ガレージにて

 プロフェッサー・ネクロネットの戦力をゼファー、SEARD、レヴィたちが同時攻撃するまで、残り1日となった日。

 レンタルしているガレージでゼファーは、アーミーウルフの整備をしていた。その後ろには椅子に背中を預け、リラックスしているマリアの姿がある。


「ねぇ、なにずっと機械いじりをしてるの?」


「あぁ? 明日のネクロネット襲撃の最後の点検だよ。恐らくこいつアーミーウルフが俺の切り札になるんだ、最高の出来にしてやりたいだろ」


 優しげに撫でてくるゼファーの言葉を肯定するように、アーミーウルフは小さな雄叫びを上げ、ゼファーの身体に己の鋼の肉体を擦り付ける。

 硬い鋼鉄の身体を擦り付けられたゼファーは、小さく「痛いって」と呟きながらも嬉しそうにアーミーウルフの擦り付けを受け入れる。


「メタルビーストに愛着を持つのは良いけど、それで最終的に勝てるの?」


「勿論勝つさ。だからこうやってメンテナンスをしてるんだ。いざって時にジャムっても困るだろ?」


 ゼファーの例え話を聞きながらもマリアは、身体を擦り付けるアーミーウルフに敵対心の籠った視線を向け続けている。アーミーウルフも分かっているのか、わざとらしく「ワフ」と小さく鳴いた。


「やっぱりこいつスクラップにしない? せめてAIはリセットさせてよゼファー」


 メタルビーストは各々独自のAIを搭載されており、モデルとなった生き物と似た性質をプログラムされている。

 何よりメタルビーストはAIに使用者のログをアップロードすることで、経験を迅速に学ぶことで初搭乗のメタルビーストでも、愛用のメタルビーストのように戦うことができる。


「ダメです。そんなことしたら俺の反応について来れないだろ」


 SEARDでは指折りの実力者であったゼファーのログは膨大で、新品のメタルビーストはゼファーの反応について行くことができないのだ。


「分かったわ。じゃあキスして」


「は? 今なんて言った?」


「キースーしーてー!」


 駄々っ子のように唇を尖らせたマリアの姿に、思わずため息をしてしまうゼファー。


 ――この調子だと、キスをしないと機嫌を直してくれそうにないな。


 そう考えたゼファーは油塗れの指を綺麗に拭うと、目を閉じているキスを待つマリアに近づいていく。そしてわざとらしくマリアの髪を撫で、ゆっくりと顔を近づけていった。


「ねぇ、まだ? キスするの? もしかしてからかってる!?」


 マリアは頭皮と髪に触られる感触を感じながらも、頬と耳元までを赤く染め、期待してるように顔を小刻みに動かしている。

 髪を優しく触るだけでマリアを焦らしていくゼファー。そのまま続けて数十秒後、ようやくマリアの唇に触れるか触れないかの軽いキスをする。

 唇へ感じた小さな感触に、即座に瞳をクワッと開くマリア。そしてそのまま軽いキスをしたゼファーに食って掛かる。


「ゼファーのあんぽんたん! 甲斐性なし! えっと……大好きー!」


 罵倒と罵倒らしきものを叫ぶマリア。そんなマリアを見てゼファーは可愛いものを見たように、ニヤニヤと笑みを止めることができなかった。


「悪かったって、だからポカポカ殴らないでくれよ」


「じゃあちゃんとキスしてくれる?」


「ああ、勿論だ」


 そう言ってゼファーは目をつぶると、素早くマリアの唇にキスをする。

 眼の前にゼファーの顔が映ったマリアは、羞恥心と気恥ずかしさから離れようとする。しかしゼファーに腕を掴まれ、それは阻止された。

 クチュリ。と淫靡な音が静寂に包まれたガレージへ響き渡る。

 舌でマリアの唇を無理やりこじ開けたゼファーは、そのままマリアの口内に舌を侵入させる。少女の口の中を蹂躙してくゼファーの舌は、歯をザラザラと舌で愛撫していく。

 マリアは身体をピクンと跳ねさせると、驚きと若干の快楽で瞳をトロンとさせる。

 キスは徐々に激しいものとなり、官能的で淫らな音がガレージを支配していった。

 マリアは襲ってきた快楽に脱力してしまい、ふらりと倒れかけてしまう。崩れ落ちたマリアの身体を、ゼファーは優しく抱きとめる。

 

「マリア大丈夫か?」


「それあんたが言う? すごく気持ち良かった……」


「ならもう少し続きをしても問題ないな」


 そう言ったゼファーはマリアの服を優しくはだけさせると、そのまま冷たい手をマリアの服の中へと忍び込ませた。


「やぁ❤」


 マリアの小さく艷やかな声がゼファーの耳に届く。だがゼファーは手を動かすことを止めず、そのまま愛撫を続けていく。

 無骨な手が柔らか身体を軽く撫でるだけで、マリアの身体に快楽の波が襲いかかる。軽く半円を描くだけで津波のような快楽の波が、力いっぱい愛されれば強風のごとき絶頂がマリアに襲う。

 そうしてマリアの身体を嬲り続けていたゼファーが、マリアの下半身に手を這わせた瞬間、マリアはゼファーの手を止めるように掴んだ。


「どうしたマリア」


「気持ち良かったけど……これ以上シタら一線を超えそうで嫌なの。だからこの前の約束通り、この先はネクロネットの件を終えた後に❤」


「じゃあどうする? このままシャワーでも浴びていくか?」


「その前にゼファーの優しいキスが欲しい」


 自分のはだけた服を直したマリアは、瞳を閉じ唇を突き出してゼファーからのキスを待つ。それに応じるようにゼファーは素直に優しいキスをマリアとした。


「……ん、ありがとうゼファー。これで元気100倍、ネクロネットへのハッキングなんて簡単よ」


「そう言って貰えるとありがたいね……ん?」


 やる気に満ち溢れたマリアは己の携帯端末を取り出すと、集中してハッキングを始めた。この状態の彼女はハッキングが終わるまで、ゼファーのことも一瞥しないだろう。

 そんなマリアの姿を尻目にゼファーは服の袖を引っ張ってきた相手を見た。相手はメンテナンスを途中で止められ、寂しそうにしているアーミーウルフであった。


「悪い悪い、さあメンテナンスを続けようか」


 そう言ってゼファーはアーミーウルフのメンテナンスを再開するために、工具を手に取り腕まくりをして、アーミーウルフに向かい合うのだった。

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