第40話 カチコミなのです!その2

「オラァ!シルバースノーがやってたぞっ」


「イルカがせめてきたぞっ!」


「小松◯茂がやってきたぞっ!」


庭で襲いかかってきた男を全員倒した後、正面の豪華なドアを蹴って中に入る。

中は豪華なレッドカーペットと調度品がたくさん置いてあり、正面には大きな階段が見える。

豪邸を絵に描いたようなエントランスロビーである。


「クソがっ!」


「死ね!」


中に入ると左右の扉から、階段から、二階から、たくさんの男が出てくる。

だが、三人とも眉一つ動かさない。


「ほら、助さん格さん懲らしめてやりなさい」


「わかったっす?」


「???」


「ふぅ……今すぐ回れ右してジャパンの時代劇を見るべきなのです」


頭にクエスチョンマークを浮かべながらも三人は奥へ奥へ人をなぎ倒しながら進む。

後ろは振り向かず、前の敵のみを殺して進む。


「よっと!」


飛んでくる銃弾を躱すと、カウンターとしてエメオリジナルを撃つノア。

ロクに狙いも定める時間もなかったが、弾は足を撃ち抜いた。

45口径という大口径が足に直撃した男はその場に倒れる。


「もう一発もらっとくのです」


倒れた男に飛んできたのは先程足を射抜いた45ACP弾であった。

それも頭に。


「うもー……倒しても倒しても湧いてくるのです」


ボヤきながら銃を撃つ。

その手に迷いは無い。


「姐さん。Gは一匹見かけたら三十匹はいると思うっす」


「増殖するG……」


二人もボヤきながら三階の奥にあるボスの部屋を目指す。

いくら大きな屋敷とはいえ、この三人が走れば数十分もしないうちにボスのいる大きな部屋にたどり着いた。


「よし、行くのです」


「後ろは任せて………」


「いけるのです?」


「ダイジョブ姐さん。二代目副総長舐めちゃいけないよ」


「そか、ならよし」


ということでクーナを廊下に置いていき、二人は部屋に乗り込む。


「ボンジュ〜ル。シルバースノー初代総長ノアなのです」


「二代目総長ミラーシャっす!」


場に合わない陽気な声とともに入ってきた二人。

にっこりとした顔で二人共かわいい。


部屋には大男と、中肉中背の男、数名の男、ひょろりとした男、そして少女。

男たちはノアたちを取り囲むように動き、大男と中肉中背の男はその中心でドシンと構えている。

少女は奥の豪華な椅子に座って怯えている。

ひょろりとした男はその少女の側で神経質な目をしている。


「なんですか、君たちは?カチコミなら相手を考えてほしいですね」


神経質な目をしながら冷たい声でそう言う。


「カチコミねぇ〜……なら天下のヴァーグナー・ファミリーも堕ちたものです。だってたった三人にボスの部屋までたどり着かれてるんですよ。一体どこのRPGなのです?勇者と魔王じゃあるまいし…」


「そうっすよ!ド◯クエでもF◯じゃないんっすよ!それなら、パ◯プンテでも唱えてやるっすよ!」


なぜにパ◯プンテ?

数ある呪文のなかで何故にパ◯プンテ?

もったあったでしょ……メラ◯ーマとか、ベホ◯ミとか、ル◯ラとか……


「はぁ………そこの銀髪のあなたはアデール・ファミリーのボスでは無いんですか?」


「今はタダの姐さんの舎弟っす」


「だから私は今はタダの不良のボスなのです」


「はぁ……で、二人で勝てるとでも………それにあなたが出てくると全面抗争になりますよ。ミラーシャ・アデール」


「ふふん………うちには優秀な相談役がいるのさ!相談役にかかれば抗争の回避ぐらい余裕さ余裕!」


「ま、そんなことだから、とっとと観念するのです」


にっこり笑顔で伝える二人を見て数名だが、腰が引けてるものが現れた。

だが、大多数は戦意を喪失せず、未だに睨みつけている。


「はぁ……本当にどうしようもない方々だ……まるであなた方が勝つと言わんばかりの態度………呆れてものがいえません………さて、御託はコレぐらいでいいでしょう。ほら、殺ってしまいなさい」


と、呆れを顔に出してひょろりとした男が告げると、大男と中肉中背の男が出てきた。


「おい……チビ……殺してやるよ……」


「そっちの嬢ちゃんは俺が相手してやるさ……ケヒッ」


大男は右手に反りの付いた大振りな日本刀を持ち、左手にはスイーツ・ホーク…50口径※1の大口径ハンドガンを持っており、もう片方はミラーシャと同じ様に二丁のハンドガンを持っているが、異様にマガジンが長い。


「ミラーシャ。お呼ばれされてるのです。ちょっくら行ってくるのです」


「はーい!じゃ、こっちはこっちでやっとくのです!」


「ん、頼んだのです」


そこらの城の謁見の間ぐらいの大きさのある部屋で二つの戦いが始まろうとしている………



◇◆◇◆◇



所変わってこちらは廊下。

ただいまクーナがボスのいる部屋の扉の前で門番みたいに構えている。


「……ここを通りたければ私を倒してから行け……なんちって」


と、つぶやくと、口角をニヤァと上げ、向かってくる敵に右足をぶつけに行った。


「い~ち」


まずは目の前の男に右のハイキック。


「に~い」


次に右の男に右腕の裏拳。


「さ〜ん」


左の男に左手での手刀を鼻に。


「よ〜ん」


ハイキックを食らわせて男を踏み台に奥の男へと飛び蹴り。

その反動でまた扉の前へ戻る。


「次いくよー」


手足をムチの様にしならせ相手の急所という急所を叩く。

依然は喧嘩拳法としての攻撃だったが今となっては殺しの道具である。

威力も桁違いに高い。


あるものは頭がへこみ、あるものはそこらじゅうから血を流し、あるものは腹が闇のような青に染まり、あるものは五臓六腑が壊される。


そんな地獄を描いているのはたった一人の女性である。


「ふぅ〜……今どきのマフィアは骨がない……姐さんなら私の蹴りなんて屁でもなかった」


どんだけ強いねん。


「ハァ………」


大きなため息をついて彼女はまた足と腕を振るう。

その動きに一切の無駄は無い。


「死ねぇ!」


マシンガンをぶっ放す五人組が現れたが……


「甘い。私を倒したければ核でも持って来い」


一人に蹴りを入れ潰すと、その男を盾にして弾幕を躱す。

次に用済みになった男を投げて、目くらましにし、目の前の男に蹴りをいれると、瞬く間にターゲットを変え、変え、あっという間に制圧してしまった。


「ふぅ………あとで姐さんぷにぷにしよ」


フワァ〜とあくびをして、扉にもたれた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



※1:50口径

 …銃の口径の一種。

  45口径より口径が大きい為、火力もあるが、同時に反動も大きい。

  50口径といえば主にライフル弾の12.7×99mm NATO弾が有名だが、

  これは対物ライフルや機関銃の弾薬に使われている。

  今話では12.7×99mm NATO弾ではなく、ピストル弾の.50 Action Express.50アクション・エクスプレス弾

  のことを差す。

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