第23話 チャー・ハァァンにやって来た勇者一行 ~服を買わねば、エリリカちゃん~
反省してしょんぼりしたエリリカ。
バロス・チョロス・ロリの登録者が初日で10000を超えて、翌日に半分以下になる。
こうなるとちょっとやそっとでは回復できない。
なにせ、お披露目で可愛い女子を3人並べたのだ。
明るく元気な金髪少女。
お清楚辛辣塩対応系ダイナマイト女子。
魔法少女ロリリン。
「ざーけ」
綺麗に属性が分かれており、どれかが刺されば箱推しも叶う布陣だった。
そこで翌日にいきなり大人気企画「スライムと戦ってみた」が配信される。
有料公開した事によって「まず通行料を払え。天国へはタダじゃ入れない」という縛りがワクワクを最高潮にし、服を脱いで正座して投稿されるのを待っていた視聴者も多くいたという。
公開されたのは服を溶かされながら「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」と呻き声をBGMにのたうち回るお父さんの動画だけ。
ザッコルたちの根回しが無ければ永久バァァンもあり得た。
「あぅぅ……。ごめんなさい……。ごめんなさい……」
「仕方ないよ!! エリリカちゃんはまだ15歳なんだから!! むしろね! そういうリテラシーを教えなかったお父さんが悪いの!!」
落ち込むエリリカを励ますマスラオ。
「どこから喋ってんすか、おっさん。城中に声が響いてんすけど。エリリカの醜態が一瞬で拡散されてくっすね」
「うぅ……。仕方ないんだよ、マロリちゃん。あたしが悪いんだもん。マロリちゃんもいたずらして怒られる事とかあるでしょ?」
「マジでざーけ。マロリちゃんは仕事しねーで怒られることくらいしかねぇんすよ。なんすかいたずらって」
「それはですね! 性的な行為ではないでしょうか!!」
「せめて疑問形で聞きやがれってんすよ!! セフィリア!! あと、出ました! やれって話なんすよ!! なんで私見を述べるんすか!?」
「出てました!!」
「おせぇんすよ!!」
「エリリカさん! お隣のチャー・ハァァンの魔王がここのところ配信者を惨殺し続けていて話題になっているみたいです! ここは汚名挽回!! 汚名のおかわりをするために、チャー・ハァァンに遠征して魔王を相手の勇者配信をされるのはどうですか!!」
「こいつ。誤用してねぇっすね。名誉回復は無理って言ってるじゃねぇっすか」
「いいんです! 要は目立てばそれだけで一定の視聴者をゲットできます!! 多分ですが!!」
「せめて鑑定してやれっすよ……」とマロリがエリリカを慮った。
「はぅ……」
「あー! もー!! とりあえず、行くだけ行くっすよ! エリリカ服なくなっちゃったんすから! なんかオシャレなヤツ買えば良いんじゃないっすか!? ほら。そこにおっさんの用意したインナータイツだけは山ほどあるんで! 新しいミニスカ買えばいいんすよ! んで、パンチラしながら魔王ぶち殺して新規ファン獲得っすよ!! ね!!」
「マロリちゃぁぁぁん!!」
「……なんでウチがチーム存続のために尽力させられてんすか」
遠くの方から全裸に藻を纏ったマスラオの声が聞こえる。
「ロリリン!! ガイコツくんがきっと何かくれるから!! エリリカちゃんの事をお願いね!! とりあえず私がヌルヌル取れるまでお城から出さないで!! お願い!!」
マロリが方針をすぐに変更した。
「つーことで、しばらくは大人しくして! 反省するんすよ!!」
「うん! あたし、チャー・ハァァンに行く!! 今度こそ、正々堂々と魔王を殺すんだ!! 頑張る!! セフィリアさん! マロリちゃん! 力を貸してね!!」
ガイコツプレゼントは基本的にかなり高価。
これはマロリとしても絶対に逃したくない。
一方で先にエリリカのまだ幼くピュアな心を焚きつけてしまった自責の念もある。
「出ました!! マロリさん! サッと行ってスッと戻れば多分バレません!!」
「鑑定士がそーゆうんなら、仕方ねぇっすね!! ササっと行くっすよ!! バレねぇように! はい、支度して!! セフィリアは適当にローブ羽織って! エリリカはなんかほら、ガイコツさんがくれた職員用の服! 準備できたら出るっすよ! おっさんに気付かれねぇうちに!!」
マスラオがバロス・チョロス・ロリのササっと遠征に気付くのは少し先の未来の話である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
チャー・ハァァンはレーゲラ・ハァァンに比べると解放的で、悪く言えば治安が悪い。
ザッコルは徹底した人間と魔族の管理に加えて福利厚生と住人の意見を尊重する圧政を敷いており、人間満足度もプロヴィラルの中で五指に入る都市経営を続けている。
チャー・ハァァンは放任体制。
税金を納めていれば法に触れるか触れないか、ちょっと触れてるけど触れてないか判断が難しい辺りまではスルーされる。
そのため無認可の商店なども賄賂と言う名の免罪符で軒を連ねており、一般的に流通しているものならば何でも揃い、必要に応じて非正規のものも手に入る。
商業と娯楽が産業基盤の都市。
レーゲラ・ハァァンからは徒歩なら4時間ほどで着く距離なので、日頃からザッコルが「ふっはっは。勝手に移住して来る輩が多くて困る。我のレーゲラを荒らすな」としたためた手紙を骨に括りつけてチャー城の魔王に投げつけている。
「着いたぁー!! やっぱり竜車って早いね!! 乗ったのこれが2回目!!」
「セフィリアの実家ってマジで金持ちなんすね。端末で連絡して10分でこんな快適な移動手段を出前してくれるとか。……仲良くするっすよ!! ウチら、ズッ友っすからね!!」
チョロス家は2代前の当主がプロヴィラルの魔国議会で議員をしていた事もあり、今は大人しくレーゲラ・ハァァンで活動をしているが資産は潤沢。
このほど当主になったセフィリアはマスラオの遺伝子が欲しいので、将来的な義妹であるエリリカにもなんだかんで甘い。
「ウチ、今からセフィリアの事をお姉ちゃんって呼んでやってもいいっすよ!!」
「出ました! 結構です!!」
「……ちっ。これだからお嬢は嫌なんすよ。友達選ぶし、養子縁組も渋るし。なんなんすか。……あれ。エリリカがいねぇんすけど」
「あっちの方に駆けて行きました!!」
「止めるんすよ!! あの子、田舎者の村娘なんすから!! ぜってぇ迷子フラグじゃねぇすか!!」
「出ました!!」
「出すのはヤメらんねぇんすか? あんたの鑑定って排泄みたいなもんなんすか?」
「エリリカさんがトラブルに巻き込まれる確率は……2000%です!!」
「このバカ乳も頭悪いから鑑定魔法使いこなせてねぇんすよ……」と呟いたマロリが、迷子のエリリカ捜索を開始した。
ロリリンなのにこの中で1番お姉さんみが強い、そんな魔法少女である。
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