第10話ガマガエル
「キモ……」
イチズの気持ちは、コメントと同意権であった。
『レイドボスって、全部がこんなのなのか。滅茶苦茶きもい!』
『気持ち悪いんだよ、レイドボスって。よくわからないけど、全部が全部気持ち悪いし、グロいって噂なんだ!!』
『こんなのと戦いたくないって!!』
『第五階層にいるボスが、可愛くみえるよな。レイドボスは、なんというか生理的に受け入れられないのが多い』
巨大すぎるモンスターの嫌悪感をもたらす見た目に、冒険者たちは今まで以上の戸惑いを見せていた。ダンジョン警察のフブキは、そのなかにあっても冷静である
「不味いな。レイドボスのレベルは、百五十。三十人程度の戦力ではたりないかもしれない」
ぶつぶつと呟くフブキの言葉は、イチズには理解できないものだった。
『レベルって、なんだ?』
『あ眼鏡は、漫画みたいにモンスターの戦闘力が見えるんだよ。残りの体力とかも数字化されて見えているはずだ』
『なにそれ、便利すぎる』
コメントの内容によれば、フブキは眼鏡を通してモンスターの強さと体力が分かるらしい。高価なアイテムだと聞いてはいたが、それに見合う便利な道具である。
「イチズさん、あれはエルフですよね。大きなエルフ!」
恐れをなしている冒険者のなかで、メノウは元気だった。その様子と言葉にイチズは、頭痛を覚えた。
「エルフじゃなくて、カエル!」
イチズの訂正に、メノウの笑顔は枯れた。自信を持って、カエルをエルフと言っていたらしい。
「楽しくおしゃべりをするな!」
フブキの怒声と共に、カエルの卵が冒険者たちに向かってくる。全ての卵がバラバラになって跳ね回り、冒険者たちを圧し潰そうとしていた。
魔法使いたちが、遠距離からの攻撃をガマガエルに仕掛ける。炎や雷、水といった魔法が飛び交うが、ガマガエルはさほどダメージを受けているようにはイチズには見えなかった。
「水の魔法を使うな。あのガマは水で回復する!!」
フブキの言葉に、ウミは舌打ちをした。
「足元に水がある状態だと体力が回復するって……。この場では、実質無敵ということか。今までのレイドバトルで一番性質が悪いぞ」
ウミは、どうやってモンスターに攻撃をするかを考えあぐねいていた。攻撃したところですぐに回復し、近づこうとしても巨大な卵に邪魔をされる。
「回復役もいないってことは、考える時間もあまりないってことか。今は、それぞれ身を守っているが……。遠距離攻撃が出来る魔法使いたちが、魔力切れ起こせば一気に崩れる」
冷静に分析するウミだったが、現実と分析結果は最悪だった。どのような結果になっても詰みである。
『絶体絶命で草』
『ご冥福を祈ります』
『今まで楽しい配信をありがとうー』
すでにコメント覧は御通夜状態である。
人の死と危機感が薄いところに、イチズはネット社会の闇を感じた。
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