第22話 スライムでやらかした女子たちの大反省会 ~登録者が激減しました~
お父様スライムまみれヌルヌル事件。
のちにレーゲラ・ハァァンでそう語り継がれる一大事から一晩明けて、バロス・チョロス・ロリはレーゲラ城に引き上げていた。
エリリカは服を失い、セフィリアは羞恥心を得る。
マロリは「飯もらえるんすか? じゃ、今日は泊まるっす! サンキュー! シカさん!!」と失うものはなくお腹が膨れた。
マスラオはヌルヌルしていた。
「ガイコツくん。私は何がいけなかったの?」
「あの。まずですね。大前提として、ゲルアメーバを。ああ、娘様の言い方に合わせますとスライムですが。スライムを破裂させた人間というのを我は聞いた事がありません。スライムの耐久値はかなり高いので」
「ガイコツくんの話は分かりにくいよ!!」
「ええ……。お父様基準で喩えますと、牛が30頭が順番に踏みつけても破裂することはありません。スライム」
「すごいじゃない!!」
「はい。本当に。我もそう思います」
ザッコルが続けた。
「スライムのヌルヌルは捕食のために出しているものですから。彼らは小動物くらいまでしか食べませんし、人間に悪影響を及ぼすとなれば半日くらいヌルヌル風呂にでも漬かる必要があれますれば……。ただですね、お父様が浴びられたのは体液なのでございます。体液はもう、魔族でも嫌います。魔族初等学院ではゲルアメーバの体液を投げつける事は重大ないじめ案件として、罪を犯した者は保護者が呼ばれ2週間のトイレ清掃の罰を与えられる禁忌」
ニポーンで言うところの犬のウンコみたいなものらしい。
「どうしたらいいの!! エリリカちゃんが寄って来てくれないんだけど!!」
「……くすん」
エリリカは別に「お父さん臭い! ベタベタする!! あっち行って!!」というアレで寄って来ない訳ではなかった。
他に大変なショックを受けていたので「お父さんは別にいいじゃん。1年くらいヌルヌル、ベタベタしてればさ……」と、おじさん特有のテンションに近寄りたくなかったのである。
「それはそうですよ。あんな動画をなんで配信したんですか? エリリカさん、さてはバカですね?」
「セフィリアがそれ言うんすか。あんたも頭悪い詠唱しかできねーのに」
「だって!! あんなに苦労して! あたしなんか服もなくなっちゃったし!! 次の動画が撮れないから!! ……その、ちょっとくらい視聴者増えたらなって思って」
エリリカは昨日のスライムと戦ってみた動画をバロス・チョロス・ロリのアカウントにアップロードしていた。
結果。
10000人を超えていた登録者が5000人を割る事態が発生していた。
「や。ウチらも止めなかったのはアレっすけど。……おっさんがスライムの中で、わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! とかわめいてジタバタしてる動画をアップするとは思わねぇじゃないっすか!? しかも!! あんたタイトル詐欺してるっすからね!?」
「だって!! 『女子だけでスライムと戦ってみた』ってタイトルの動画はみんな伸びてるから!! そっちの方が良いかなって!!」
「女子のちょっとエッチな動画かなと思ってウキウキで端末持ってて! 出て来たのがガチムチのおっさんでしかもヌルヌルテカテカしてるとか! 罰ゲームどころかもうそれバァァン案件なんすよ! ねぇ! ガイコツさん!? そっすよね!?」
ヌルヌルしているマスラオから逃げないガイコツの鑑が返事をした。
「バァァンの処理は1度されております。うちのヤッコルがダミーのアカウント、バルス・チョリーッス・ロリをバァァンして事なきを得ました」
「なんでウチの部分だけロリのままになってんすか! いや、ロリじゃねーんすよ!!」
プロヴィラルの配信文化はまだまだ黎明期。
特に問題として多く挙げられるのがタイトルと内容の乖離したものと、「お金あげます! 詳しくはこちらまで!!」などという短い動画で良くない動画に誘導するもの。
魔国配信審議局は容赦なくバァァンする。
「……ごめんなさい」
「エリリカちゃん! 仕方ないよ!! 失敗をして人は成長するんだよ!!」
「お父さん!! あ。やだ。ちょっとこっち来ないで。なんか飛び散って来た」
「わたくしは被弾しました! これはマスラオ様の体液という事でいいですか!」
「スライムの体液だって言ってんすけどね」
やっちまったバロス・チョロス・ロリであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『ふっはっは。愚かな人間ども。明日は出勤日であるが、急遽休みとする。貴様らなどが1日いなくともレーゲラ城は何の問題もないのだ。ふっはっは。こちらの都合で休みにした手前、賃金は補償してくれる。くだらぬ家族の団らんなどにうつつを抜かすがよかろう!! 魔族の職員。貴様らは働き過ぎだ。精々このザッコルの圧政により、働けぬ苦痛を味わうが良い! ふっはっはっは!! 政治を正したくばこのザッコルに挑むのだな!!』
ガイコツ通信でレーゲラ・ハァァンが連休になった。
「あ。失礼しました。ヤッコルぅー!!」
「へーい。持って来ました」
ヤッコルが持参したのは大量の藻。
それをマスラオの周囲に等間隔で配置すると、ザッコルが赤い光を放った。
「我が部下モッコルよ……。我よりも年上のモッコルよ……。今、再びこの世に舞い戻りて使命を果たすのだ!!」
ガイコツ魔法で藻がモコモコとマスラオ目掛けて飛び掛かると、緑色の集合体に姿を変えた。
「モッコル! 141歳!!」
「ガイコツくん。君、ヌルヌル取る方法があるって言うから私、全裸で魔法陣の真ん中に立ってるのに。なに、これ。怒るよ?」
「お待ちくださいましぃ!! モッコルは全てのものを吸収する特性を持った魔族!! ヌルヌルだってお手の物でございます!! シンク周りの掃除の際などモッコルの右に出る者はおりませぬ!!」
「あ。そうだったの? ごめんね、イライラして。だからエリリカちゃんたちと離されたのか。これ、何分で終わるのかな?」
「ザッコル様、お伝えしてないんですか? それ3日はかかりますね。あと、エリリカ様たちは先ほど出て行かれましたよ? 減った登録者を取り戻すから! ちょっと近くの魔王倒して来る!! と申されて。あ。これもお伝えしてなかったんですか? ははは。すみません」
「ヤッコルぅー!! ヤッコルぅぅー!! 我がバラバラにされるのを見るが楽しいか!? 魔王をエンターテインメントにするとは貴様……!! もうヤッコルが魔王やれ!」
お父さんが全裸に藻をくっ付けてしばらく動けなくなった。
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