私たちは君のものになりたい(玲・有紗視点)

 こうして有紗と並んでシュウと向き合うのは、久しくしていなかった気がするな。最近はお互いの時間がなかなか合うこともなかったし、特に美優が大胆に行動してからは猶更だ。


 シュウ。私たちの話はいたってシンプルだ。


 私と有紗、二人をシュウのものにしてほしい。


 本当は彼女にしてほしい、恋人にしてほしいと言いたいところだが……それは高望みが過ぎるというものだろう。


 こんなことを言っておいてなんだが、私はシュウと美優の仲を壊したいわけではない。二人の仲を引き裂いてバラバラにしたいわけではないということは、予め伝えておきたい。


 私も有紗も以前からシュウのことが好きだった。どれぐらい好きかというと、高島美優という誰もが羨む恋人を持つシュウに、それでもいいからシュウのものにしてほしいと頼み込むくらいには好きだ。


 いや、これだと伝わりづらいか……。


 そうだな。ではこう言い換えよう。


 。それくらいシュウのことが好きだ。有紗は……まあ、一緒だな。


 ふふ……ああいや、別にシュウを怖がらせようだなんて思ってはいない。ただ、それぐらい好きだということが伝わってくれればそれでいい。


 きっかけを……話すのは、恥ずかしいが……なんだ? 私だって恥ずかしがる時はある。シュウの前でなら……猶更だ。


 きっかけは中学生の時だ。シュウが私の家族の話を聞いてくれていたことがあっただろう? あの時の私の話は、とてもつまらなかったことだと思う。山も谷もなければ、無駄に気を遣うしで申し訳ないことをしたと思っている。


 そんな私の話を真剣になりすぎず、それでいておちゃらけたりすることもなく……シュウは、私に寄り添って聞いてくれたな。


 私はそれが嬉しかったんだ。兄以外に親しい人がほとんどいなかった私に寄り添って、気持ちを汲んでくれたことが本当に嬉しかったんだ。


 私の両親の話を聞いて、それから私の手を握って「成田はここにいるのに」って言ってくれた時、私の心は決まったのだ。


 シュウ。もう一度伝えよう。


 私はシュウが好きだ。私をシュウのものにしてほしい。


 そうでなければ、私がシュウの傍にいることを許してほしい。


 そのためなら、私は私のすべてをシュウに差し出そう。


 なあ、シュウ……私の気持ちを、受け取ってはもらえないだろうか?











 シュウ……あたしはね、小学生の頃からシュウが好き。


 シュウは全然気づいてなかったけど、ずっとずっとシュウのことが好きだったんだよ?


 だから、シュウがあたしに美優のことを相談してくれるようになったとき、あたし本当に嬉しかったんだ。


 美優に嫉妬なんてしなかった……なんて言ったらウソになるけど、美優を追い抜いてあたしがシュウの隣に立とう、なんて思わなかったのはホント。だって、どう見たって無理だったし。


 シュウと美優は、あたしから見たってお似合いのカップルで。あたしは二人を見るのが好きだったし、同時に心も痛かった。


 あたしもそこに混ぜて欲しい。あたしもシュウの傍に立ちたい。


 物理的な距離は近いときもあったけど、心の距離はずっとずっと遠かったよね。


 中学の時、他の男子に身長のことでからかわれて傷ついてたあたしに気付いてシュウが慰めてくれたことを、あたしは今でもまるで昨日のことのように思い出せるよ。


 シュウは人の機微? っていうのに敏感だったね。誰が喜んでるだとか、誰が楽しんでるだとか、誰が悲しんでるだとか、誰が怒ってるだとか。


 そのくせ人の好意には鈍感というか、無頓着だよね。


 あたしと玲がシュウのこと好きってことに気付いてないどころか、あんなにあからさまにシュウしか見てなかった美優のことすら気付いてなかったもんね?


 まあ、あたしとしてはそれに助けられたんだけど……なんでかって?


 だって、最初からシュウが美優しか見てなかったら、今こうして玲と一緒にあたしと玲の気持ちを伝える場すら作れなかったと思うからさ。


 ね、シュウ。


 あたしはね、シュウの二番目でいいの。二番目でいいから、シュウの傍にいさせて欲しいの。


 これが最大のわがまま。これ以上のわがままは言わない……かもしれない……ごめんここは自信ない……。


 けど! 今シュウを困らせてるのはわかってるけど! これ以上はシュウを困らせたりしないから!


 だから、あたしをシュウのものにしてください……お願いします!

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