第22話 新兵器なのです!

8月23日―P.M.10:07―パニグア・イスラ島北・バンカー―


通気口の蓋を開けると……


そこにはけたたましい音と共に、兵器が機械に次々に組み立てられており、たくさんの兵器が並べられている光景があった。

ルビーが双眼鏡で覗いただけで、銃火器は当たり前のこと、装甲車や戦車、挙げ句戦闘ヘリまで作られていた。

その後ろでダイヤがなんとか見ようと首を動かしている。

かわいい。


「よし、撮っちゃうか」


「なのです」


ルビーがカメラを取り出し、パシャリパシャリと機械が動いている様子や、フィリックの姿と今日来ているゲストの姿、装甲車や戦車などのすでに出来上がった兵器などを写真に収める。

その中にはもちろん新型のワンダーフォーゲルの写真もある。


一通り取り終えると、無線が入った。


『サファイアだ。よくやった。奴らの会話内容もこちらで録音している。コレだけ証拠が揃えば奴らは全員檻の中だ』


「そう、やった!」


『ああ、よくやった。離脱してくれ!』


「りょーかい!」


任務も無事終了したところで帰ろうとした矢先、思いがけぬ言葉が入ってきた。


「では皆さん!ここで新商品のお披露目と行きましょう!」


フィリック・クルーガーの声である。

その声はどこか誇らしげである。

周りのゲストも盛り上がっている。


「おい、アレもってこい!」


と言うと奥から部下の一人が何やらタブレットと箱を持ってきた。

更にその後ろから機銃の付いたドローンを持った三人がやってきた。


「では、ご説明します。これは簡単に言うとソナー※1と攻撃ドローンを合わせた兵器です。まず、この箱状のものはソナーです。で、これはそのソナーの結果を見るタブレット、最後にこのドローンは機銃付きの攻撃機です。おっと、これのどこが目玉何だという野次は言わないでくださいね。まだこいつの秘密はありますからね。で、こいつは普通のソナーより格段に探知範囲が広がっており、索敵能力の向上がまず一つ。

次にココに唾液を吐くか、DNAのデータベースをこいつにインプットすると、データベース上にある人にはソナーが反応しなくなります!よってフレンドリーファイアが確実に減ります!」


『おおー!』


「このタブレットには味方は緑、敵は赤、兵器類は白で現れます。そして、これらの光っている点を押すと、その光っている点の人物のパーソナルデータが出ます!まぁ、およその身長や緊張具合のものですが………まぁ、まだココには改善点があるということで……ですが、その分負けますよ。最後にドローンですが、AI制御により、ソナーで探知したターゲットを自動で攻撃します。武装は7.62mm※2機銃に40mm榴弾砲。定番ですが安定感のあるものにしてあります。ですが、コレ以外もアタッチメントは販売します!例えば暴徒鎮圧用にゴム弾銃やフラッシュバンや、対装甲用に.50BMG弾※3、連射に振り切ったガトリングなど、実用性からロマンまで幅広くご用意させてもらいます!」


『おおー!!』


一通りフィリックが話し終えると、サファイアから無線。


『これは不味いな、こんなのが戦場にポンポン出てきたら、さらに悲惨なことになる』


「うん」


『急いで離脱してくれ。攻撃機は翌朝7:30に攻撃となった。それまでに離脱してくれ』


「りょーかい!」


無線が終わるタイミングぐらいで、向こうのゲストの買うかどうかの相談も終わり、いよいよ販売といったところで思わぬことをフィリックが言った。


「まぁ、みなさん、性能を確かめてから買っても遅くはありません。ここで一回試してみましょう」


えらいことになった。このままだとダイヤとルビーがいることがバレる。

どうやらもうすでにゲストの唾液の採取は済んでいるようですぐソナーのスイッチを押そうとしている。


「ダイヤ、ハッシュパピー貸して!」


「はいなのです!」


ダイヤがハッシュパピーをルビーに渡す。

ルビは受け取ったハッシュパピーの照準をソナーを起動させようとする兵の一人に向け撃つ。

弾は兵の頸動脈の近くに刺さり、兵は間髪を入れず苦しみだす。

数秒ほど胸を押さえると兵はそのまま帰らぬ人となった。

それを受けて兵の周りでは騒ぎになっているが、フィリックが連れてきた医者が心臓発作と判断すると、何事もなかったかの様に今度は自分自身でソナーを起動させた。


だが、その頃にはルビーとダイヤはダクトを戻り、適当な部屋へ身を隠していた。

そして二人はイヤホンに聞き耳を立てている。

少しすると、血相を変えて二人して逃げ出した。


実は帰り際、ダクトに盗聴器を仕掛け、その音声を今の今まで聞いていたのだ。


で、その問題の音声は……


「では行きますよーっ。せーのっ!」カチッ


『あ”ぁ”〜ソナーの音ぉ〜!』


「ん?おい、ネズミがいるぞ!Bブロックの設計室1だ!」


その声とともにドローンの羽音や兵の声や足音が激しくなる。

つまり、この二人はバレたってことだ。


さて、そんな逃げている二人だが………


「どうする!?」


「バンカーの横穴にボートがあったのです!それに乗るのです!」


「オッケ!」


二人共手にエメオリジナルを持って疾走中である。

だが追ってはすぐそこまで来ていた。


「いたぞー!」


「コンタクト!」


そんな声がするたび、銃を向けては撃っていた。

お陰でマガジンも底をつきそうである。



そしてものの一分程度で………


「あっ!切れた!」


「こっちもなのです」


両者弾切れ。

これには向こうも気付いたのか一気に攻勢を仕掛けてくる。


「んなワケないのです!」


その隙を狙ってダイヤがポーチからガバを出す。

虚ろを疲れた兵たちは揃ってガバの前に倒れた。

七発七殺確実に仕留めた。

が、以前数は多い。


そんな中ついに聞こえたくないものが二人の耳に入った。

ドローンの羽音である。


それを聞いてルビーはナイフを投げ、前方の敵を殺し、そこからアサルトライフルとマガジンを奪い姿の見えたドローン相手に撃つがどうやら装甲はしっかりしているようで効果がない。


「やばいね!」


「どうするのです!?」


「逃げる一択のみ!」


「なのです!」


そんな中でも笑みを絶やさず逃げ続ける二人。

そんな二人の前に一つの扉が見えた。


「あの中に入ればドローンもこれないでしょ!」


「ついでに扉の奥はバンカーの横穴に通じる通路なのです!」


実は地図には載ってないためフィリックが独自に作ったものだと思うが、あの兵器を作っていた部屋とバンカーの横穴は一つのでっかい通路で繋がっている。

もちろん戦車とかを運び出すためである。

そんな通路に通じる扉の鍵穴をアサルトライフルで壊し、抜ける。

これで、ドローンも追ってこないかと思いきや、榴弾で壁を吹き飛ばして追ってきた。

その後ろには人間の兵もセットである。


いよいよ、障害物も遮蔽物も無い一本道になった。

そこをただにひたすらに走る二人に数多の弾がかすめる。

だが、直撃していないのが幸いか。


「これでも喰らえ!」


ダイヤとルビーがグレネードをばらまく。

しかし、効果は薄い。


そうやって走ること数分。


「見えてきた!」


「あのボートに飛び乗って逃げるのです!」


ようやく外が見えてきた。

ラストスパートということで速度を上げる二人。


しかし、そうは問屋が降ろさないと言わんばかりにシャッターが閉まり始めた。

閉まるまでに逃げないと二人は確実に殺される。


あと2m、1m、80cm…とどんどん閉まっていくシャッター。

だが………


「フッ!」


「よっと!」


なんとかスライディングでくぐり抜ける。

そのまま走ってボートに乗る。


そしてエンジンを掛けいざ逃亡というところでシャッターが開いた。

その隙間からわらわら兵が出てきて襲いかかる。


ドローンに至っては空を飛んでいるため、ボートでも振り切れない。


が、そんなドローンの羽音よりでかい爆発音が聞こえ、海に沈むヘリらしき物が見えた。

それと同時にバララララとヘリの羽音が聞こえる。


ISISのマークが書かれたヘリが4機やってきて、バンカーの横穴の入口を取り囲む。


「え?ウチのヘリじゃん。どしたん?」


「これなのです」


といってダイヤが見せたのはおしりの栓が抜けた防犯ブザーである。

つまり、このヘリはダイヤの呼んだ応援となる。


そんな応援のヘリは一斉に機銃を掃射し、ドローンもろとも薙ぎ払う。

これで追っ手はいなくなった。


そしてヘリも殲滅を確認したところで上空へ退避しようと上昇を開始した数十秒後…


ボボボボカァーーン!!!!!


派手な爆発とともに島が消えた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



※1:ソナー

 …音波によって物体を探知する仕組みのこと。

  作品のようなソナーは普通はない。

※2:7.62mm

 …銃の口径の一種。

  5.56mmより威力のある弾で、主にバトルライフルの弾として使われる。

※3:.50BMG弾

 …対物ライフルなどで使う弾。12.7x99mm NATO弾とも言う。

  威力は化け物。

  余談だが、この弾は主にアメリカのバレット・ファイアーアームズ社の

  対物ライフル、バレットM82などに使用される弾だが、何を血迷ったのか、

  そんな対物ライフルで使われるような弾をハンドガンで撃てるようにした、

  Thuder.50サンダーという銃が2004年、ラスベガスで開かれた銃器見本市

  でアメリカのトリプルアクション社によって発表された。

  スペックはデモ機ということもあり、重くて反動が凄まじい、と実用性の低さが

  目立ったが、デカくて強いものが大好きなアメリカ人の琴線に触れたようで

  大好評だったらしい。

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