人と人、相談
ねもまる
相談
相談とは3種類あると俺は考える。
まず1つ目に背中を押して欲しい相談。
2つ目に気持ちを吐き出したいだけの相談。
3つ目に自分だけで決める覚悟がないためにする相談。
俺は公園のベンチに座り相談を聞きながら思った。
真冬の夜8時はすごく寒い。ホットコーヒーの缶を奢ってもらったし耐えよう。
「それでさあ、自分の気持ちがわからなくて困ってるんよ」
「なるほどねえ」
「今まではめっちゃ好きって気持ちが強かったんだよ、でも今は一緒にいても楽しくないというか、前は可愛いなと思う行動も今じゃ鬱陶しく感じちゃったりさ」
「おん」
コーヒーを飲みながら相槌を打つ。
「火いるか?」
「んーやある」
お互いタバコに火をつけ話の続きが始まる。
「夜ベットで2人になっても欲が湧かなすぎてさ怖くて、昨日も全く欲がわかなくて申し訳なさすぎたよね」
「お前がか?」
「そう俺が」
「そいつは珍しいな」
俺は、こいつは一途な人だと思っていた。学生時代から付き合っている奴らで、誰しも結婚まで行くと思っていた。
この2人のカップルを推してる人もいたくらいだ。
「就職して価値観がずれたのかなあ」
「あーねー」
タバコの火を消して適当に答える。
さて、序盤にも言ったが相談には3つの種類がある。
俺はここまで聞いて3つ目だと判断した。
要は言い訳を探している。
本心はきっともう別れてもいいと思っているか、別れたいと思っている。でもそれを切り出す覚悟が無い。だからそれを出してあげればいい。
「じゃあ1つ問うわ。周りの目とか評価をなにも気にしないで別れるか別れたく無いかで言ったらどっちになる?」
「んー難しいよなそれ」
「ああ。難しいな。だからなにも考えないで1秒で答えろって言われたらどっちになる。はい、いーち」
「別れ………」
「いや、んー」
答えそうだったがまた考えてしまった。
「今考えてるけど咄嗟に出たのが別れという言葉ってことは?じゃない?」
「んーなのかなあ」
「要はお前さんは言い訳が欲しいんじゃねえか?このまま付き合い続けてもいつかは終わる予感がしている。だから、終わらせてもいい言い訳を」
「はっそれだわ」
彼は笑い気味に答えてコーヒーを飲み干して天を仰いだ。
「お前すごいな。俺も気づいてなかった事を言葉にして導いたな」
「話を聞いてあげて自分で整理する人間もいれば、こうしたいんだけどどう思う?っていう問でもなかったからな。言い訳探しなんじゃねえかって。そしてお前はそれを言って欲しい人間だろ?」
「確かにそうだな。ありがとう。別れるわ」
スッキリとした顔でニカっと笑った。
「だがそれでも最初は少なからず後悔は残るぞ。今まで当たり前に愛してくれていた人間がいなくなるんだ。気持ちが枯れていても少しの間は寂しさがきっと来るタイミングがある。だけどそこで間違えるなよ?」
「さすがだな。人に興味なさそうなのに相談してきた人間に最後まで付き合うのはお前らしいな」
興味なさそうと思われていたのか俺は。まあ確かにあながち間違いでは無いかもな。
お互い2本目のタバコに火をつけ、空を見た。
「お前によく相談が行く理由が少しわかったかもな」
「そうかい。でも、親しくならないとこないけどな」
「そらそうだ」
お互いもう喋ることもなくなり解散する。
後日、彼の彼女から別れてしまったと相談が来た。
俺が彼の相談に乗っていたことは知らないらしい。
きっと彼の彼女は話を聞いて欲しい相談だろう。
ある程度話して俺にも相談事ができたら頼って欲しいと言われて、話は終わった。
俺は相談が嫌いだ。俺が相談に乗る分にはいい。
だが俺は俺の相談を絶対にしない。
なぜなら俺は相談は自己満足だと思っているからだ。
3種類のうち、1つ目の場合、答えは出ているからする必要が俺には無い。
2つ目の場合、聞く側に配慮を行えていない行動だと思っている。
3つ目の場合、きっと俺が覚悟できない、もしくは言い訳探しなどの場合、相談に乗ってくれる側が答えにたどり着くことはあり得ないと考えている。
故に相談は嫌いだ。
誰にも頼らず俺は生きていく。
それを間違っていると問う人もいるだろう。
だがそれでもいい。間違いじゃない
だがきっとこの答えに辿り着く人間は数多の相談に乗ってきたか、相談をこれまでにたくさんしてきた人間だろう。
俺は前者だがきっとこれから誰かに弱さを見せて相談という物をする日は来ないだろう。
人と人、相談 ねもまる @nemomaru
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