第2話:まじで余計なお世話。

その時は金髪ギャルが未成年だか成人してるかなんて知らなかったし、

とにかく、若かろうが、ばあさんだろうが、やばそうで訳がありそうな女は

敬遠するに限るって思ってる。


そういうのは俺の危険感知システムがすぐ作動する。


でも、でも、でも・・・よせばいいのに何を思って、どうして魔が差したのか

分からないけど俺はその金髪ギャルに声をかけたんだ。


ほんとなら、そんなことありえないことなんだけどなぜかその時は声を

かけてしまったんだな。


最初、ギャルは俺を見ておいてから、無愛想な表情でシカトした。

まあ、いいわ・・・そういうつもりなら親切に声なんかかけなくてもいいや。

で俺はコンビニから立ち去ろうとしたんだ。


すると金髪ギャルが、


「おじさん・・・港にある、たそがれ探偵事務所の人でしょ? 」


っ言いやがった。


「おじさんは、ねえよな・・・まだギリお兄さんだぜ・・・」

「ネエちゃん、俺のこと知ってるの?」


「知ってるよ・・・おじさん、数年前ゴテゴテの離婚騒動を解決してくれた

探偵さんだよね 」


「 数年前?・・・離婚に関しちゃ〜けっこう数、関わってるからな」

「どの案件だか、ちと分かんねえな・・・」


「そうなんだ・・・分かんないならいいや」


「そのゴテゴテの離婚騒動がどうかしたのか?」

「話してくれたら、もしかしたら思い出すかもしれねえぜ・・・」


「いいよ・・・自慢できる話じゃないから」


「そんなことより、あんたみたいな若い子がこんな時間までウロウロしてたら、

ダメだろ?・・・危ないぜ 」

「早く家に帰んな」


「おっさんや、おばはんはみんな同じことしか言わないんだ」

「余計なお世話だっつ〜の」


「余計なお世話ね・・・だな・・・」

「俺も時々世間に向かって余計なお世話だ〜って叫びたい時あるわ」

「悪かったな、未成年保護者みたいなこと言って・・・」


「未成年じゃないし・・・」


「そうか・・・未成年じゃないなら何があっても自己責任んだもんな」

「自分の面倒は自分で見るってか?」


そう言うと俺はそのまま帰ろうとした。

で、ふと止まって、言ったんだ。


「もし、もしよぅ、なにか困ったことがあったら俺の事務所訪ねて来な・・・」

「話くらい聞いてやるからさ・・・タダで」


そう言って俺は金髪ギャルに名刺を渡した。

金髪ギャルは、しばらく名刺を眺めていたが、すぐにそれをカーゴパンツの

ポケットにしまった。


それも俺の余計なお世話、ほんの気まぐれか・・・。


俺は金髪ギャルは、俺の事務所を訪ねて来ないほうに賭けた。

俺の事務所に来たところでなんのメリットもないだろうからな。


俺の事務所に訪ねて来るのは、決まってスネに傷を持つ奴か、心に闇を

かかえてる奴とか自分の手に負えないことを解決してほしくてやってくる・・・

そんなやつらばかりだ。


あとは時々自分ちの看板猫が行方不明になる雑貨屋のばあちゃん。


俺はこの光と闇が揺れ動く蜃気楼の街・・・混沌とした都会の片隅で

肩をすぼめながら世間の風に逆らって生きている。


特に将来の夢も展望もなく色恋の話すらなく・・・ただ生ける屍のように。

夜中の2時過ぎ・・・冷たい海風が独り身の冴えない男の心に沁みた。


俺の頭の中ではノラ・ジョーンズの「ドント・ノー・ホワイ」がいつも

鳴っている・・・」


つづく。




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