さらばキューターリーフ! 生まれかわる王国

アオバも青葉

 リーフェスタ城最上階、王の間。玉座のウラにかくされていた通路から入ることができる……展望フロア。


「う、わぁ……!」


 私は青葉とならんで、リーフェスタ王国を見わたしていた。海も、森も、空も、いきいきとして美しい。


「ここは、ぼくのお気に入りの場所。芽衣姉ちゃんも気に入った?」


「うん。すっごくきれい」


 戦争が終わって、もうすぐ一週間。青葉たちは、ねる間も惜しんで国のために働いていた。


 こわれた建物を修理したり、スパイの処分を決めたり、やるべきことは山積みだった。


 ようやくひと段落ついて、私は青葉にお気に入りの場所に連れてきてもらっていた。


「芽衣姉ちゃんは、ぼくがキューターリーフになった理由、知っている?」


「アカネから聞いたよ。すごいね、みんなのために」


「それだけじゃないんだ。ぼくは、芽衣姉ちゃんのいる世界に帰るため、キューターリーフになった」


「え?」


 キューターリーフになることが、現実世界に帰ることにつながるの?


「ぼくはもともと、このアニメの世界には存在しない人間だ。実際、6年前に観ていたときは、キューターリーフになるのはアカネ姉さんだったはずだよ」


「それって……青葉が、アニメの話を変えたってこと?」


 そうなるかなぁ、なんて、青葉はあっけらかんとしている。


「アカネ姉さんやシロウ兄さんのきょうだいとして生きていくのは……大変なこともあったけど、楽しかった。でも、ぼくも芽衣姉ちゃんと同じだよ」


 どういうこと? 首をかしげると、青葉は景色から私に目を向ける。


「ぼくには、本当の家族がいる。いつもいっしょだったお姉ちゃんが、ぼくをむかえにきてくれるって、信じていたんだ」


「覚えていて、くれたんだ」


「……まぁ、ぼくも『メイ』っていう名前と、キューターにあこがれていたっていうことしか覚えていなかったけどね」


 照れくさそうな青葉と、いっしょに笑う。


 私はアニメの中に弟がいることを、信じつづけた。青葉は別の世界から私がむかえに来ることを、信じつづけた。


 いま私たちがいっしょにいるのは……ふたりで起こした奇跡なんだ。


「芽衣姉ちゃんに見つけてもらうには、ぼくがキューターリーフにならなきゃいけなかったんだ」


「そのために髪の毛を伸ばして、お姫様として生きてきたの? すごい発想するなぁ」


「スカートって、結構動きやすいんだよね。昔、芽衣姉ちゃんが着させてくれたおかげで慣れていたよ」


「そっか。それも、私のおかげだ!」


「……まぁ、アニメの世界に連れてこられた原因は、芽衣姉ちゃんに怒られたことだったけどねぇ」


「う! それはほんと、ごめんなさい……」


「あはは! コーラとポップコーンをぼくにもくれたら、許してあげようかなぁ」


 となりに立って言いあって、どちらからともなく笑いあう。私はずっと、こうしたかった。


 深呼吸をひとつしてから、日がしずみはじめた王国を見おろす。


「さらに明るくなったなぁ、リーフェスタ王国」


「中心にいるのは、アカネ姉さんだよ。……もう姫じゃなくって、国王だけどね」


「え? でも、国の決まりで国王になれるのは男の人だけって……」


「この非常時に、そんなことは言っていられません」

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