マイルストーン
わたしは今後の目標の
乙女ゲームの中のアイビスは家柄こそいいものの、水晶学園での成績は今ひとつであったせいでアイビスの周りには家柄を目当てに擦り寄って来る取り巻きしかいなかった。
断罪からの処刑ルートを避けるためにも、攻略対象に
全校生徒に一目を置かれる学業優秀な生徒になれれば、マリエルに余計なことをしない限り断罪ルートに進むことも無いはずだ。
逆に家柄があまり良くないマリエルの取り柄はたぐいまれなる学力と、その結果手にした主席入学の栄光だけである。
そんなマリエルも入学してすぐの頃はまだ魔法の才能を発現していない。
夏休みのバイトで次期大司教候補であり攻略対象のクリスくんと出会い魔力の潜在能力を開放するイベントが発生するんだけど、それまでは魔法を使うのはどちらかと言うと苦手だった。
その魔力開放イベントも主席入学フラグがイベントの発生条件のはずだわ。
主席入学がイベントの開始フラグだと断言できないのは、ゲームでは入学試験イベントでクイズ形式のテストを主席入学となる正解率8割を超えるまで延々やり直させられるからなのよ。
なのでゲームではマリエルが主席入学以外のパターンはない。
主席入学の成績を話の発端として攻略対象と話すのがイベント開始の切っ掛けになっているはずなの。
だから、マリエルを首席で入学させなければ断罪イベントは発生しないと思うのよ。
この世界はゲームと完全に同じじゃないから、わたしというリルティマニアがアイビスの中身ならば悪役令嬢の
なにしろ、リルティマニアのわたしには解けないクイズは無い!
まあ、わたしの頭がいいんじゃなくて、クイズ3000問の正解を全部暗記してるだけなんですけどね……。
高校生活のほぼ全てをリルティアの攻略に注ぎ込み、高校の勉強を手抜きしてテストを赤点ギリギリでどうにか乗り越えて来たわたしのリルティア
アイビス《わたし》が主席入学になれば入学式直後の王子とマリエルの出会いイベントの発生フラグが立たなくなって、王子がマリエルになびくことも無いはず。
うん! 完璧な計画!
わたし、冴えてる!
王子がマリエル以外の誰と付き合おうとどうでもいいけど、わたしが王子と付き合うのだけはお断り。
断罪イベントで王子がアイビスを足蹴にする冷酷な一面を知った後で、王子と付き合えと言われてもちょっと無理。
ノーサンキューでごめんなさいだ。
わたしはアイに勉強の準備を用意してもらう。
久しぶりのクイズで腕が鳴るわ!
と、思っていたんだけど……。
机の上に用意されたのは分厚い参考書の山だった。
一冊一冊が辞書の厚さを超えている。
それもとんでもない冊数が積みあがっていて、地震が来たら崩れた本の山で生き埋めになって二度と這い出せない気がする。
「なに、これ?」
「なにと言われても……。これはお勉強用の参考書」
「いやいやいや! こういうのじゃなくて、コントローラーとかゲームセンターのテレビゲーム機みたいなクイズマシンはないの?」
「クイズマシン? ですか?」
「そうそう、テレビ画面が付いていて操作するボタンとレバーも付いてる感じのやつよ」
アイは深く頭を下げて謝る。
「申し訳ございません。アイはクイズマシンと申すものは存じません」
がーん!
クイズマシンが無いですと!
それじゃ普通に勉強するしかないじゃん!
アイが言うには普通に机に向かって参考書で勉強するのがこの世界の勉強らしい。
現実世界と一緒じゃん!
自慢じゃないが、机に向っての勉強には自信がない!
この世界は乙女ゲームの世界だけど、ゲームそのまんまの世界じゃないのね。
机に向っての勉強なんて10年以上したことないし、久々にするのは結構辛い。
わたしは高校の時に手を抜いた勉強のツケを今になって払わせられる羽目となった。
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