第49話ここがあなたの居場所
レイドボスを攻略したと判断されたらしく、メノウとイチズ、スズはダンジョンの入口に戻された。ヒビナはメノウとは違って、ダンジョンに囚われてしまったままだ。
二人の何が違うのか。
恐らくだが、恐怖を乗り越えたかどうかであろう。
メノウは、自分のなかの恐怖を乗り越えた。ヒビナのスズへの恋は続いていたからこそ、その恋を終わらせることが出来るスズ自身への恐怖を乗り越えられなかったのだ。
「メノウ!」
ダンジョンから出てきたメノウを一番に抱きしめたのは、フブキであった。力いっぱいメノウを抱きしめて、本人に嫌がられてしまう程だ。
「もう馬鹿なことはするな。悩んでいることがあれば、なんでも言え。私が理解するまで、自分の事を言え!!」
フブキは、メノウの頬を引っ張った。それこそ、切れてしまいそうなほどである。
イチズとスズは止めようかとも思ったが、フブキが泣きそうな顔をしていたので何も出来なかった。
「私は、お前のことを本当に家族だと思っているのに……。兄になったつもりでいたのに」
フブキの告白に、メノウは目を丸くする。
いつの間にかフブキの手は、メノウの背に周って彼をしっかりと抱きしめていた。
「……これからは、兄を頼れ」
メノウは困った顔で、イチズたちの方を見た
イチズは「お兄ちゃんに甘えておきなさい」と年上らしくアドバイスをする。メノウは戸惑いながらも、フブキの背中に手をまわした。イチズから感じた体温とも違う安心できる体温を改めて感じて、メノウは涙ぐむ。
ここが自分の帰る場所でいいのだ、とフブキが——兄が言ってくれたような気がしたのだ。
「やーい、いじめっ子。未成年をいじめたらいけないだぞ。元先生にいっちゃ……」
ユウダチが遠くでフブキをからかっていたので、彼の顔面には棍が勢いよく飛んできた。地面に大の字になって伸びてしまったユウダチの姿に、カスミは大爆笑をしていた。
「はれ……もしかして、兄のポジションって取られていたのか?」
大の字に倒れながら、ぼそりとユウダチは呟いた。どこまでも残念な男である。
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