第43話 過去編なのです!

9月17日―P.M.2:00―フランス・リヨン・アデールファミリー本部―


『お疲れ様です!ボス!』


「ああ、ご苦労」


昨日一日リヨンの近くの街、カーパーの闇医で体をしっかり癒やしてから、ミラーシャの呼んだ黒のセダンでアデール・ファミリーの本部に帰ってきたところである。


カーパーにある石造りの三階建ての建物がアデール・ファミリーの本部である。


「姐さん。着いてきてほしいっす」


「あいよー」


重役出勤の如く大勢の部下に頭を下げられ車から降りた一行は建物に入り、談話室を目指す。


「ここっす」


「おお、随分いい部屋に住んでるのです」


部屋の中はふかふかそうな豪華なソファとガラステーブル、数々の調度品。

どれも高そうな品物だが、下品さは感じさせない。

まさに品のある豪華さといったところである。


ノアとティリアが並んでソファに腰掛けると、ミラーシャとクーナが向かいに腰掛ける。


「紅茶です」


「ありがとう。下がっていてくれ」


「わかりました」


ミラーシャの部下が入れてくれた紅茶をとりあえずみんな一口飲む。


「ダージリン?」


「そうっす」


「あ、姐さん……ミルクは?」


「ん?甘いねクーナ。一杯目はストレートだよ」


「……そっかー」


高い茶葉を味わったところで、本題に入る。


「さて、改めて自己紹介。私はISISジュエルセクション、スタッフのティリア・ハルヴァールよ」


「同じく、スタッフのノア・シャロームなのです」


「アデール・ファミリー、ボスのミラーシャ・アデールっす」


「アンダーボスのクーナ・メルター」


形式的な自己紹介だけ済ませる。

といってもノアからしたら全員知り合いだが。


「じゃあ、まぁ色々訊くわね」


「ふむ……ちょっと待って欲しいっす。ウチの相談役コンシリエーレを呼ぶっす」


というとどこかに電話をしだす。

電話が切れ、数分もすれば扉が叩かれた。


「イリスです」


「入ってー」


ガチャリと扉が開くとワインレッドのスーツの女性が入ってきた。

その女性はミラーシャの後ろへと控える。


「どうも、アデール・ファミリー、コンシリエーレのイリス・メルターです」


「おお、クーナの姉ちゃんなのです」


「そうなの?」


「なのです。若い頃はよくお世話になったものです」


「フフ……懐かしいですね」


「おう、色気パナイ」


そう、何を隠そう彼女はクーナの実姉である。

そして体はボン・キュッ・ボンのグラマラスな体つきである。


「さて、さっそく訊くけど、報告によると二人はノアに電話で呼び出されて制圧の手伝いをしにきたの?」


「そうっすよ。姐さんの頼みとあればこのミラーシャ、火の中水の中草の中森の中土の中雲の中あの子のスカートの中っすよ」


えっへんと胸を張ってそう応える。


「言っちゃ悪いけど、それは感情から?それともモノが目当てかしら?」


「組織のトップとしては私だって利益は欲しいっす。でも、それ以上に姐さんには命救われてるっす。そんな人の頼みに利益を求めるのは二の次っす」


ここでノアとミラーシャの顔がそろって紅く染まる。

かわいい。


「なるほどねぇ……まぁ、私の見る限り嘘はないでしょう。で、次だけど、あなた達の出会いは?」


「出会いっすか〜……」


「出会いなのです〜……」


「姐さんが話します?」


「どっちでもいいのです。クーナは?」


「姐さんで」


「あいよー」



◇◆◇◆◇



―ノア side―


「ココアシガレットおいちい」


まだ私がリセの二年目16歳の話。

この頃の私は色々あって喧嘩に明け暮れていた。

アンジェがくれたジャパンのゲームのコスプレっぽい服を来て、夜の街を徘徊していた。

なんでも第六…駆逐なんちゃらというところの制服らしい。知らんけど。

まぁ、着心地は二重丸だった。


で、今日もなんかないかとココアシガレットを加えて夜の街を徘徊していると、なんか打撃音が聞こえた。


野次馬根性丸出しでてくてくてくーと歩いてったら、路地裏の方で喧嘩が起きていた。

喧嘩は女性二人に男共数十人……ざっと50人程度が取り囲んでいた。

その脇で男が十名ほど倒れていた。


「おいおいおい!あんたらなんなんっす!カマッセーズの奴らじゃないでしょ!」


「当たり前だろ!俺等をこんな雑魚と一緒にすんじゃねぇ!俺等はブラッククローだ!」


「………やばい。相手はここらへんのトップだ。二人で何とかなる相手じゃない」


「だね……どする?逃げたら逃げたで舐められるよ」


「……やるしかない」


なんか女性二人が話し合っていたと思ったら覚悟決めたような目つきになった。

それを見たと途端男共が襲いかかる。


一人は両手に構えたエアガン?を撃ち、もう片方は格闘術で攻める。

でも、多勢に無勢。

押され始めたらすぐ、勢いに飲まれてリンチになっちゃった。


ガタイのいい男が何十名で二人をいじめる。

うん、見てて気分のいいもんじゃないねぇ。


うーん……助っ人として行こかねー……

まぁ、いいや。行くか。


「なのですー!」


男共に一人にドロップキックをお見舞いしてやる。


「ぐへぇ!」


「な、なんだ」


蹴ったらクルッと、体制を整え着地。

そしてポケットから紙を取り出して、テープを回す。


「ちょいまち………えっと、なになに?不死鳥の名は伊達じゃない………ハラショー…よしやろう」


とりあえず言い終えると、私は男の一人に飛びかかってその男の腕をへし折って、顎に蹴りを入れて離脱。

人間顎をやられると誰でも意識をやられる。


「ハラショー」


続けざまに気の抜ける掛け声とともに襲いかかる。

その度に体の何処かを壊す。

関節、骨、肉、何かを壊すのが私のやり方だった。


そんなふうに捌き続ける数分。

なんかボスらしい男が出てきた。


「おい!お前、名は?」


「暁◯駆逐艦二◯艦響……ハラショー」


「ふざけてんのか?」


「ハラショー…」


「おい!」


「ハラショー」


「ふざけてんのかってきいてんだ「ハラショー」」


「死ねぇ!」


なんか紙にはハラショーって言っとけばいいと書いてあったからハラショーといっておく。

おっと、襲いかかってきたど、鈍重だね。

沈めることは容易い。


「ハラショー」


まず、グーを避けると、近くに転がっていた鍋をつかんで鍋で男を殴る。

男が怯むと、鍋を相手の頭に被せる。コレに意味はない。

次に足を首にからみつけてから男をこかす。

そしてマウントを取らずに一発金的を潰す。


はいS勝利。

ということで鍋を被る。


「ハラショー」


コロンビア。

そのまま帰ろうとしたら呼び止められた。


「あ、あの!」


「ん?」


「すごいっす!姐さん!ブラッククローを潰すなんて!」


「……すごい!」


「姐さん?」


「あの!姐さん私らいまチームとか無いんすけど、私等を舎弟にして欲しいっす!」


「ええーめんどくさい!やだ!」


「なんでもするっすから!」


「なんでも?」


「なんでもっす!」


「ココアシガレットくれる?」


「上げるっす!」


「よし。舎弟にするのです!」


ココアシガレットくれる人はいい人。

くれない人は悪い人。

聖書にもそう書いてある。


「…私も上げるから舎弟にして欲しい」


「わかったのです」


これが私達の出会いであった。

ハラショー


あ、レコーダーはアンジェに渡した。

なんでも欲しかったらしい。

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ロリ諜報員は高いところに手が届かなくても諦めない! よんごー @Universal_Maschinen_Pistole

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