第35話 「お母さんよ!! 旦那の忘れ物の私を持参して来ました!!」 ~現場主義だった宰相、来ちゃった~
淫乱宰相タオヤメ・バロス。
35歳。まだまだ淫乱盛り。
マスラオよりも1歳年上の姉さん女房であり、これまた淫乱しやすい年齢のカップルとも言える。
14年ぶりに再会したので、もう益荒男の『
「あなた!! 牛のお乳を搾らなくて良いなら! どうして私を呼んでくださらなかったのですか!! タオヤメは!! ずっとお待ち申し上げておりましたのに!! ピンクのティーバッグを用意していましたのに!!」
「やっべぇ人が来ちゃったんすけど。カメラ止めるっすか? ピンクのドエロな下着ぽろりはやべぇっすよ」
「出ました!!」
「あんたも出すんすか!?」
「マロリさん!! 宰相さんはティーバッグと言いました!! マロリさんが頭に浮かべているえちえちなものはTバック!! ロリさんには一生ご縁のないものです!! 対して、ティーバッグはカップに設置してお湯淹れるヤツです!!」
配信は続行中。
「ロリリン元気出して!」「ロリリンのTバック見たい、見たい」「エッチな下着と勘違いするロリリンまじロリリン」と視聴者が12000人ほど増えた。
「……知ってたっすけどぉ!?」
「小刻みにプルプルしながら真っ赤になってもカメラを向けているマロリさんはプロです!! 胸を張ってください!! 小さいヤツ!!」
涙を拭いて撮影担当マロリは胸でカメラを固定。
実に安定しているので、映像が微動だにしない。
「さあ! まずはピロートークから始めましょう!!」
「タオヤメ!! 私ね、未だに淡白なの!! むしろ年取ってちょっと性欲も減退した!! ピロートークはしてあげるから! 帰りなさい!! ……1分で充分だ。さあ、済ませよう!!」
「おっさん、すっげぇ強者のオーラ出してんすけど。全部含めて1分っすか? トークすらする気ねぇんすけど」
「マロリさんって実は色々ご存じですよね。予定もないくせに。さては耳年増ですか!!」
プロヴィラルでは17歳から成人なので、適切な性知識である。
沈黙を守っていたチャー・ハァァンの魔王。
エリリカ・バロスが口を開いた。
「あの!!」
「まあ! エリリカ! こんなに大きくなって!! サキュバスの資質ありますね!! 15歳にしてはたわわ!! こんなに大きくなって!!」
「はじめまして!! エリリカです!!」
「礼儀正しい!! 母親に似たんでしょうかね!!」
エリリカちゃんはご挨拶。
礼儀正しく元気な挨拶がモットーの魔王である。
なお、配信は続行されているため、1つの事実がメモリア・リガリアの電波に乗って流布された事となった。
淫乱宰相に旦那と娘がいる。
「それの何が問題なんすか?」
「出ませんでした!!」
確かに、特に問題はなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
マスラオは考えている。
この場をどう納めるべきか。
具体的には、タオヤメにどうやって帰ってもらい、どうやってもう14年くらい会わないで済むかを、である。
「ガイコツくん」
「はっ。この空気で我が呼ばれると、ほぼ確実にバラバラコースですな。これまで楽しゅうございました。では、来世にて」
ザッコルは結局1度も身体はバラバラにされなかった。
だが、バラバラになった心は元に戻らない。
「ガイコツくんって偉いよね?」
「とんでもありません。我は原初の教えに従って水洗トイレを開発した偉人の1万分の1の価値もない、ただの骨です」
ガイコツがトイレを使用するのかは分からない。
「ちょっとさ。タオヤメのスキャンダルでも作ってさ。適当に流して、首都に帰らせてくれない?」
「お父様は我に死よりも苦しい目に遭えと申されますか。人を弄び殺して来た罪は消えませんでしたか。拝承仕りました。ただ、それをしてもお父様とエリリカ様が首都に連れ去られるだけかと」
「……本当だ!! もう牛の乳が待ってるって言い訳が通じない!!」
ウフンア・ハァァンにも牛はいる。
「もうお父様が宰相閣下が満足されるまで抱いて抱かれては?」
「ガイコツくんはバカだなぁ。タオヤメとアレするとね。すっごい疲れるのよ」
「2分なのにですか」
「そう。翌日の乳搾りの効率なんて3割まで落ちるからね。手首に力入んないの」
「お言葉ですが、お父様。サキュバスは『
ガイコツの記憶中枢がどこにあるのかも分からない。
お父さん恐怖症が発症後1度も改善されない事を踏まえると、恐らく心である。
「違うんだよ! ガイコツくん!! 私ね!! 夜の体力がないの!!」
「はっ。……48時間乳搾りがこなせるお父様がですか?」
「そうだよ!! なんかこう……分かる? 分かんないかなぁ? 興奮するじゃない? 始める時に。そこでね、普通の人はみなぎって来るのかもしれないけど! 私! 満足するの!!」
「始まっておりませんが? あ゛。もしや、機能不全であらせられる?」
「違うよ!! マスラオのマスラオは大地に立つよ!! そして終わるの!! 私!! 淡白なの!!」
「お父様!! それはあまりにも早いというもの!! 淡白どころではありません!! 何も致してないではないですか!!」
かつてセフィリアの鑑定魔法によってマスラオの交際経験は0と出ていた。
交際とは何をもって、何をすれば成立するのか。
それは人によって認識が違うだろうし、一概にこれという答えは存在しない。
「出ました!! プロヴィラルでは性行為をしていない場合は交際と認められません!! 魔国法に記載されています!!」
「あらやだ! このお清楚なお嬢ちゃん、なんだか私と話が合いそう!! そうなのよ!! つまり私とマスラオ様! 夫婦以上恋人未満なの!!」
プロヴィラルでは答えがあった。
子供がおててつないで一緒に出かけて、ほっぺにチューして、将来は結婚しようねと誓い合ってもそれは交際にあらず。
子供のおままごとである。
アレをナニしてこその交際。
つまり、マスラオ・バロスは。
「いい加減に私を抱いてください!! マスラオ様!!」
「無理なんだよ!! 私、興奮したら満足するんだから!! 淡白なの!! あと……。それしちゃったら、どうなるか分からなくて、怖いじゃない!!」
ピュアな34歳だった。
バロス・チョロス・ロリの登録者数が80000人増えて「お義父さんと俺たちは同志だった!!」とコメント欄がパンクする。
「えー!? なに!? 何の話してるの!? マロリちゃん、聞こえないよ!?」
「エリリカは聞こえなくていいんすよー。ウチが耳を塞いどいてやるっすよー」
ロリリン、お仕事中。
そしてマスラオは決意した。
「タオヤメ!! 君はここで討つ!!」
「はい、来ました!! 見られながらですね!!」
「くそやべー夫婦だったんじゃねぇっすか。カメラ止めらんねぇっすわ。これ一生分稼げるヤツっすもん」
今、ここに最後の戦いが始まろうとしていた。
お父さんがしていた忘れ物を届けに来たお母さんと、ナニかが始まる。
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