第2話 カードの記憶

 カードを無くした。どこを探してもでてこない。このごにおよんでカードが立派にあったころのことを急におもいだす。カードで雑誌を買ったことを想い出して切なくなった。無くしただろう日の記憶が静かにはがれはじめる。べつにあせらなくってもいいんじゃないの。そのうちでてくるわよぽこっとね。となりのおじいちゃんだってさいふを無くしたっておおさわぎをしてたけどあくる日ちゃんと引き出しから出てきたのよ。そんなものこの夜にさがすなんてひま人がやることなんだよはやく寝ろよ。じかんがいっぱいあったらいいけどさおれだったらごめんだね。ほかにやることあるからさ。あしたはやくぎんこうへいってふりこみしなければならないんだ。なかったら再発行を申請するしかないでしょうねとうぜんのことなんですが。わたしはどこをさがしていたか。在るだろうところはさがしていたが在るところはさがしていなかった。

 


 そうだ、わたしにはもともと診察券などという物は存在しなかったのだ。


 

(了)

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掌編400字・診察カード1・カードの記憶2 柴田 康美 @x28wwscw

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