第2話 報復

‥‥え


俺は想定外すぎる会話にショックのあまり、カバンを落とした。

ドンッ‥‥

「お前‥傘山くん、居たのか!?」

「やべ」

「いや、まぁ良いですよ、鍵忘れたので取りに来ただけです」

「‥‥まぁ、聞いてたらしいし言うわ、お前ほんとにきもいよ」

「え‥」

「はっきり言ったら、いつもペコペコしてて鬱陶しいし、媚でも売ってんのか、もしくは喧嘩売ってんのか分からんけど、仕事は出来ない、コミュニケーションも出来ない、体力も無い

お前何で生きてんの?」

「‥え‥‥その‥」

「そういうとこが嫌なんだよ、消えろよ」

「すい‥すいません‥‥」


俺はその場に耐えれなくなり、鍵を取って、店を出た。

‥‥夢かと疑うほどのあの人から想像もつかないほどの罵詈雑言を浴びせられた、出来れば夢であってほしい、がこれが現実だ。

あまりにショックがでかすぎる。

まぁだが、俺が駄目なのは事実だしな。

でももう、あの人には関わるのはやめといた方が良さそうだな。

涙混じりに俺は帰った。

「はぁ、なんか何もしたくないな」

俺は自分の部屋に戻って涙を流し、寝る。


ピピピピピ

いつも通り通知が鳴り響き起きる。

10時か、今日は進級に関するテストの返却日だったよな。あれは取りに行かないとな。

最も俺は勉強が出来る訳ではない、そもそもこの高校も定員割れしているから入学出来た訳で、おそらく普通だったら落ちていた。

まぁ、とりあえず向かうか。


学校に到着し、いつも通り巡回の先生がいる

が、今日は目が合ったが何も言われなかった。

やっと、何も言わなくなったか。


そう考え、廊下を歩いていると。

「あ、やべ」

体育館が騒がしい、おそらく今は体育の時間だ。

体育は嫌いだ、チーム競技が多く、俺は運動神経が悪く何をしても笑われるだけだ、個人競技でも同じだが。

こういう時は教室に居ておく。

教室は誰もいないのでゆっくりしていられる。

とりあえず好きな漫画でも読んでおくか。


キーンコーンカーンコ‥

チャイムが鳴った、あいつらが教室に戻ってくる。

「お、傘山や」「いつ来たんだ」

「体育しろよ」「今日バスケだったから、ぶつけてやろうと思ってたのに」

低俗な猿共が何か喚いているが、そんな事は気にしたら敗けだ。

そうしてるとチャイムが鳴り、次の授業が始まる

テスト返却だな。

周りの奴らは一喜一憂しながら騒いでいる。


「次は、傘浜」

「‥はい」

名前くらい覚えろよ、シワまみれの老いぼれが。

やはり、点数は壊滅的だ、数学は1点か、

もう0点の方がいっそ清々しいだろ。

でも、歴史は98点かそれは嬉しい。

歴史はまだ好きだからな。

周りの情弱猿共は軒並み歴史なんて分からず

低点数な中、少し優越感に浸る。


チャイムが鳴り、俺はトイレに向かう。

「休み時間は、騒がしいからなここならゆっくりできる。」

そして休み時間が終わる前に教室に戻ると。


…え

「なんであいつが98点も取ってんだよ」

「きっしょ」「でも他の教科は低いぜ」

「あっ、戻って来てた」

あいつらは、俺のテスト用紙を破っていた。

「おい、何してるんだよ」

俺はとりあえず、テスト用紙を取り返し、

席に着こうとすると、

「調子乗んなカスが」

さっきまでテスト用紙を持っていた奴が殴りかかってきた。

俺は咄嗟に、反撃体勢に出て、そいつの足を蹴った、するとそいつは体勢を崩して頭から床に打ち付ける。

いきなり暴力とか、もはやサル以外だろ。

すると担任がやって来た。

「おい、何してんだ傘山」

何故か俺だけが悪者にされている。


「おい、傘山なんで暴力を振るった!」

「だから、あいつが先に」

「黙れ、お前が悪いんだろ!」

人の話を聞けや、ビチクソが。

「もう、良いですよ帰ります」

「おい、なに勝手に」

俺は喚き散らす担任を無視して帰宅した。


「宗也、何もしてない子に暴力を振るったの?」

「お前もか、俺はやり返しただけ」

「黙って、暴力は駄目でしょ、全くこんなことなら、産まなきゃ良かった」

「もう、お前ら嫌い」

クソアマが、息子の言うことをなんでまったく信じないんだよ。

どいつもこいつもなんで俺を理解しないんだよ。

俺は自分の部屋に戻って、テレビをつけると。

『本日、山郡線の電車にて無差別切りつけ事件が起きて、容疑者は 俺を拒んだ社会が悪い と供述…』

‥なんかこの容疑者の言い分、ちょっと分かるな。

‥‥あいつらも俺の存在を拒んでいる。

誰も味方しない、失う物も無い。

そうだ、あいつらが悪いんだ、じゃあ‥

俺は、家の押し入れを漁り、色々と集める。

もう使われなくなった古びた包丁に、花火をする友達がいなくて余った花火爆竹、そして点火用ライター。

これがあれば‥‥‥

そういえば、来週校外学習だな。

でもその前に‥


「母さん」

「なに、やっと白状するの?」

「あぁ、だからこっち来て」

「やっと、まったく‥最初から」

「俺が、俺は」

「え」


俺は近づいて来た、母の腹を刺した。

生暖かい血が流れる。

当然、人を刺すのは始めてだ。

だが、俺は罪悪感よりも達成感に溢れた。

なぜ、今までこうしなかったんだろうか。

「宗‥也‥‥」

なんだ、まだ生きていたのか俺は、もう一度刺して息の根を止めた。

死体は、押し入れの中に詰め込んだ。

後は、店長と坂牧とクラスの奴らだな。

とりあえずバイト先に行くか。


「お久しぶりです」

「なんだお前か、何の用だよ」

「あー、お前か」

「店長、少しお話が有りますので、隣の部屋に来てくれますか」

「なんだよ、仕方ねぇな」

俺は店長を隣の部屋に誘導した。

「何の用だよ‥‥おま‥!?」

話そうとする店長の喉を切った。

「カ‥カ‥‥」

抵抗するか、でも虫の息だから平気だ。

抵抗する店長をそのまま刺し殺した。


「坂牧先輩も少しお話が有りますのでこちらに」

「は?‥なんだ‥‥」

部屋に、坂牧も誘導して、

「何のよ‥‥!」

俺は坂牧の胸部を刺し、抵抗する坂牧を何度も刺した。

二人ともみっともない姿になって、死んでいる。

心なしか少し口元が緩んだ。


すると、休憩室から。

「店長ー?」

どうやら俺のいない間に入った新人が来たらしい。

「君、新人?」

「あ、はい新人の元山です、坂牧さんと店長はどこに」

「あぁ、少し遠くに行ったらしい」

「そうなんですか、もうバイト始まるのに‥ありがとうございます」

「あ‥あと、これさっき店長と坂牧先輩から」

「肉?」

「あぁ、凄いレアな肉らしい、限定料理にだって」

「分かりました」

「俺はちょっと、忘れ物を取りに来ただけだから、またね」

「はい、お疲れ様です」


店が焼肉屋で良かった。

バラバラにして、豚肉や牛肉の所に置いておけばほぼ違和感が無い。


さぁ、来週の校外学習の準備でもしよう。

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