第37話 休日なのです!

9月15日―P.M.1:10―フランス・コルマール郊外・サンクリート教会―


「ごちそうさまなのです。おいしかったのです」


「そう、なら良かったわ」


母親の味とも言えるティファナのご飯を満足顔で食べ終えたノア。

ここに来てから早8日、ノアは十二分に羽を伸ばしていた。

生き馬の目を抜いて歯を引っこ抜いて耳を引っこ抜く(?)業界であるスパイ業。

いくらジュエルセクションの面々と楽しそうに過ごしていても100で羽を伸ばすことは難しい。

だから、こういう機会はまたとないチャンスな訳であり、ノアはそのチャンスを完璧に活かしていた。


「で、ノアちゃん今日もゴロゴロですか?」


「なのです」


「まぁ、いいですけど、子どもたちの相手もしてあげてくださいね〜、お姉ちゃん」


「わかってるのです」


といってまたソファに体を預けるノア。

気持ちよさそうである……


そんなノアにちびっこズが近づいてきた。


「ねぇねぇノアねぇ!今日もやるよー!」


といってアンナたちが持ってきたのはVRヘッドセット。


「お、今日も私に頼るのです?」


「ふふん!もうノアねぇの出る幕は無いんだよ!」


といっててってってーっとテレビまで走っていくちびっこズ。

そして慣れた手付きでゲームを起動する。


しばらくすると画面にロボットが出てきてCost Reduction予算削減というロゴが出てくる。

そんな画面の目の前でVRヘッドセットを被っているのはアンナ。

右手と左手を忙しく動かしている。


「まぁぱぱっとやってやるよー!」


と言ってアンナが左手を動かすと一人称視点のキャラクターの手に赤い近未来的な銃が握られる。

その銃から青い放物線上の軌道が放たれるとキャラクターは着弾地点へとワープする。


そんなことを繰り返して、キャラクターは部屋を出て、廊下を進む。


「おっと…来たね」


すっとキャラクターは近くに部屋に入り、何かから身を隠す。

少ししてキャラクターの視界に一台のロボットが入った。

白と黒のスタイリッシュなボディに監視カメラみたいな頭。

その頭は怪しげに光っている。


そのロボットがキャラクターの隠れている部屋を通り過ぎるとアンナはキャラクターを動かし、ロボットの背後をとる。


「野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!」


右手に構えたナイフをロボットに突き立てるが…………


「あふん」


ナイフは綺麗に空振り、逆にロボットに反撃されゲームオーバーとなったようだ。


「はいはい、まぁ、アンナは四天王の中でも最弱………いやまず四天王ですら無いわ」


と予定調和の如く、アンナからヘッドセットを奪い取ったのはミーネ。

スポッと被ってもっかいスタート。


「ハハハ、こう見ても私はステルスアクションは大の得意…かったn……あふん」


出オチである。

それも綺麗な。


「まぁ、この二人こそ前座。本命はボクさ」


ここでプレイヤーがアルクへと変わる。

少々背伸びしたクールぶった口調とともにヘッドセットをつけトライ。


「ここは通路、それなりの幅がある。ならここはもっと狭い部屋に入ったところを狙う!」


といってロボットが部屋に入った瞬間襲いかかり、ナイフを後頭部に突き刺すがロボットの行動は止まらない。


「なんで死なないの!?」


そのままロボットにキャラクターがやられた。

それを見てノアはが一言。


「さて、そろそろ真打ちの出番なのです」


といってアンナが取り上げたヘッドセットを受け取り頭に付けるノア。

付けると手をくぱくぱと動かして操作感を覚えてから動く。


「殺るなら一撃。悲鳴を上げさせるのは二級、一級は殺されたと思わせないことなのです」


と言ってロボットの目の前に飛び出すと右手のナイフで迷わず、頭のカメラを刺す。

するとカメラから光が消え、ロボットはシャットダウンしたかのように床に倒れた。

なぜか血も出ている。


「よし、交代は死ぬまでだったのです」


「ぐぬぬ……早く死ねぃ……」


「アンナちゃん!?……あっ…」


自分の妹みたいな子に死ねと言われて動揺したのか後ろから出てきたロボットに気付かずノアもゲームオーバーとなった。


「よしっ!」


満面の笑みでノアからヘッドセットを奪うと二周目に入った。

そんな感じに仲良くゲームをして過ごす昼下がり。


「少し外に出てくるのです」


「ん?わかったけどどうして?」


「そういや今日はハー◯ンダッツの新作が出るのです。みんなの分も買ってくるからちょいっとみんなでやっててくれなのです」


と言って外に出て近くのスーパーに向かう。



◇◆◇◆◇



「ふー……買った買ったなのです」


ノアの持つ袋には新作のハー◯ンダッツとお菓子、飲み物が数点入っている。

そのため少し大きめの袋だが、軽く持ち上げている。

まぁ、ノアも元軍人だからね。

重いモノを持つなんてものじゃないですよ。


軽い足取りで教会へと戻る途中………ノアの耳は聞き覚えのある音を拾った………



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



よんごーです。

ノアたちがやっていたVRゲームの元ネタわかりましたでしょうか?


元ネタはBudget Cutsというゲームです。

スリル満載のVRステルスアクションでおすすめです。

作者はラスボス撃破に非常に手間取りました。

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