第4話 夢の中
「申し訳ありませんでした。娘の命の恩人に何て失礼なことを…。」
アンの父親に謝られた。
「勘違いしただけですし、いいですよ。」
勘違いされるのはいつものことだ。
恋人に間違われたのは初めてだけど。
「まったく早とちりなんだから…。」
アンはむすっとしていた。
「
『ぐう~』
俺の腹の虫が鳴った。
「では取り合えず食事にしましょうか。朝の分が残ってたかな?」
めっちゃ恥ずかしい。
言わなくて済んだけども。
俺はようやく食事にありつけることが出来た。
残り物を出した‥ということでまたアンが怒ってたけど‥気にしてないよ?
「いただきます」
初めて見る黒いパンとスープをいただく。
パンは固くて、食べるのに苦労していると、スープに浸して柔らかくして食べると食べやすいらしい。
スープにつけてみる。少し柔らかくなった。
確かに食べやすくなったかも。
スープはコンソメスープっぽい見た目をしていた。
だいぶ薄味なようで、俺には少し物足りなかった。
おなかは落ち着いたみたいだ。
俺は思い切って、お願いしてみることにした。
「では、この村に住まわせてもらっていいですか?」
独りであの小屋に住むのは、色々不便そうな気がした。
この村にいれば食料と水が手に入りそうだから。
「そうさせてやりたいのは山々なのだが・・最近物騒でね。村民が怖がってしまうかもしれないし・・食料を分けるくらいしか出来ないのだが・・」
まあ、仕方ないよね。
今までこの顔で苦労してきたんだし。
わかってた。
幸い家はある事だしそこに住めばいい。
俺はうなだれて小屋に戻ることにした。
「ミライ!」
外に出た俺をアンが追いかけてきた。
「ごめん、ごめんね・・父も悪気があるわけじゃないんだけど・・ミライが優しいのは私が一番分かってるから・・・」
アンは俺の右手を両手でつつむ。
「今まで、きっと大変な思いをしてきたんだよね・・・」
アンは俺と小屋まで一緒に付いてきてくれた。
なんて優しい子なのだろう。
今まで親切にされたことが少なかった俺は身に染みる。
「また、来るからね」
帰るとき、名残惜しそうに手を振って別れた。
俺は今までにない不思議な気持ちに包まれる。
こんな俺でも認めてくれる人がいるんだ・・。
優しい女の子が。
俺は夢を見た。
アンが俺に笑いかけてくれる。
この少女を不思議と愛おしいと思った。
俺アンを好きになったのか?
夜中に目が覚める。
夢だけどリアルに覚えていて・・・。
「夢だよな・・・」
俺は再び目をつぶってみたが、中々眠れそうになかった。
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