遊びぬけ! コカゲ帝国のきょうだい

 私はリンゴのカゴを持ち、アオバがララちゃんをおぶっている。


 アオバの背中にいるララちゃんの案内でやってきたのは……ララちゃんのお家。


「これは……なかなか、芸術的というか、歴史があるというか」


「ボロっちいだけだロ!」


 肩の上のリドリィがそんなことを言うから、くちばしをつまんでだまらせる。


 ララちゃんはアオバの背中から降りて、リンゴのカゴを私から受けとる。そして、無理やり笑顔を作って、玄関のドアを開ける。


「ただいま!」


 すると、弾けるポップコーンのように子どもたちが飛びだしてきた。


「おかえり!」

「ねぇね、おそいよ! お腹へったぁ!」

「遊んで、遊んで!」


 我先にとララちゃんの手を取るのは、男の子がふたりと、女の子がひとり。ひと回り体の大きな男の子の背中では、赤ちゃんがスヤスヤ眠っている。


「みんな、ララのきょうだい。次女のリリ、長男のルル、次男のレレ、三男のロロ、だよ」


 紹介されたきょうだいたちは、ララちゃんの背中に隠れて私たちをいぶかしげに見あげている。


「……だぁれ?」


「町で、ねぇねを助けてくれた人たちだよ。ほら、ごあいさつ」


 ララちゃんに言われて、きょうだいたちは一列に並んで、元気にあいさつ。「こーんにーちはー!」という声に、私たちもペコっと礼をする。


 それからすぐ、みんなはララちゃんの周りを取りかこむ。私なんかより、気になることがあるみたいだ。


「ご飯は? もう、お腹ペコペコー!」


「待たせちゃって、ごめんね。きちんと分けて食べるんだよ」


 ララちゃんは「じゃーん!」と、カゴをきょうだいの前に差しだした。


「すげぇ! リンゴだ、リンゴ!」

「めっちゃぜいたく! 四個だから、ひとりにひとつかな?」

「赤ちゃんも、すりおろしたリンゴなら食べられるよね!」


「あれ、ねぇねの分は?」


 はしゃぐきょうだいを前にして、ララちゃんは笑顔をくずさない。


「……えっと、ねぇねは、帰り道で一個食べちゃった。だからこれは、みんなの分だよ」


「やったー!」


 ぴょんぴょん飛びはねるきょうだいたちを、ララちゃんはうれしそうに見ている。……お腹をおさえながら。


 私とアオバは、目を合わせる。


「ララちゃんだってお腹が空いているはずなのに、あんなウソをついて……」


「強いお姉ちゃんだね」


 ララちゃんはきょうだいたちの前で、りっぱなお姉ちゃんを演じているんだ。


「きちんと手を洗ってから、食べるんだよ。ねぇねは、お庭の畑に行っているからね」


「ボクも手伝うよ」


 と、アオバがララちゃんについていく。


「私も……」


 続こうとすると、手首をきゅっとつかまれる。私を引きとめたのは、目を輝かせたきょうだいたち。


「おっきなねぇね! 遊んで!」


「へ?」


「追いかけっこ! お絵かき! キューターごっこ!」

「遊ぼうよ、おっきなねぇね! 鳥さんもいっしょに!」

「あーそーんーで!」


 みんながグイグイと私を引っぱって、リドリィも巻きこまれる。


「コラ! さわるなガキンチョ!」


「しゃべったぁ!」


 リドリィが怒っても、小さな子たちはきゃっきゃと笑うだけ。ちょっといい気味。


 なんて思っているうちに、私は家の中に連れこまれた。


 でも、こうやってきょうだいの面倒をみることも、ララちゃんのお手伝いになるのかも。


「よ、よし! とことん遊ぼうじゃない!」

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