第5話:鈴蘭の過去。

って訳で、鈴蘭は俺の事務所で、暮らすことになった。

行くところがないって言うんだから、しかたない。


コンビニで会った時、家に帰るように言ったんだが、もう一度家に帰るつもりは

ないか鈴蘭に聞いてみた。

そしたら、もう自分の家はどこにもないって言い張るばかりで、あっても帰る

つもりはないって言ってるものを無理に帰すのも無慈悲だろう。


「あ、そうそう鈴蘭・・・おまえ、未成年じゃないって言ったよな?」

「それ本当か?」

「正直に言えよ・・・嘘ついたらパートナー解消・・・追い出すからな」

「俺の前では、ウソつくなよ」

「ほんとは、いくつなんだ・・・」


「17才・・・」


「そうだろ?」

「やっぱり未成年じゃないかよ・・・17っていやあ、女子高生だろ」


「もう行ってないもん・・・・学校なんて」

「中退したし・・・」


「中退?」

「で、プー太郎してたって訳か?」


「コンビニでヨーちゃんと会う前まではバイトしてたけど・・・ 」


「学校へ行きたくないのか?」


「行きたいけど・・・お金もないし、その前に自由になりたかったの・・・」


鈴蘭の過去になにかあるなって俺は思った。


「話したくなかったら、話さなくてもいいけど・・・」

「おまえ、ちゃんと両親いるのか?」


「コンビニであった時、私ヨーちゃんに聞いたでしょ・・・昔ゴテゴテの

離婚問題に関わったことあるって? 」


「コンビニでも言ったけど、その手の問題にはけっこう関わったからな」


「私の親の離婚問題で頻繁にヨーちゃが私の家を訪ねて来てたの知ってるもん」


「そうだったのか・・・待てよ・・・おまえ花咲って言ったよな?」


「あ〜思い出したわ・・・長い裁判の末、もめにもめて離婚した」

「奥さんに男ができて、おまけに旦那はDVってことで・・・」

「あ、すまん・・・余計なことだった・・・」


「いいよ、本当のことだもん」


「おお・・・思い出したわ・・・あの家に、いたな、女の子が・・・」

「おまえだったんだ」


「お母さんが男を作って子育てを放棄したから私はお父さんに引き取られた

けど・・・」

「そのお父さんは最低男で、アル中の上にギャッブルに狂ってるわで・・・」

「おまけに借金まで作って私をほったまま、どこかへトンズラしちゃったんだ 」


「だから、私は家を出たの・・・働かなきゃ食べて行けないでしょ」

「それに家にいたら、借金取りが来るからね」


「そうか・・・子供は親を選べないもんな・・・」


「そんな最低な家庭にいて悠長に学校なんか、行く気になると思う?」

「・・・だから、辞めたの」


「鈴蘭・・・あの時の娘か・・・」

「同情も慰めもなんの役にも立たねえから言わねえけど、その代わり

気の済むまでここにいていいからな・・・先のことはまたゆっくり考えよう」


「それに、そんな話聞いたら出て行けとは言えねえもんな・・・」

「でもよ、俺もプー太郎みたいなもんだから、ちゃんと給料払ってやれるかどうか

分かんないぜ・・・」


「そんなのいらないよ・・・ご飯だけ食べさせてくれたら」


「飯は好きなだけ食べさせてやるよ」

「タダで飯食わしてくれる店も知ってるからな・・・」


「まあ、俺もずっと一人だったし・・・これからは鈴蘭がいてくれたら規則正しい

生活ができるかもな・・・」

「それに、ひとりよりふたりの方が仕事の効率だって上がるしな・・・」


「よろしくお願いします・・・私、頑張るから・・・」


「いいんだよ、無理して頑張らなくても・・・どうせ、ゆる〜い探偵事務所

なんだからさ・・・」

「危険なことには首を突っ込まない、危なくなったらすぐ逃げる」

「太く短くじゃなくて、細く長〜くがもっとうだよ、鈴蘭」


つづく。

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