私の武器って、このリモコン?
急襲と停止
「な、なにっ?」
頭をかかえてその場にしゃがむ私とはうって変わって、アオバは私をかばうように抱きよせる。ち、近い……!
「メイ。ボクのうしろにいて」
アオバが蹴破るようにとびらを開ける。廊下はもうもうと立ちこめるケムリのせいで、視界が悪い。
ケムリをかきわけて、お城勤めの人たちは悲鳴をあげながら逃げまどう。
「なにがあったんだっ?」
「アオバ様、爆弾です!」
逃げるメイドさんのひとりが、背後を指さして言った。
「お城に爆弾がしかけられていました! カベも天井もくずれて、向こうでアカネ様が避難の誘導をされています……!」
その言葉にハッとしたアオバは、アカネ姫のいる方へ足を向ける。
「メイは、みんなといっしょに逃げて!」
「で、でも……」
「はやくっ!」
するどい声に、私も走りだそうとした瞬間、ケムリの中に水色のドレスが見えた。
「アカネ姉さん!」
「アオバ、メイ様! ご無事ですか?」
せきこんで、ドレスもほこりだらけにしたアカネ姫が、ホッとした表情を浮かべた。
「城内の避難は完了しました! 爆発に巻きこまれた人はいません。しかし、崩落する可能性はあるので、私たちも……」
その瞬間、アカネ姫の真上の天井が深くヒビ割れる。
ガラ、と、重い音とともに天井が崩れおちてくる!
「アカネ姉さんっ!」
アオバが弾けるように駆けだす。でも、間にあわない。
「きゃぁあああっ!」
アカネ姫の悲鳴に、最悪の光景を想像してしまい……私はぎゅっと目をつむる!
「……ッタク。初回サービスだゼ」
目を、開ける。
「あ、れ……?」
見えた世界は……停止していた。ケムリは雲のように固まって、落ちてきた天井だって空中で止まったまま。
手をのばすアオバも、恐怖に顔をゆがめるアカネ姫も、まるで人形みたいに動かない。
「なにが、どうなっているの?」
当然の疑問の答えは、私のうしろから。
「察しが悪いやつだナ、メイ! これが、リモコンの力だッテノ!」
「……リドリィ?」
ふりかえると、リドリィが胸を張ってドヤ顔をしていた。私のポケットから落っこちたリモコンの上に、ちょこんと立っている。
「最初だけはオレ様がつかってやったけど、次からはメイ、おまえがやレヨ?」
「や、やるって、なにを?」
「モチロン……このリモコンを使って、アニメの世界で無双するンダ!」
そう言って、リドリィがつらつらと説明したのは、こんな具合。
【
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「いまのは【
「じゃあ、いまのうちにアカネ姫を助けないと!」
私はすぐにアカネ姫のもとに行く。天井がアカネ姫に落ちてくるまで、あと数十センチしかない。危機一髪だったんだ!
「よいしょ、よいしょ……!」
アカネ姫を引っぱりだして、安全な場所に移動させる。これで、よし!
「もどすには、どうしたらいいの?」
「モウ一回、同じボタンを押セ。それで、世界はマタ動きだす!」
リドリィの言葉に、おそるおそるボタンを……ポチ!
ガシャァア! ガララ……
次の瞬間、天井が目の前で落ちてきた。でも、その下じきになった人はだれもいない。
「あれ? わたくし、助かったのですか……?」
アカネ姫はぱちぱちっとまばたきをして、自分の体がなんともないことに安堵していた。
「よかった、アカネ姉さん……!」
アオバがアカネ姫の肩を抱く姿を見ながら、私は背中に隠したリモコンを強くにぎる。
これ……本当に、すごいかも。
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