第7話不思議な人
「メトロの三階は危ないですよ」
若い男の声が聞こえたと思えば、ぼきっという嫌な音がした。木の枝が折れた時の音に似ている。
イチズが音がした方向を見れば、トカゲ人間の身体が浮いている。
首には髪の毛が絡まりついていて、ドラマや映画で演出される首つり自殺を彷彿とさせる光景だ。次の瞬間、トカゲ人間の首が地面に落ちた。若い男は絞め殺したのではなく、首をねじ切ったのである。
その衝撃的な光景を目撃したイチズは、尻もちをついてしまった。
ダンジョンでの戦闘には慣れているつもりだったが、今回のモンスターの倒し方は生々しさがあったのだ。
どさり、とトカゲ人間の身体が地面に落とされた。残酷な方法でトカゲ人間を倒した若い男は、幼気な顔で悩んでいる。
「あの……。メトロの三階は危ないで、通じますよね?」
長髪の男はイチズに近付いてきて、その顔をじっと見つめていた。その瞳がガラス玉のよう純度で輝いていたので、イチズは思わず息を飲む。
同時に、綺麗でいなければ捨てられてしまう人形のようにも思える。そんな考えが頭に浮かんだことが、イチズは不思議だった。
長髪の男が、とても綺麗な顔をしていたことにイチズは遅れて気がついた。顔の線が丸みを帯びているせいで、女性的な印象を受ける美貌である。幼気な言動が、より女性的な印象を強めていた。
だからこそ、イチズは人形のような印象を彼から受けたのだろう。
『おーい、モザイクモードから通常モードに切り替わってるぞ。あっ、トカゲ人間のアイテムもドロップした』
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