第21話 バンカーを進むのです!
8月23日―P.M.8:39―パニグア・イスラ島北・バンカー―
通路は以外に短く、一分も歩かず、部屋に出た。
「確か、この部屋を左に出て……突き当りが武器庫。とりあえず行ってみない?」
「そうするのです」
次の行き先が決定したところで四人ほど見回りがやってきた。
二人はササッと物陰に隠れ、様子を伺う。
少し待つと四人の男が話しだした。
「おい、聞いたか?」
「何をだよ」
「いま表の船着き場に停まってるクルーザーあるだろ。あれアルベルト・スコッチのだぞ。現に降りてきたからな」
「それ言うなら俺だって知ってるぞ。オイルマネーで儲けてる奴らや、実業家、果てはどっかの国の軍人まで来てたぞ」
「おいおい、何があるんだよ」
「知るかよ」
「まぁ、俺等みたいな下っ端には何も知らせれることは無いだろうな」
「だな。まぁ、金払いは良いしな、特に不満はないさ」
「欲を言や、ラスベガスで毎日パーッと遊べる程は欲しいな」
「ハハハ、なら今来てる実業家たちに気に入られるこったな」
「だな。じゃあな、俺はそろそろ行くわ」
「俺もだ。じゃあな。気をつけろよ」
「ハハハ、こんなところそうそう誰も来ないだろ」
「まぁな。まぁ、気にするに越したことは無いからな」
会話が終わり、四人の男の内二人が来た道を戻り、どこかへと去った。
残った男たちは武器庫へと続く扉の左右に立った。
それを確認するとダイヤとルビーは何やら相談を始めた。
「うん、コレは確実に黒だね」
「なのです」
「多分だけど、取引現場はこの一番大きい部屋だと思うんだけど…」
「まぁ、ここが製造ラインという可能性も捨てがたいのです」
「まぁ、行けばわかるでしょ」
「でもその前に武器庫で物資の調達なのです」
「だね」
「ならあの二人を排除しようか」
「なのです。あれじゃコッソリ進むのは無理なのです」
ダイヤとルビーは物陰から銃を出す。
もちろん姿は見せずに。
レーザーサイトをオンにしてレーザーポイントを頭に合わせる。
「ファイア」
小声でルビーが呟くと同じタイミングで引き金が引かれた。
銃口から飛び出た弾は確実に頭を貫き、武器庫に繋がる扉に立っていた二人は物言わぬ置物となった。
死んだことを確認したダイヤとルビーはこっそり物陰から出て、近くの長方形型の箱の中に二人をまとめて隠す。
今回は忘れず、死体漁りも済ませる。
が、特に目ぼしいものはなく、何も手にしないまま、蓋を閉める。
最後に、血の跡を適当な布で拭えば、パッと見何もなかったかのように見える。
「よし、行こっか」
処理が終わった二人は扉を開け、武器庫に通じる通路へと進む。
武器庫はココから一本道のため、誰か来るとしたらいまいた部屋からのみである。
「おかしいのです」
「うん、監視カメラの類がないね」
「これって、罠か、もしくはあの先は何も無いかだと思うのですが…」
「いや、あの二人は立っていたから武器自体はあるのだろうね、旧式なだけで」
「あー…なるほどなのです」
「まぁ、行ってみよっか」
警戒しつつ歩くが、何事もなく武器庫の扉の前に着いた。
そして更に警戒しつつ扉を開けて中に入る。
鍵はもちろんあったから、ピッキングして入る。
「監視カメラも無いよね」
「なのです」
武器庫内には眼に見えて監視カメラ等はない様子。
だが、気を抜かずに調べると……
「あーどれも古いね〜…みんなWW2の時のものか70年代のものだね〜」
「なのです。売れば高くつきそうなのです」
「だね〜」
どうやら中に古い銃器があった様子。
そんな銃器を見て、二人はどこか子供の様に漁り始めた。
だが、警戒は緩めていない。
さすがプロである。
「おお、
「……なにするつもりなのです?」
「いやー…ドンパチとね……」
「よし、では私もシカゴタイプライターでも担ぐのです」
「いや止めてよ」
「ぶっちゃけ潜入より、ドンパチやったほうが色々楽なのです」
「ま、まぁ、今日は潜入で」
危うくシ◯ワ映画になりかけたところで探索に戻る。
がさごそがさごそと何か探していると、今度はダイヤがなにか見つけたようである。
「おお、ハッシュパピー※2発見なのです。一応持っておくのです」
「おおーハッシュパピーかー…私の分ある?」
「うーん…見当たらないのです」
「うーん…フラッシュバンとかも見当たらないし、まじでハッシュパピーだけかもしれん。ココの収穫」
「たしかになのです」
ぼちぼち帰ろうとしたところでダイヤがおもむろに無線を始めた。
「もしもし、ダイヤなのです。エメさんいるのです?」
『ああ、いるぞ。ほれ』
『エメですよぉ〜。どーしたんですかぁ〜』
「今武器庫でハッシュパピーを拾ったのですが、弾がおかしいのです。なんか注射針っぽいと言うのですか…?」
『うーん…画像送ってくださ〜いぃ〜』
「わかったのです」
一度無線を切り、カメラでハッシュパピーと弾を撮って送る。
『あ、来ましたよぉ〜』
「よかったのです。で、なにかわかったのですか?」
『はいぃ〜。おそらく、冷戦期にアメリカの諜報部かなんかが極秘に作り出した、特殊作戦用ハンドガンの類ですかねぇ〜』
「ほうほう」
『で、弾の方は知人が前に言っていたHA弾ですかねぇ〜』
「HA弾?なんですそれ?」
『正しくはHerat Attack Bulletといって人為的に心臓発作を起こすための薬剤が注入された弾で、体に刺さるとそこから薬剤を投与し、自然な感じに心臓発作を起こし、怪しまれずに暗殺ができるというすぐれモノですねぇ〜』
「ほー…以外に使えるかもしれないです」
『一応、当たった部位によって効果までに時間が生じるので注意ですよぉ〜』
「わかったのです」
無線を切るとルビーが話しかけてきた。
「おおー…なんか便利そう」
「なのです。これ持って帰って解析してもらえばなんか新しいもの作ってもらえそうな気がするのです」
「だね。持ってこっか」
ということでハッシュパピーをポーチに仕舞い、武器庫をでる。
この時数マガジン分の.45ACP弾も持って行く。
◇◆◇◆◇
あの後も何事もなく進み、今ダイヤとルビーは二人が目星を付けていた大部屋を覗けるダクトを進んでいた。
そのまま匍匐で進み続け、排気口の蓋を開けると………
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※1:B.A.R
…アメリカで製造されいたブローニングM1918自動小銃の愛称。
由来は「Browning Automatic Rifle」から。
余談だが、ベルギーのブローニング・アームズ社の猟銃にも
「BAR」という製品があるが、B.A.Rとは関係ない。
※2:ハッシュパピー
…アメリカの
ベースに作られたMk.22 mod0の愛称。
由来は犬にハッシュパピーというお菓子を与えると静かになるように、
これで撃たれた人間も死ぬことで静かになることから。
余談だが、お菓子のハッシュパピーは
ベースの生地を丸めて油で揚げて作られ、魚介や揚げ物と一緒に食べられる。
"ハッシュパピー"と言う名前は狩人や釣人が野外調理の片手間にこれを作り、
"
ために犬に与えて食べさせたことが由来らしい。(諸説あり!)
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