第3話 傾国の花

あれから魅了草のまま合計8回の進化を繰り返し、俺は新しい種類の花に進化して、凄まじい進化を手に入れていた。

補足だが、これ以外の進化の候補はもう出てこなかった。


傾国花(0/20000)

超成長 Lv.30

光合成 Lv.30

睡眠  Lv.-

経験値獲得(1)

魅了  Lv.-

魅惑の花粉を撒く(10)

支配  Lv.-

従属させる蜜を出す(1)


まず魅了が上限に達したからか、説明欄が一行に統合された。そしてこの謎の数字は、花粉が通用するレベル帯を指し示しているようだった。それこそ1では狐すら魅了できないが、2ならば全花粉を費やして狐は魅了できた。

ここら辺は感覚でしかないので、結局は実験を繰り返すしかないが。


そしてこのLv.-だが、上限のことを表しているのかと思ったらそうではないらしい。

どうやらここからレベルを上げるには、モンスターを倒すことで得られる『核』を吸収して、その大きさや濃度でポイントが手に入れる必要があるらしく、それによって()の数値が上がって効果が拡張されるそうだ。

念じなければわからないとか、なんてユーザーインターフェイスの悪いステータス画面なのだろう。制作者に直訴したい。


ってそんな事より今は支配か。

考えても仕方がないので、俺は横にいる狐に花粉を撒きながら誘導し、蜜を垂らして飲ませることに成功する。


すると狐の身体が光出す。


そうして少しの時間が経過すると、狐が一回り大きくなり色も日本にいる狐とは違って白が基調となっていた。


"お花さま!!"


そして突如脳内に響いた声に心臓が飛び出たかと思った。まぁ心臓なんてないけども。


もしかして狐か?


問いかけるように念じてみる。


"そうですお花さま!大好きです!私を奴隷にしてくださいっ!"


するとお腹を上に向けて可愛い声で鳴いて見せた。


明らかにやばい蜜だという事が確定した。今までの情報を整理すると、蜜を与えれば何段階か進化or成長させ、テレパシーの開通と無理矢理奴隷にさせるって感じだろう。

もしかしたら狐特有の能力もあるかもしれないので実験あるのみだが。

しかしこの蜜、出した感じからするに一日に何十回も出せるようなものじゃない気がするな。


と、話が脱線してしまったが、俺は絶対に裏切らない護衛と、話し相手が同時にできたことに喜びながら、奴隷になることを認める。

少し麻薬のようで使うのに罪悪感も抱くが、ここは弱肉強食の異世界の森。俺は自分ができることを精一杯やるしか生きる道はないのである。


それで狐、名前とかある?


"ありますが両親からのより、お花様につけてもらいたいです!"


蜜の効果がやばすぎるのか、両親との仲が悪いのか、できれば後者であって欲しいと思いながら俺は名前をつけてやる。


ナキにしよう


ちなみに名前に由来などなく、ただ見た目と雰囲気に似合いそうなものを選んでみた。

適当と言えば適当だが、ナキはそんな事気にすることもなく貰った名前を純粋に喜んでいた。


愛くるしいナキを見て癒されながら、落ち着いてきた頃に俺はこの森について聞いてみる。しかし意思疎通が取れると言っても動物だし、ましてや見た目通りの子供だったようなので確信に迫れる答えはなかった。


それでもここは森の深部でありながらも比較的安全な場所であり、その理由が時々上空を飛んでいる竜の棲家が遠くので睡眠中に激しい戦闘が起きれば一瞬で殺されるからだという情報は手に入った。言うなれば空飛ぶ竜のナワバリという事だそう。


俺は魅了のレベルがカンストしてそこそこの範囲を花粉で満たせるようになったが、変な事をして認識されるみたいなヘマをしなかったことに安堵する。


まぁでも俺が動けるわけでもないし、大人しくここで成長を迎えるようにしよう。核を集めて魅了を上げたいのもあるが、わざわざ無理して急ぐこともない。


てことで俺はテレパシーでいつものように過ごして、敵がいたら報告するようにとだけ伝えて無心状態になる。


支配花は段階を踏まないようだし、そろそろ花から苗木くらいにはなってくれるのだろうか。


純粋に次の進化先を楽しむ花であった。

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