第13話 混沌の世界樹

『チュートリアル完了。

 目覚めはどうだい?三代目の世界樹。』


 青いウィンドウはその次に、縦長の長文を送りつけてきた。


『僕は二代目の世界樹、深海の世界樹。

 この青いウィンドウは、後世の世界樹の助けになればと用意したものだ。こうしてメッセージが表示されているのなら、アイリーンが上手くやってくれたんだろう。』


 ごめん、信じきれずに殺しちゃった。そんな想いも想定内と言わんばかりに、ウィンドウにはこう言葉が続けられていた。


『もし君がアイリーンを信じきれず殺しちゃっても仕方ないと思う。もし吸収してくれてるなら、その時回収した魂で新しく生み出してくれると嬉しいな。彼女以上に次元の扱いが上手な魂はいないよ。』


 俺は世界樹になった事で、この言葉の意味がすんなりと受け止められていた。

 進化したことで、モノの魂が知覚できるようになり、俺は無意識のうちに吸収によって魂を身体のどこかにストックしていたようだった。そして新しい能力で、その魂と俺の魔力をかけ合わせれば、新しい生命を創る事ができる。なんなら魂を組み合わせて新しい生命を作ることも難しくないと直感で理解した。


『あまり多くは語れないけど、君に伝えておく事は二つ。ひとつ目は、僕たちは生きているだけで世界の均衡を保つ事ができる。ふたつ、この世界にいる有象無象どもはそんな僕たちの力を求めて襲ってくるってことだ。』


 なんか二つ目に恐ろしい事書かれてるんだけど!?


『僕は攻め込みやすい次元にいたからよく襲われてね。深海に住んでて水も操れたからどうにかなってたけど、魔法とか兵器とか使われて水が全部干上がって死んだってわけ。後世の君にはそんな苦労をして欲しくないから、アイリーンを創って君を安全な次元で進化させ、どんな環境でも耐えられる混沌の世界樹を誕生させた。』


 なんか、直球フルスイング善意が来て申し訳ない気持ちになってきた。とりあえずアイリーンごめん。。


『混沌は僕が考えた名前だから、実際どんな力が生まれたかわからないけど、完璧な平穏は外の有象無象を潰して創り換えなきゃ手にできない。君が僕の成し遂げられなかった平穏を手にする事を願っているよ。』


ちょうど下まで読み上げると、そのウィンドウはフェードアウトしていき、次に再びメッセージとステータス画面が現れた。


『これもわかりやすいよう言語化するために、僕が用意したものだ。因みに核での強化は使い物にならない。あれは世界樹までの補助輪みたいなものだからね。

 まぁこれも世界樹になればそんなもの無くても自分で感じられると思うけど、これまでの比較として最後に見せておくね。』


混沌の世界樹(0/0)

所持核 2780006

超成長 Lv.100

毎秒身体能力底上げ

光合成 Lv.100(超成長に統合)

睡眠  Lv.100(超成長に統合)

魅了  Lv.104

支配  Lv.100

祝福  Lv.103

吸収  Lv.100

触れたものを吸収し魂と能力を回収する。自身で使用する事も可能。(威嚇Lv.10×257,植物魔法Lv.69,次元管理Lv.83……)

念話  Lv.---

知覚できる対象と制限なく会話できる。

意図なく他者に傍受される事はない。

世界樹 Lv.---

吸収で回収した魂と能力と魔力を組み合わせて新たな生命を生み出し管理する。

混沌  Lv.100

混沌を操る


魔力量 7985046040(約80億)

※吸収で回収

※混沌で回収



 まず既存の能力から見てみると、光合成といった経験値関連のものが、全て身体能力を底上げするものに変わっている。おそらくこれ以上の進化がないので、腐らせないようにスキルが結合されて変わったのだろう。

 そして微妙にレベルの高い魅了と祝福は、おそらく進化中の緑女がもっていたものを吸収して自身に取り込んでいたからなのだろう。核で上げた分が無意味になったのは勿体ないが、仕方ないと諦める他ない。

 最後に新しい能力たち。世界樹は生命を創る関連で、混沌というのが俺の特有の能力なのだろう。もっと詳しく念じてみるが文字として出てくる事はないので、これは俺自身ざ肌で感じる必要があるらしい。

 加えて魔力の方は自然回復ではなく、吸収で何かを養分にするか、俺の特性である混沌が世界にあれば増えていくようだ。次元を封鎖しているのに、この森にいるだけで毎秒5000ぐらいは平均的に増えていた。


 そうして一通り確認し終えた俺は視線を地上に落とす。不思議な感覚だが、この次元の中ならば物体関係なくどこでも覗き込めた。


 とりあえずトロトロなアイリーンを申し訳ないが完全に吸収してしまって、従属していたナキたちを根本に集める。

 そういえば近くでしか俺の姿を見てなかったので、かなり遠くから目を開けてみると太すぎる幹が雲に突き刺さっていた。様々な色と模様が混じっており、不気味なような神秘的なような、うまく混沌を表しており、どこか進化中に植物と合体した後の俺の姿に似ている。


『大樹さま!集まりましたっ!』


 因みに白く美しいながらに威圧感ある体格になったナキだが、中身は出会った時とそこまで変わりない。戦闘能力は他に劣る奴もいるが、最初の従属というのもあって、俺との念話の返答は基本的にナキが担当していた。


『無事に進化できた。そしてお前たちには、これから俺に吸収されて、新しい生命になってもらう。それじゃ、俺の幹に身体を預けてくれ。』


 念話を使える者も多いが、もちろん何の意を唱える事もなく幹に身体を預けていた。なんなら一部のモンスターたちは、俺と身体が触れる事に興奮していた。魅了の粉撒いてないぞ……。


『さて、じゃあ溜まった魔力でモンスタークッキングとでも行きますか!』


まずナキとアイリーンはベースそのままで……てかアイリーンは先代の傑作なだけあってしっかりしてるな。俺も負けないように作り上げるか。


てか緑女の名前ってサリアって言うんだ。こいつの魂のスペック高……全然アイリーンとかナキレベルじゃん。


 俺のために死んでくれたシルたちの魂も無事あるな。スペックはそこまでだけど、あいつらの結束凄かったし、それを生かして全員でひとつの個体にする感じに混沌の魔力で繋ぎ合わせて…。




 そうして生命創りに熱中した俺は、ナキ、アイリーン、シルたち狼、緑女(サリア)、混沌の森にいてアイリーンが討伐した精霊(リディ)を創る事にする。

 因みにリディは混沌の森で生まれた紫と緑の長い髪をした精霊で、俺と波長があったからと自ら従属しに来た変わり者だ。魅了の粉なんて与えた事ないのに、俺をみるだけで興奮する具合には壊れている。


 話は脱線してしまったが、そろそろ世界樹の力を実演しよう。


『まずはナキからだ』

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