第3話 赤髪の少女

「ん?」


何か聞こえたような気がするけど…。

気のせいか?

俺は地図を頼りに川に来ていた。

川の水は澄んでいてきれいだ。

手ですくって飲んでみた。


「美味しい!」

ペットボトルの水とは違うまろやかな感じだ。

水道水とは大違いだな。


あれ?

かすかに声が聞こえた気がする。


耳を澄ましてみた。

何か聞こえるかも。

感覚を研ぎ澄ます。


あっちに誰かいるような気がした。

よく分からないけど、感覚を信じてみることにする。

下の方かな?

数百メートル先の大きな木の下で、女の子が大きい犬?三匹に囲まれているのが見えた。

俺は犬を追い払おうと思ったが、どうしたものか。


「ええい!」


とにかく突っ込んでみた。

女の子をとにかく助けないと!

急に現れた俺に犬は驚いたのか一斉に逃げていく。

ともかく助かった…。


「助けてもらって、有難うございました」


背の低い少女にお礼をいわれた。

髪は赤く、瞳は白色をしている。

俺のいた世界では赤い髪はいたっけな?

そんなことをぼんやりと考えていると・・。


「あの?お名前聞いてもいいですか?」


「ああ、名前ね。荒滝 未来だ」


「ア‥ラ・・・ライ?」


あれ?聞き取れないようだ。

聞いたことない言葉って聞き取りずらいもんな。


だよ」


「ミライさんですね。私はアンです。是非お礼したいので、もし良かったら家まで来てください」


俺は赤髪の少女アンに引っ張られ、アンの家に行くことになった。

幼く見えるから、小学生高学年くらいかな?


しばらく歩く。

歩きながら彼女は話す。


「今日は森へ薬草を取りに来てたんですよね。だけどシルバーウルフに見つかっちゃって、囲まれたからどうしようかと思ってました」


薬草を取りに来てたのか。

ハーブみたいなものかな?


話しているうちに近くの村にたどり着いた。

手作りの立て看板があり、アーチのようなものがあった。

異世界の文字が書いてあった。


「ウィス村へようこそ!」


笑顔でアンが俺に話しかける。

心がフワッと温かくなった。

笑顔で話しかけられるのいつぶりだろう。


「俺怖くないの?」


俺は自分の顔を指さして言う。

アンは俺の問いかけに少し驚いた様子で


「いいえ。怖いというより優しいですよね。人は見かけによらないんですよ。」


またニコッと笑ってくれる。

女の子ってかわいいんだな。



****



「えーと?」


俺はアンの家に案内されたのだが…。

白髪交じりの赤髪の壮年が俺をにらみつけていた。

もしかして、アンの父親なのだろうか。


「朝っぱらから、薬草を取りに行ったかと思ったら逢引きか。それにしても見たことないぞこの男」


あー俺をアンの恋人?と勘違いしているらしい。


「違うの!この人は私をシルバーウルフから守ってくれたんだよ。ていうか初対面だし!なんてこと言うの!」


アンが怒ってる。

さっきまでニコニコしてたのに父親に怒っているのだけど。


かわいい。

父親は怯えているようだが、かわいい。

例えるなら子猫が怒ってる感じに見える。

そう思ったら微笑ましくなってきた。


「ミライさん?なんで笑ってるんですか?」


あ、怒りの矛先が俺に?


「笑ってないよ?」


俺はあわてて、否定した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る