた鈴蘭は、そのまま

俺の事務所で寝泊まりすることになった。


「今日から、その部屋がおまえのテリトリーだ」

「好きに使ってくれていいから・・・」


「昼間はここにいるけど、夜になったら俺は出てくからな」


「なんで?」


「なんでって・・・?、それを俺に聞く?」

「こう見えてもデリカーはあるつもりだぜ」


「年頃の娘がいる部屋に、野郎が一緒にいられるわけないだろ」

「女の子なんだからいろいろ見られたくないだろうし・・・」


「そんなの気にしないよ」

「気にする方がおかしいよ」


「私はヨーちゃんがいても平気だよ」


「どうせ、夜、ここを出てっても泊まるところもなくて 誰か知り合いの家に

やっかいになるつもりなんでしょ? 」


図星だ・・・なかなか感のするどい子だな・・・。


「そう言うのって私がここにいるかぎりずっと続けるつもり?」

「ヨーちゃんは私に気を使って自分が惨めになって、そんなのよくない・・・ 」

「そこまでするなら、私が出てく」


「じゃ〜どうしろって言うんだよ・・・わがまま言ってんじゃねえぞ」


「わがままじゃないよ、お願いしてるの、ヨーちゃんにここにいて

欲しいって・・・」

「私をひとりにしないで・・・」

「ずっと寂しかったんだ・・・ひとりぼっちで、孤独で・・・」

「昼間はいいけど夜になっちゃうと寂しさが押し寄せてきて眠れなく

なるんだよ・・・私・・・」


そう言うと鈴蘭はまた泣き出した。

気丈に振舞っていてもそこは女の子、ずっと我慢してた感情が溢れでたんだろう。


「辛かったんだな・・・」

「分かった・・・一緒にいてやるよ、どこにも行かない」

「それでいいだろ?」

「そのほうが俺も他人に迷惑をかけなくて済むしな・・・」


「わがまま言ってごめんね」

「わがままじゃなくて、お願いなんだろ?」


今の鈴蘭が、頼れるのは俺だけ・・・か。

本当なら鈴蘭くらいの若い女の子なら俺なんか一番に敬遠されるタイプだと

思うんだけど敬遠する前に俺になんとかして欲しかったんだよな。


何の因果で、こんな小娘の面倒を見る羽目になったんだ?

それは、魔が差した・・・いや俺が自ら選んだからだろ?


機械や物ならいざ知らず一番やっかいな感情を持ったそれも思春期真っ盛りの

娘なんて・・・俺のポリシーから外れてるだろ?

ちゃんと雇用してやらないと「淫行です」って訴えられたっておかしくない。


鈴蘭・・・おまえと一緒で俺だってずっと一人だったよ、だから人恋しさは

知ってる。


温もりすらなかった俺の事務所に鈴蘭って小さくて真っ白な花が芽吹いたって

ことだな。

けど、そのツボミには触れちゃいけないんだろうな。


つづく。

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