決着

 互いに見合い合うジーラスとスティールコング。両者ともに相手の隙を伺いながらも、自分が有利になるよう位置取りをする。

 数秒の沈黙の後、先に動いたのはジーラスであった。


「喰らえ!」


 ゼファーの叫びと共に主の意思に従いジーラスは、腕に装備されたレールキャノンを連射する。しかし放たれたレールキャノンの砲弾を、スティールコングは四肢を上手く使うことで回避していく。

 

「まだまだぁ!」


『調子に乗るなよ!』


 ゼファーの叫びが気に入らなかったのかプロフェッサー・ネクロネットも苛ついた様子で叫ぶ。そんな二人に呼応するように、ジーラスとスティールコングは走り出し、勢いよく相手に向かってタックルを仕掛けた。

 ズンと凄まじ衝撃音が周囲に響き渡る。ジーラストとスティールコング、2機のメタルビーストはどちらも重量級なため質量に差はない。故に勝敗を左右するのは操縦手の腕次第である。


「せいやあああぁぁぁ!」


 ジーラスは半歩後ろに下がりスティールコングの重心を崩すと、そのまま肉食恐竜型の骨格でありながら器用に相手を地面へ叩きつけ、そのまま追撃で背中のロングレンジライフルを連射する。

 だがスティールコングは四肢で受け身を取ると、スラスターを噴かせ縦横無尽にロングレンジライフルの銃弾を回避していき、さらに回避しながらスティールコングは装備されたミサイルを、ジーラスに向けて発射した。


「舐めるな!」


 幾重ものミサイルがまるで雨の様にジーラスに向かって襲いかかる。しかし臆することなくジーラスは前進していき、ミサイルの爆風の中を進んでいく。


「しゃぁぁぁ!」


 スティールコングとの距離を詰めたジーラス。そのままスティールコングの腕を噛みつくと、力任せに振り回す。時には地面に、時には建物へ、スティールコングは叩きつけられる。


『わ、私を舐めるなあああぁぁぁ』


 プロフェッサー・ネクロネットの叫びとともにスティールコングは逃れようと悪あがきをする。しかし噛みついているジーラスは、相手の動きに合わせて振り回し重心を崩していく。

 重心が崩されたことでスティールコングは噛みつきから逃れることができない。だが一瞬の隙を見つけたのかタイミングを合わせて腕を振り上げると、ジーラスに強烈なパンチを叩き込む。


「ぐぅ!」


 コクピットを襲った衝撃にゼファーは思わず、苦悶の声を漏らしてしまう。しかしすぐに眼の前のスティールコングを睨みつけると、一瞬で狙いをつけジーラスのロングレンジライフルとレールキャノンを炸裂させる。

 ロングレンジライフルの銃弾が命中しグラリと体勢を崩していくスティールコング。その隙をジーラスが逃すはずもなく、再び肉食恐竜を模した頭部で噛みつき攻撃をおこなう。

 スティールコングへ攻撃した部位はプロフェッサー・ネクロネットがいる部分――コクピット部だ。ジーラスは器用にスティールコングの装甲のみを引っ剥がすと、中にいるプロフェッサー・ネクロネットを睨みつける。


「ひいいい!」


 スティールコングは限界までダメージを受けたのか、プロフェッサー・ネクロネットがいくら動かそうとしてもピクリとも動かない。

 ジーラスのコクピットから出てきたゼファーは、ゆっくりと腰に携帯しているピストルを抜いて、警戒しながらプロフェッサー・ネクロネットと相対する。


「よお……クソ野郎。ツラを合わせるのは1年ぶりか?」


「ひひひ久しぶりだなななぁ」


 犬歯を見せつけるように笑うゼファー。対照的にプロフェッサー・ネクロネットは恐怖で表情が強ばっており、その視線の先にはゼファーの持つピストルであった。

 必死そうなプロフェッサー・ネクロネットの視線の先になにがあるのか気づいたゼファーは、スッと瞳を細めて睨みつけ無言でピストルを構えると、素早く引き金に指をかける。


「ま、待ってく……」


 引き金にかけられた指を見たプロフェッサー・ネクロネットは命乞いをしようとする。しかしそれを言い終えるよりも早く、ゼファーはピストルの引き金を引いた。乾いた銃声が周囲に響き渡り、プロフェッサー・ネクロネットの頭部を貫通する。

 続けてゼファーはプロフェッサー・ネクロネットの心臓にもう1発銃弾を叩き込み、ネクロネットが物言わぬ死体になったことを確認すると、手に持った刀で首を横一文字に切断する。理由はネクロネットが死んだことを証明するためである。

 全てが終わったことを確認したゼファーは、安心したのか小さく一息つくと、ゆっくりとジーラスのコクピットから出ていこうとする。そんなゼファーへ1つの銃口が突きつけられた。


「あー……起きたか?」


「ええ、無事に目覚めました。悪いですが、武器を捨ててください」


 悪い想像があたったと言わんばかりの表情でゼファーは、両手をゆっくりと挙げて動きを止める。銃口を突きつけてきたのは先程までジーラスに乗っていたSAERDの隊員であった。

 SAERDの隊員はピストルの銃弾が必中する距離まで、ゆっくりと近づいてくる。そして小さくそしてゼファーに聞こえる程度の大きさで、武装解除を促してくる。

 SAERD隊員の勧告に従ってゼファーは、無言のまま武器を地面に置いていく。手に持っていたピストルを、腰に携帯していた刀を地面に置くと再度両手を挙げ直す。


「ゆっくりとこっちを向くんだ」


 SAERD隊員の言葉を聞いたゼファーは、一瞬ニヤリとあくどい表情をすると、わざとらしくゆっくりと後ろを振り向いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る