第3話 力を取り戻したのだが!?
「プリス! やっちまえ!」
剣士の声を受け、神官は俺を装着したエルフの少女へ向けて、光の弾を放つ。
しかし俺はその絶大な破壊力を秘めた光の弾を、あっさりと手で弾き飛ばした。
現役のころの魔力への回帰も、これにて確認完了である。
「無詠唱でのホーリーバレットで攻撃か……随分と舐められたものだな、ふふ……」
俺はエルフの声を借り、神官を嘲る。
そしてダッと、地面を蹴り、神官の懐へ潜り込む。
「神の力を使い、強姦に手を貸すとは……恥を知れ!」
「げふっ!」
魔力を込めたガントレットの拳を神官の腹へと叩きこむ。
もやしのように細い神官の体がくの時に折れ曲がったところで、迫撃の蹴りをお見舞いする。
神官は地面へ背中から叩きつけられ、泡を吹いて倒れるのだった。
(これで一番の脅威は去った。後は――!)
俺は地面に転がっていた剣を拾い上げる。
総重量約2.5KG 長さは1.5メートルとかなり長い。
柄は拳二つ分もあるが、バランスに工夫がされていて、片手でも両手でも扱える大剣の一種。
【バスタードソード】
(なんでこのエルフの少女はこんな武器を……? しかし、現況では最高の装備だ!)
鞘から鈍重な剣を抜き、きらめく刃を悪漢冒険者の二人へ突きつける。
「かかって来い。可愛がってやる」
「こ、このモンスター野郎がぁ!」
「わぁぁぁ!」
剣士と斥候は冷や汗をダラダラこぼしつつ、切りかかってきた。
(ふむ、怯えながらもいい動きだ。連携もきちんと取れていて、品行方正であれば、俺に近い冒険者に慣れただろうに)
俺は冒険者2人の刃を軽々とバスタードソードでいなしつつ、余裕でそんな感想を抱く。
対して変態冒険者二人は、必死な形相で俺へ攻撃を加えていた。
「こ、こいつ強い! おい、あれを使うぞ!」
「わ、わかった!」
激しい斬撃のさなか、冒険者2人は不穏な言葉を口にする。
「「クロックアップっ!!」」
聞き覚えのある魔法の名称を2人は叫んだ。
どうやら加速魔法を発動させたようだ。
元々鮮やかだった攻撃手腕に、速度と手数が加算され、嵐のような攻撃が降り注いでくる。
「へへ! どうだリビングアーマー!」
「バラバラにしてやるぜぇ!」
形勢が逆転したことで、今度は軽口を叩き出す剣士と斥候であった。
確かに今のままでは、俺はおろか、装着者であるエルフの剣士にも危害をおよぼしかけない。
(なら"あのスキル"を使ってみるか。ソウルリンクができたのだから、たぶんできるはず!)
これまでこのスキルを使うには、鎧へ自身の魔力を吸わせるイメージが必要だった。
しかし今の俺は吸う側である。よって――
(この娘の息吹を感じ、体温を吸収するように……おお! やはり魔力が集まってきたぞ……!)
だが、
(まるでこれでは、この少女をクンカクンカしているような、変態的行為な気分になってしまうな……)
やがて、エルフの魔力を吸ったことで、鎧へ縦横無尽に張り巡らされた無数の"畝"が淡い虹色の輝きを宿す。
準備は整った。
「
固有名称を叫びスキルのトリガーを解放した。
同時にバスタードソードの刀身へ素早く指を滑らせる。
研ぎ澄まされた刃が、荘厳な輝きを放つ"光の剣"へ生まれ変わった。
「な、なんだあの輝き!?」
「ま、まぶしぃ!!」
輝く剣を見ただけで、二人は盛大に怯み、動きを止めた。
「さぁ、これでおしまいだ!」
「「――――ッ!?」」
俺は二人へ向けて、俺は光の剣と化したバスタードソードを大きく振りかぶる。
「どぉぉぉらぁぁぁぁ――!!」
光の剣が迷宮の闇へ、横なぎの鮮やかな軌跡を刻む。
「「ぎゃああぁぁぁぁ――――!!」」
冒険者2人は光の刃によって身に纏った魔法を打ち砕かれ、その衝撃で思い切り吹っ飛ぶ。
2人はそのまま岩壁へ思い切り叩きつけられ、意識を失うのだった。
(さて、最後の仕上げをするとしよう)
俺は脇で伸びている神官の頭を掴んで起き上がらせ、平手打ちで目覚めさせた。
「目覚めろ、阿呆!」
「ふぇ……あ、ひぃぃぃぃ!! こ、殺さないでぇ! お、俺は、アイツらに無理やりやらされて、だから……!」
神官は少女の前だということも忘れて、股の間をびしょびしょに濡らす。
俺は神官へグッと顔を近づけ、彼の瞳へ憑依するエルフの少女を映した。
「早く地面に転がっている阿呆どもを連れて、ここから立ち去れ」
「へっ?」
「良いか、見逃すのは今回だけだ。もしまた襲い掛かったり、同じようなことをした時は容赦しない。分かった!」
俺は神官へ強く言って聞かせる。
「は、はいぃッ!」
「ならばさっさと行け! 二度とその顔を見せるな!」
「はいぃぃ~~!」
投げ飛ばした神官は慌てた様子で、剣士と斥候へ駆け寄る。
そして転移魔法を発生させ、姿を消すのだった。
(神官よ、ちゃんと早く治療を施してやってくれ。死なれたら寝覚めが悪くて叶わんからな)
やはりモンスターになってしまっても人の命は殺めたくない。
それに今の俺は、”この子”の体を借りている身。
この子に人殺しの汚名は着せられない。
そう思う俺なのだった。
「ううん……」
卑劣な冒険者連中が姿を消してから暫くして、俺の中にいたエルフの少女が目を覚ました。
「あ、あれ? 私、一体……?」
「申し訳ない。一時的だが君の体を借りた。しかしおかげであの卑劣な冒険者連中は追い払ったから安心してくれ」
「えっ? この声ってどこから……?」
少女は長耳をピクピクと動かしながら不思議そうに辺りを見渡す。
【作者からの大事なお願い】
本稿に登場しました「
もしこのたわ言にピンときた方がいらっしゃいましたら、どの宙明節が好きか書き残していただけると嬉しいです。ちなみに作者は、シャリバンのレーザーブレードのテーマが好きですっ!
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