第17話 行きつけの喫茶なのです!

8月18日―A.M.8:00―イタリア・ローマ・フィウミチーノ空港―


翌日ノアとティリアの二人は空港に戻ってきた。

目的はもちろんイギリスに帰るためである。


だが、どこかノアは不機嫌な様子……


「ね、ねぇ機嫌直してよ〜」


「ロリコンがなんのようなのです…?」


「いやね、アレはね、少し気分がおかしかった言うか、なんというか…まぁ、不幸な事故だったの…!」


「ふーん……事故だから自分は悪くないと……」


「そ、そんなわけじゃないよ…!じゃ、じゃあ、今度お詫びの印にミレーネさんのところのチョコミント奢るから!」


「ま、まぁ、仕方がないから…今回は許してやるのです…」


「やった!ありがと!………チョロ………」


「なんか言ったのです?」


「イエナニモ」


「ならいいのです」


ちなみにミレーネさんのところというのはノアのお気に入りの喫茶のことである。

店名は”ミレーネコーヒー”とひねりも特に無いが、味はすごい美味しいらしい。

紅茶社会のイギリスでコーヒーショップが儲かっているというだけで凄さは伝わるだろう。

ノアはいつもチョコミントアイスとオリジナルブレンドを頼んでいる。


閑話休題。


二人はとっとと持ち物検査を済ます。

もちろん銃とかヤバいものは赤外線を通さない特注のケースに仕舞ってある。

車はISISのイタリア支部に置いてきた。


しばらくして、ふたりとも飛行機に乗り込む。

席はもちろんファーストクラスである。


そのまましばらくは空の旅である。



◇◆◇◆◇



8月18日―P.M.0:30―イギリス・ロンドン・ヒースロー空港―


「はーあ…ようやくロンドンだよ……」


「なのです……」


ふたりとも疲れている様子。

そんな二人だが、なんだかんだでご飯を食べに行くことになった。


「で、どこ行くのです?」


「え?イギリス料理屋以外?」


「でもイギリス料理でも美味しいところは美味しいのです」


「まぁ、無難にミレーネさんとこ行かない?」


「なのです」


ここでも出てくるミレーネさん。

ちなみにミレーネさんのところはノアや、ティリアのみならずジュエルセクションはみんな常連である。


さて、そんな二人は空港を出て、ティリアの愛車のドイツの高級車ブランドのBWN社のK7クーペに乗る。

ボディは白で二人乗り。

スリムでなんかかっこいいとはティリアの談である。


そんなクーペ車を走らせること一時間ほど。

ビッグベンに象徴される官公街に着いた。

そこから少し走り、ミレーネさんの店へと辿り着く。


「やっほ。来たよ〜」


「どもなのです〜」


「いらっしゃ〜い。いつものお席空いてますよ〜」


チリンと落ち着くベルを鳴らして店に入る。

店内は日本の純喫茶という雰囲気である。

これはミレーネが日本の喫茶店に憧れて作ったらしい。


それはともかく店に入った二人はいつものカウンター席に座っていつも食べてるものを頼む。


「ミックスサンドとブレンド、チョコミントアイスを頼むのです。あ、逆写真詐欺はなしで頼むのです」


「私はエビカツバーガーにブレンド、コーヒーゼリーバニラ乗せで頼む。あっ、それとポテトを頼む」


「いつものですね。わかりました」


と、伝えるとミストレスの格好をしたミレーネは厨房へと向かった。

ミレーネが料理している間ノアとティリアは二人でスマホでポーカーしていた。


「はいぃ〜エースとジャックのフルハウス〜!これは勝ったわwww」


「フッ……そんな手札で勝った気になっているお前の姿はお笑いだったのです。ほれ見るのです…ロイヤルストレートフラッシュなのです。フルハウスごとき足元にも及ばないのです………」


「あ、サマだサマ!可愛い顔しやがってやってる子は可愛くないぞ〜!」


「負け犬の遠吠えが気持ちいいのです」


そんなことをしているとミレーネが料理を持ってきた。


「はい、ミックスサンドにエビカツバーガー、ポテトですよ。デザートは食べ終わるタイミングで持ってきますね」


「ありがとね」


「ありがとなのです」


ノアの手元に出てきたのはタマゴサラダとキュウリ、レタス、ハムを三枚のパンで挟んだ結構オーソドックなサンドイッチである。

美味しそう。

ティリアにはジューシーなエビカツを特製のソースを塗ったバンズに挟んだバーガーが出された。

ポテトはマッシュされているのではなく、ジャガイモをくし切りにしたのを皮ごと上げているタイプである。

そして、どれもバカデカイ。

巷では逆写真詐欺と呼ばれる。


そんな大きいサンドイッチとバーガーを二人してかぶりつく。

そして頬を綻ばせる。


「うぅ〜ん!いつ食べても美味しいね〜!エビカツが美味いのはもちろんだけど、このソースがお気に入りなんだよね〜!で、これなに使ってんの?」


「ヒミツですよ〜。私はMI6が本気で調べ始めない限り教えませんよ〜」


「よし、MI6に殴り込みだ。ジェー◯ズ・ボ◯ド共々殴り飛ばしてやる」


「やめるのです。私達がイギリスの英雄に勝てるはず無いのです」


「まぁ、お二人が喫茶店を継ぐのなら教えないことも無いんですけどね〜」


「まぁ、それはともかく、いつもながら美味しいのです」


「ありがとうございます〜」


「このタマゴサラダの味付けがたまらないのです〜」


「フフフ…良かったです」


そんな風に会話を交わしながらもモグモグと食べていく。

そして瞬く間に食べ終わった二人のもとに運ばれたのはチョコミントアイスとコーヒーゼリーである。


二人共目を輝かせてスプーンを口に運ぶ。


「コレなのですよ〜!!このミントの爽やかさと、チョコの甘さと少しのビターな感じが堪んないのですよ〜!!!」


「やっぱりここのコーヒーゼリーなんだよね〜!!このほろ苦いゼリーとスッキリとした甘さのバニラアイスが合うんだよね〜!!!」


はい、こうなった。

まぁ、なんか分かってた…


そのまますぐ皿をキレイにした二人は最後にブレンドを飲み切る。

ここのブレンドは苦みがしっかりしており、コクがある。

そんなブレンドをノアはミルクのみを入れ、ティリアはブラックで飲む。

なにげにティリア、ブラック党である。


そんな感じに昼食を済ませ、イタリアでの約束通り、ティリアが奢って二人は店から出る。

そしてようやく二人はジュエルセクションのホームに向かう。

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