第18話 混沌の目的
肝の座った国王を倒した俺は、そのまま王座へ腰を下ろす。そして残った2人は死体と血を消してから俺の前に跪いた。
「早速王国転覆してしまった訳だが、これからどうする?」
「魔法で確認したところ、現在も外ではサリアの作った魅了兵たちが戦闘しているようです」
アイリーンの言う魅了兵とは、この世界に来た直後、ゲート付近でサリアが魅了して手駒とした兵士な事を指している。
それにしても、騎士団とは言え数十人程度簡単に鎮圧されると思っていたが、どうやらそうならない理由もしっかりとあるようで。
「私の魅了は特別性ですので、生命力を犠牲に潜在能力を覚醒させたのです!」
「そんな細かいこともできるのか」
「いえ、これも全てフォル様のお力のお陰でございます!他にも出力は下がりますが、この王都全体に魅了を付加する事も可能です!!」
確かにそれは良い案かもしれない。アイリーンも俺と同じ考えなのか、今後の計画についての案を語り出した。
「我々がこの次元で達成すべきは、フォル様へ安定した混沌の魔力を提供させ続ける環境を整える事だと思います。そのために必要なのは死なない程度の不安であり、魅了は安易に使わない方が効率が良いと愚行します。」
確かに国民を魅了し、各国で戦争を起こせば相当量の魔力は集まる。しかしそれでは短期的であり、万年と生きられる俺にとっては非効率極まりないと言えるだろう。
永続的にある程度の不安、と言うより混沌を生み出させ続ける必要があるのだ。
「面倒だな」
正直文明レベルも能力も低いこの次元で、安定した混沌のためだけにアイリーンたちを使わせるのも勿体ないし、何より最終的には混沌の森を理想郷にして共に暮らしたい気持ちもある。
「やはり現地で魔王でも作るか。」
その言葉に魔王という存在を知らないサリアは首を傾げていたが、長命なアイリーンは流石に知っていたようで、俺の考えに同調した。
しかしサリアやアイリーンに管理させるには、この次元のレベルはそこまで高く無いように感じる。
「この次元で1番才能のある奴を魔王にさせるのが安定か」
そう言いながら俺は座ったまま混沌の魔力を本体から移動させ、一気に仮の肉体から外側へ放つ。
その魔力はこの次元全てに満遍なく伝わり、近くにいるサリアとアイリーンはその圧倒的な魔力に歓喜の笑みを溢す。そしてある程度の力ある者たちはその威圧感を察知し平等に絶望を抱いていた。
「こうして見ると、サリアの潜在能力は場違いも良い所だったんだな」
この次元全体の潜在能力を見終えた俺が真っ先に感じたのは、サリアの異常性だった。確かに、この発展具合で次元の干渉まで漕ぎつけたのだから当然とも言える。
まず苗木の段階でアイリーンの邪魔なく俺に干渉できた理由こそ、この文明レベルなら間違いなく次元の干渉などされないと判断し監視を甘くしていたから、と数日前にアイリーンが語っていた程である。
話は逸れたが、サリアを超える個体は居ないものの、シルぐらいの潜在能力を持った奴は見つける事ができた。
「ここからあっちに1200km先、何があるかわかるか?」
俺は指で方角を表しながら現地人であるサリアに問う。
「おそらくエルフ族と人間族の境界線辺りだと思われます!」
そうとわかれば早速拉致誘拐の旅を始めるとしよう。やっと異世界みたいな事ができるな!
「たが旅に出る間、この国の管理をどうするか……」
俺がそう悩んでいると、心底不思議そうな表情でアイリーンが口を開いた。
「フォル様!旅などされなくても、距離と方角さえわかれば私の魔法で転移する事ができます!」
「そうだったな…」
俺は再び異世界満喫をする事なく、3人で1200km先へと転移するのだった。
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