第20話 エルフの祭り
それからサリアは、俺の指示通り果実に吸収されなかったエルフを魅了して情報を聞き出す。
果実大事件のインパクトが強すぎて流しそうになっていたが、今俺が気になっているのはエルフの祭典というヤツだ。もしエルフの由緒ある祭りとかなら一度は体験して見たい!
…と思っていたが、サリアの魅了エルフ曰く、聖女が誕生したのを祝うパレードらしく、特段変わった事をやる訳では無いようだ。因みにここで言う聖女とは、光属性に適正の高い女性の事を指すらしい。
「もしかしたら、その聖女がフォル様が感知なされた魔王候補かもしれませんね」
確かにアイリーンの言う通りかもしれない。しかしそうなると、光属性なのに魔王にするっていう破綻気味な展開になってしまうが……まぁ今更どうでも良いか。
それに加えて魅了エルフ曰く、パレードを行う二日間は一般の入国を全面的に禁止しているらしい。
「どいつもこいつもフォル様のご予定を邪魔ばかり……!!!!」
俺の代わりにブチギレてくれているアイリーンと、それを横目に反省しまくりのサリア、そのサリアにメロメロな美形エルフというカオスな構図を見ながら、俺は今後の計画を考え直す。
本当はエルフの国を堪能した後、魔王候補をアビター国王に添えて魔王国へ改変、隣国をぶっ潰して世界に混沌を充実させる大作戦のはずだった。
しかし堪能が出来ないとわかった今、俺たちは2日待つか、強行突破するかの2択を迫られている。しかしアビター王国もそろそろ破綻している頃だろうし、何より2日も待つのは面倒極まりない。
「さっさと見つけて回収しよう」
という事で俺たちは、アイリーンの転移で密入国をする事に決め、転移先も人数が多くて探しやすそうなパレードへ突撃する事となった。
先程までは隠れて異世界を堪能する予定だったフォルだが、謎の果実事件で吹っ切れてしまった結果である。
「それではパレードの位置を上から特定してきます。フォル様とサリアはそこから動かないようお願い致します。」
アイリーンはそう言うと強く地面を蹴り、晴天の空へ飛び込む。それから数秒とかからない内に、俺たちは聖女パレードと思わしき祭典の上空へと転移した。
「目視で高さまで指定できず申し訳ございません」
そうは言うが、転移する場所の座標を目視で断定し、転移させる対象も離れている中での転移は神業に他ならない。
「器用にやるな」
俺から放たれた言葉に歓喜の笑みを浮かべながらも、アイリーンはしっかりと俺が落下しないよう風の魔法を発動させる。ちなみにサリアへのリスペクトは無いようで、少し離れたところでしっかりと墜落していた。
「何事だ!?」
再び風魔法で土埃が晴れると同時に、俺は周囲を確認する。どうやらこの祭り、本当に地球で言うパレードに近いようで、吹き抜けの馬車の上に聖女が乗り、集っている群衆に手を振るようなイベントだった。そして今俺たちは、その馬車の進路を塞ぐ形で佇んでいる。
「敵襲だ!!聖女様をお守りせよ!!」
俺たちを認識したエルフたちが騒ぎ始め、周囲から数えられないほどの殺気が向けられる。
「少しでも動けば殺す!!!!」
しかし俺にとってそれは気にもならない程度のモノなので、無視して魔王候補を探し始めた。
まずは聖女になってるエルフから……ってあれ?
俺は馬車に乗っている聖女の方へと視線を向けると同時に、探していた魔王候補を見つける。
しかしそれは聖女の装いをしている金髪の女性ではなく、その隣で小刻みに震えて佇んでいる青髪のメイドであった。
なんだかきな臭くなって来たな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます