第2話 JK、極道に救われる

 昨日の深夜、黄花オウカ レイは公園でふてくされていた。


 看護学校で、相手のミスをなすりつけられたのである。いくら弁解しても、ナースの婦長は味方をしてくれなかった。


 帰る気にもなれない。かといって、看護師をあきらめる道も考えられなかった。


 人の役に立ちたいと、親の反対を押し切って始めたことなのに。


 このまま、風俗嬢になってしまおうか。そういう人の癒やし方もある。


 しかし、いわゆる「キッズ」を食い物にするオトナを見て、考えは変わった。


 帰ろう。


 そう思った矢先のことだ。


 まるまると太ったブタの怪物が、JKをはべらせているサラリーマンを、文字通り「食べて」いるではないか。食いものにするという比喩表現ではなく、物理的に食している。


 逃げた女子高生が、レイの後ろに隠れた。


 怪物が、レイに照準を合う。


 逃げることは、できない。助けないと。


 落ちていたビール瓶を、何本も怪物に投げつける。その間に、女子高生を逃した。


 だが、もう周りにはレイしか残っていない。野次馬も、サラリーマンが食われた様子を見て逃走してしまったようだ。


 拳銃を発砲した。


 だが、弾丸は怪物の皮膚に傷をつけられない。


 怪物は、警察を食べてしまった。


 もう、助けは来ない。自分も逃げないと。


 だが、足がすくんで動けなくなっていた。


 これまでか。


「ヒトの島で、なにしとんじゃコラああ!」


 極道風のオッサンが、鉄パイプの椅子を叩き込む。パイプ椅子は、屋台から拾ったものだ。


「この番原バンバラ ギン様の島でイケズしよるとか、ええ根性しとるやないけ!」


 パイプ椅子を振り回して、オッサンは怪物を弾き飛ばした。ビール瓶も拳銃も、通用しなかったのに。


「落とし前つけんかい!」


 オッサンはとどめに、パイプ椅子を叩き込む。だが、パイプ椅子がひしゃげてしまった。


「これ、オッサン!」


 レイは、ビール瓶を怪物に投げつける。気休めかもしれないが、怪物をオッサンの目から話せる。その間に、オッサンが逃げてくれれば。


 やはり、怪物には通じていない。


「お嬢ちゃん、ビール瓶の効果的な使い方を教えたらあ」


 オッサンは、ブタの怪物にビール瓶を食わせた。なにをする気だ?


「からの、おらあああ!」


 怒涛の膝蹴りを、オッサンはブタの怪物に見舞う。

 口の中をぐちゃぐちゃにされて、怪物は何かを吐き出した。


 さっき食べたサラリーマンや警察官である。消化されたと思っていたが、彼らはちゃんと息をしているではないか。


 人間を吐いた怪物は、今度こそ絶命した。

 

 だが、倒れた拍子にオッサンも下敷きになってしまう。


「オッサン! 今助けに……」

 レイが手をかそうとした、そのときだ。


 戦隊を名乗る数名が、怪物を完全に消滅させた。救急車を呼び、オッサンとレイを本部へと連れて行ったのである。

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