第42話 ティリアさんなのです!
9月16日―A.M.0:59―フランス・リヨン・ヴァーグナーファミリー本拠地―
「ふぅ……痛かったのです」
「私もっすよー!」
「ふぅ……ちかれた」
ノアも、ミラーシャも、クーナもみんな自身の殺ることを済ませた。
これで残るは少女と、神経質そうなひょろりとした男の二人。
少女は真っ青を越えて真っ白な顔をしているが、男の方は歯ぎしりしている。
「さて、あんたらを守る兵はみんな死んだのです。次は二人の番なのです」
「ハワワワワワワワ………」
「おいおいおい、ほんとにこんな少女が組背負ってるんすか?」
「……おかしい」
「たしかになのです」
というとノアはエメオリジナルを取り出し、男の銃口を向ける。
「おい、あんた確かここの
「そうですよ。ヴァーグナー・ファミリーのボスのクリスタ様ですよ」
男はさも当たり前かの様に答える。
「ふーん………」
ノアが懐疑的な視線を向けていると、電話が入った。
「ん?ティリアさんなのです。ちょっと出てくるからミラーシャ、クーナ、見ていてほしいのです」
「わっかりましたー!」
「ういっす」
ということでノアは見張りを二人に任せ、血と死体に溢れた廊下に出て電話を受ける。
「もしもしなのです」
『ノアちゃん!生きてた!』
「元気なのです。で、どしたんです?」
『私は今からヴァーグナー・ファミリー制圧しにいくんだけど、そっちは今どこ?』
「ああ、それならもう終わったのです。今となってはボスとアンダーボス残して、本部の人間はお空へ旅立ったのです」
『え!?本部壊滅!?』
「なのです。今ボスとアンダーボスは銃突きつけて尋問の最中なのです」
『あ、そうそう!今私リヨンの空にもう少し入るところにいるんだけど、本部から入ってきた情報を伝えるね。今、ヴァーグナー・ファミリーはアンダーボスの傀儡状態らしいよ。アンダーボスのゴートンという男が実質支配しているらしいんだよ。だから、あの少女はお飾りで、前のボスの子というだけで、名目上のボスの席に座っているらしいんだ。だから、聞きたいことはたっぷりあるし、二人は殺さず連れてくということらしいよ。本部は』
「わかったのです。じゃ、ティリアさんが来るまではこっちで聞けるだけ聞いてみるのです」
『うん、わかった。じゃね』
「なのです」
通話が切れる。
スマホをポケットに仕舞うと部屋へと戻った。
「終わったっすか?」
「うん、面白いことがわかったのです」
「へー……」
ノアがもう一度アンダーボス改めゴードンに銃を向ける。
「さて、色々教えてもらうのです」
「情報なら私よりボスに聞いたほうがいいですよ」
「ほー……見上げた忠誠心(笑)なのです」
ノアが銃をしまう。
そして、ナイフを抜いて、容赦無く靴を脱がせ、足の親指の爪を切り取る。
ゴードンは痛みに耐えている素振りを見せるが、体の震えは止まっていない。
「さて、と。吐く気になったのです?」
「な、なんども、いっ、言っているでしょう。わ、私よりもそちらアガァァァァァ!」
「おっと手がツルッといったのです」
といってコミカルな笑みを浮かべるノア。
ここでしっかり目まで笑っているのだからすごい。
だが、そんな笑顔と裏腹に殺っていることはなかなかエゲツナイことである。
ナイフで今度は逆の足の親指の爪を剥いだのである。
「吐きたくなければそれでいいのです。その分体は削れると思うのですが………」
笑顔を絶やさず話す時はゆっくりと、尋問の基本である。
ここでゴードンは無視を決め込んだようでうんともすんとも言わなくなった。
「さて、ここでちょっとした雑学を教えるのです。人間には二百本ぐらい骨があるのです。だから、骨が一本折れたところで二百分の一…0.5パーセントしか失ってないのです。骨全体を見たら」
ここで更に笑みを深める。
「で、本題なのですが、まだ言う気はないのです?」
「………」
「残念なのです。とりあえず一パーセントぐらいは失っておくのです」
ノアがゴードンの腕を握るとゴキッと橈骨と尺骨※1をへし折る。
二本折れた。すなわち体中の骨の一パーセントが折れたことになる。
「アァァァァァ!」
「まだまだなのです。骨は二百本ぐらい、歯は二十本、爪は十八枚、関節は十二箇所簡単に折れるところがまだ残ってるのです。コレ全部含めると、まだ一パーセントも失ってないことになるのです。良かったのです。まだまだ楽しめるのです」
「ア、アァ………」
「とりあえず、爪はもうちょっと剥ぐのです」
ノアがナイフを持っていそいそと右手親指の爪を剥がそうとしたところ弱々しい声が掛けられた。
「ま、待ってくれ……話すから……」
「そう、残念なのです。で、なんでこんな馬鹿げたこと企んだのです?まさか本気で国家転覆できるとでも思ってたのです?」
「あ、ああ。できると思ったさ……」
ここでラインが来た。
どうやらティリアとISISの職員が来たらしい。
「あ、着いたのですか」
そう呟くと、見張りを二人に任せノアは玄関へ迎えに言った。
◇◆◇◆◇
「随分と派手にやったね」
「ええ、みんな早いうちに寝ちゃったのです」
「そう、で、ここの宮殿の王様は?」
「奥の部屋でお客様のお相手なのです」
「わかった。じゃ、そのお客様の連れってことで」
「なのです」
ティリアとISISの職員十数名を引き連れ奥の部屋へ向かう。
「お客様こちらの談話室でお待ち下さいなのです」
「まぁ、まて、まずは当主に挨拶をしたいねぇ」
「しゃーないのです。ロリコンを連れて行きたくは無いのですがねぇ」
「おいおい、それは私等の上司じゃないか。あとその補佐」
「無意識というやつにはことごとく驚かされるのです」
軽く会話をしながら奥へと進む。
「ではお客様こちらなのです」
「あいよー」
ティリアがガチャリと扉を開けると、中ではゴードンをふん縛るクーナと怯えていた少女…クリスタと仲良く話すミラーシャがいた。
「お客様なのです」
「どもー」
「ども、待ってましたっす」
ここでティリアとミラーシャのファーストコンタクトである。
「さて、ノアさん。ここにいる人達は?」
と聞いてきたのは職員さん。
「ミラーシャとクーナ。で、あっちにいるのがクリスタとゴードンなのです」
「彼女がかの有名なアデール・ファミリーのトップ、ノワールレーヌことミラーシャ?」
「なのです。というか何なのですそのよくわからんあだ名は」
「え?だって彼女フランスマフィアでも重鎮だし、それにフランスマフィアで彼女ほど有名な女性もいないしね」
「だから黒の女王と………なんかバレットレーヌとたいして変わらないのです」
と、ノアとティリアが話しているとミラーシャは顔を真っ赤にしていた。
まぁ厨二心満載のあだ名を言われちゃねぇ…
「で、この二人?ターゲットは」
「なのです。こいつがアンダーボス。爪は二枚と、骨は二本といったところなのです」
「ほー……わかった。じゃ、あとよろしくお願いします」
「わかりました」
職員たちが二人を連れて行こうとしたところ、クーナが待ったを掛けた。
「……姐さん。クリスタは悪くない。むしろ被害者」
「やっぱりなのです?」
「どいうこと?」
「クリスタは穏健派。でも、そこのアンダーボスは過激派だった。クリスタは一応はボスだけど、まだなりたてで力も無い。そこをアンダーボスに利用され、幹部もみんな過激派となってしまった。先代からの穏健派はみんな粛清されたらしい」
「ふむ、よくあることなのです」
「だねー。じゃ、そういうことでISIS伝統のお話は少々甘めでお願いね」
「わかりました。では、私達はこれで」
といって今度こそ二人を連れて帰っていった。
「ふいー……やっと終わったのです」
「そうっすねー」
「…疲れた」
「三人ともお疲れ様。随分手痛くやられたようだし、まずは病院かな?」
「なのです」
ということで三人はアデール・ファミリー御用達の病院へと向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※1:橈骨、尺骨
…両方腕の前腕部にある骨のこと。
詳しくはググって。
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