第29話 閑話その7 ボッチキャンプダイヤちゃん。 その4

―アヤ side―


「さて、顔洗って朝ごはん作ってくるのです」


と言い残し、顔を洗いに言った彼女は年相応の可愛い少女に見えた。

決して軍人のようには見えない。

だけど、さっきまでの彼女はそこら辺の男より怖かった。

そして強かった。

おそらく私が敵だったのならば、迷わず撃ち殺されていた。

それぐらい怖い何かを感じた。

でも、同時に何か温かいものを感じたような気がする。

それこそ、家族に向けるような何かを…

あれ?コレじゃ冷たい面と温かい面が共存しているみたいだ。


まるで映画のスパイみたいな冷たさと、映画の主人公の特殊部隊のメンバーみたいな仲間に対する温かさが一緒に感じられた。


私には軍隊のことなんかわかんないけど、彼女はおそらく人には知られてはいけないこともしているんだろう。でも、温かみがある。


そんな彼女に銃を向けられた私は恐怖もあった。

苦しいまでに。

でも、なんか妙な感情も湧き上がった。

体の中が熱く、彼女の温かさで心臓がやけどしたみたいな感情だった。

よくわからない感情だった。


そんな感情植え付けた彼女が去った後ユイが、


「…ふぅ…行きた心地がしなかった。これにこりたらしばらくは寝起きドッキリは控えなさい」


釘を刺してきた。

まぁ、この一件で懲りちゃっちゃ懲りたね。


「ハハハ、しばらくはまじで控えます」


「うん、それがいい…ところで、どうした急にメスの顔になってあの少女に恋でもした?」


「ハハハハァ?そそそ、そんなんじゃにゃいよ…!」


「ハァ、そんな反応じゃ認めたようなもの…」


恋、恋か……言われてみればそうなのかもしれない………同人誌にもこんな描写あったと思うし…


「…でも大変」


「?」


「だって、あの娘に恋したらレズのロリコンとかいう訳わからん性癖を背負うことになる…私も含めて」


「あ、そうか…レズでロリコンねぇ……ええ!?」


おう、まさかの横にいるこいつも惚れたんかい。


「…あれは女性でも惚れる。なんか感じたもん」


「わかる」


こうして私達二人は昨日あったばかりでかつ、銃を向けられた相手を愛してしまった。

私の人生は人より少しだけ、面白いことになっているが、ますますおもしろくなりそうだ。


そしてそんな私達が惚れた彼女は無邪気な顔で寝間着のまま走ってきた。

その姿に軍人の面影など一切ない。


それに私達もハッと目が覚め、顔を洗いに言った。

だって今の顔は見せられないから。

涙でぐぢゅぐぢゅになって、頬はリンゴより紅くなっている顔を。



◇◆◇◆◇



私達が顔を洗って戻ってくると、ノアちゃんは朝食を用意していた。

ホットケーキにスープにスクランブルエッグ、ベーコン、サラダ、ヨーグルト。

陽気な朝食だ。


「どうぞなのです」


「「いただきます」」


ハフハフといただく。

うん、美味しい。

私達日本人からすると朝からホットケーキというのがなんか嬉しい。


ユイも美味しそうに食べている……


うん…会話がない。

全くない。

まぁ、あんなことあってすぐだもんね……

それになんかノアちゃんの顔を見づらいったらありゃしないのよ!


そんな重い空気でご飯を食べ終えた。

食器はノアちゃんが片付けしてくれたから私達はテントを畳んだりして帰る準備をしていた。


「終わったのです」


「こっちもだよー」


太陽が南の空に差し掛かる朝の9時ごろ片付けも終わり、帰り支度も済んだ。

ノアちゃんはそろそろ迎えが来るとかでキャリーカートを引いて管理小屋に向かっていった。

そんなノアちゃんに少しだけ待ってもらって最後に一枚、スリーショットを撮ってもらった。

ついでに私達も管理小屋にチェックアウトしにいった。


だけど、管理小屋で事件は起こった……



◇◆◇◆◇



「はい、テントなのです」


「おお、ありがとな」


「そっちの嬢ちゃん等には何も貸してないな」


「はい」


「よし、じゃあ、まぁ、また機会があれば来てくれ」


軽く管理人のおじさんと言葉を交わし、帰ろうとしたところ……


「おい!全員手を挙げろ!」


「早くしろ!!」


覆面の三人組が銃もって入ってきた。

なんで私は一日で二回も銃を向けられるの!?


でも、朝のノアちゃんの一件に比べればなんら怖くない。

なんというか殺気が違う。

でも手は挙げなくちゃだから手は挙げる。

今小屋にいるのは私とユイ、ノアちゃんと、おじさん。

みんなが手を挙げている。


「よし、じゃあ金を詰めろ!」


といっておじさんに袋を投げ渡す。

おじさんも焦ったように袋にお金を詰め始める。


男の内一人はおじさんの方を見て、残りの二人が私達三人を見張っている。


「ねぇ、おじさん。強盗は初めて?」


ノアちゃんがふと訊いた。


「ああ?なんだガキ?」


「どうなの?」


「ハッ!俺等はもう何件もやってきたプロだ!だからな殺されたくなければ大人しくしろ!」


するとノアちゃんはニヤリとして言った。


「へー…で、撃ったことはあるの?」


「あるに決まってんだろ!」


「ならセーフティぐらいは解除しないとね〜」


というとノアちゃんは男の一人に飛びかかって銃を奪い、そのまま男を盾にした。そして、その男の首筋に足を絡め、目にも止まらぬ早撃ちで残り二人の男の手を撃って銃を落とさせる。


そして足を絡めていた男を蹴飛ばし、私達を見張っていたもう一人の男にぶつける。


「戦場で気を抜くのは死にたいという意思表示なのです」


と呟くと、おじさんにお金を詰めさせていた男を軽やかに投げ飛ばす。

なんであの体で自身の何倍もある大男を投げ飛ばせるのやら…


男共が地面に伏した間に銃を三丁回収し、男共に銃を向けた。


「手を挙げるのです。さもないと体に穴が増えるのです」


すると恐る恐る男共も手を挙げ私達に安堵が訪れた。


「おじさん警察に通報なのです」


「あ、ああ。にしても随分強いな。銃を持った相手三人を一人て倒しちまうとはな……」


「まぁ、色々やってたのです。それより早く」


おじさんが警察を呼ぶ。

その間私とユイはぽかんとノアちゃんを見ていた。

うん、あんなことされちゃまた心臓がうるさくなる。

あーあ、ついに私もロリコンになっちゃったんだ。

まぁ、いいか。


数分もしない内に警察が来た。

警察も鎮圧済と聞いてどんなバケモンがいたのかと思い入ってみると小さな少女が鎮圧したと聞いて随分驚いていた。


そのまま私達は事情聴取を済ませ、大使館へと向かってから日本へと戻った。

おじさんは普通に返された。

でも、ノアちゃんはロンドンの中心部に向かって車で走っていた。

うーん…軍部の所属だからかな?


まぁ、また会えるといいなという思いと恋心と共に日本へと戻った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



よんごーです。

長くなったキャンプ編も終わって次はFILE3です。

ちなみにアヤとユイは後々出すと思いますよ………多分。

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