第8話:凶器の指紋の持ち主。

鈴蘭が発見した公園の男の刺殺体。


俺はすぐに南湾岸署のタカさんに連絡した。

しばらくしてパトカーが来て、鑑識が来てすぐに検死がはじまった。

その後からタカさんも来たので、とりあえず俺は挨拶した。


「お〜カグラ・・・屍体拾ったって?」

「なんでまた、こんなところうろうろしてたんだよ」


「それが近所の雑貨屋のばあちゃんちの猫が行方不明になったんで、あちこち

探してたんですよ」

「で、この公園で・・・」

「でも、発見したのは俺じゃないんですけどね」

「あのとりあえず、紹介しときます」


「ほらスズ・・・こっち」


俺は鈴蘭をタカさんに紹介した。


「この子、俺の相棒です」


「・・・・・」


「おまえ・・・いつからロリコンが趣味になったんだ?」


「ロリコンじゃありません」


タカさんは目で鈴蘭の頭の上から靴の爪先まで舐めておいて言った。


「どう見たって未成年だわな?」

「カグラ・・・未成年ひきつれての仕事はマズいだろ」


「すいません・・・これには、いろいろ事情がありまして、この子身寄りが

ないんで俺が面倒みることになっちゃって・・・まあ俺の養女?みたいな

もんかな?」

「だから俺の家族だと思って、多めに見てやってください」


「で、屍体を発見したのがこの子って訳です・・・」


「ふ〜ん・・・まあいいんじゃねえか?」

「俺はこの子のことは見てねえからな・・・せいぜい足手まといにならんように

しろよ」


「あの、もしよかったらでいいんで検死が終わったら情報回してくれませんか?」


「まあ、仏さんの第一発見者だからな」


鑑識の検死作業が終わると警察もタカさんも早々に現場から退散して行った。


「感じ悪いおっさん」


「タカさんのことか?」

「性根は悪い人じゃないんだけどな、クチが悪いんだ・・・」


「それに、ヨーちゃん・・・スズってなに?」

「私の名前、はしょっちゃって・・・」


「あのな・・・鈴蘭ってちょっと言いにくいんだよ」

「だからさ、急いてたから、ついスズって言っちゃったんだ・・・悪い」


「そっちのほうが言いやすいんだったら、スズでいいよ」


「そうか・・・嫌ならちゃんと鈴蘭って呼ぶけど・・・」


「スズでいい・・・決まりっ」


事情聴取で警察へ出頭しなきゃいけないし、行方不明の猫も探さなきゃ

いけないし・・・。

でも屍体発見しといて、まあそんな気分にはならないよな・・・。


俺と鈴はとりあえず事務所に帰った。

それから夜になってタカさんから連絡があって、凶器のナイフから指紋が

出て・・・前科と照合したら一致した指紋があったんだそうだ。


まず、殺された仏さんの身元は「向田 恭二むこうだ きょうじ」40才、無職、住所不定、反社の事務所に出入りしてるところをちょうちょい目撃されているってことだった。

40代で無職って一番怪しいだろ。


で、凶器に付着していた指紋の持ち主の名前が「花咲 健三はなさき けんぞう


俺はその時、ほう〜って何気なく聞いていた。


「はなさき けんぞうね・・・」

「そうなんですね、じゃ〜犯人そいつってことになりますかね」


って俺はタカさんに言ったんだ。

そしたらソファでくつろいでたスズが、飛び起きて俺のところに飛んできた。


「今、花咲って言った?」


「言ったけど・・・・あっ・・・おっ花咲〜・・・スズ」


「健三って・・・・私のお父さんの名前と同じだよ」


「だってよスズの親父って、素人だろ」

「そいつは前科持ちって言ってたぜ・・・」


「私のお父さん・・・昔、無免許運転でしかも酒気帯びで捕まってるの」

「そういうのでも前科だよね、その時指紋も取られてるだろうし・・・」


「おいおい・・・これって同姓同名じゃないのかよ」

「こんな偶然あるか?」


そこで俺はタカさんに連絡して花咲 健三の写真を送ってもらった。

しばらくしてスマホに送られてきたその写真を見てスズは言った。


「なにやってんの・・・殺人事件に関わってるなんて信じられないよ」

「バカおやじ・・・」


スズは驚きとショックと情けなさで気持ちの整理がつかず泣いた。


俺はさりげなくスズを抱きしめた・・・そうしたかった。

スズは嫌がるかと思ったが抵抗はしなかった。

慰めのセリフなんて、どんな言葉かけたって陳腐に思えて言えるわけないよな。


つづく。



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