FILE2 潜入

第13話 次の任務なのです!

8月15日―A.M.10:00―イギリス・ISIS・ジュエルセクションホーム―


初任務から早十数日。

ジュエルセクションはこの間は基本みんな事務仕事をこなしていた。

が、本日からはそうは行かない様子……


「よし、集まったな」


「では早速本題だが、次の任務だ」


「「「「どんどんぱふぱふー」」」」


「よし、概要だが今回はスパイ活動だ。舞台はイタリアのローマだ。

二人にはローマで行われる兵器の裏取引を抑え、その裏にある組織を探って欲しい。でだ、こいつがターゲットの………」



◇◆◇◆◇



8月16日―P.M.7:00―イタリア・ローマ・フィウミチーノ空港―



「ふいー…フライトはつかれるのです」


「だねー…ファーストクラスで良かったよー」


何気ない会話を交わす二人はローマに降りたった。

実に数時間ほどのフライトだったがクルものはあったらしい。


「にしても似合ってるよ〜その服装」


「ありがとなのです……でも私的にはティア姉みたいなかっこいいのが着たいのです」


「いやーその体じゃ着こなせないよ〜」


「おっと、バックに手が伸びたのです」


「どうどう」


そんなダイヤ…もといノアの服装は黒の衿付きのブラウスに明るい茶色のショルダースカート、首に白に黒のラインのリボンといういかにも少女といったコーディネートである。

トドメは肩掛けのデフォルメされたクマのバッグである。


「うーん…ちょっとまって」


「はいなのです」


「あーやってこーやって…よし」


訂正後頭部に茶色に白のラインのリボンが付けられた。


「むぅ…これじゃ大人に見られないのです」


そんな風にぼやくノアを横目で微笑ましく見ながら頬を綻ばせるのはルビー…もといティリア・ハルヴァール。

彼女の本名である。


さて、彼女の格好は白のブラウスに、黒のゆったりとしたロングのボトムス、同じく黒のジャケットを羽織っている。手には白のキャリーケースを引いている。


この二人、パッと見姉妹、もしくは親子にしか見えないが普通に仕事中である。


「さて、ホテルいこっか」


「なのです」


ということでタクシーに乗り込む二人。

タクシーで走ること十数分。


石造りの街が広がる歴史ある都市、ローマの一角にタクシーは停まった。

二人はタクシーから降りるとどこか古風な感じを漂わせるホテルに入っていった。


「チェックインを頼む」


「ハルヴァール様ですね。承りました。お部屋は404号室です」


「ちゃんと存在しているの?」


「ええ、存在しております」


「ならよかった」


とだけ交わし、鍵を受け取ったティリアはエレベータに向かって歩く。

その後ろをノアがてくてくバックの紐を両手で握りついていく。

かわいい。


チーン、という音と共開いたエレベータのドアから部屋へと向かう。

ノアたちの部屋は4階となっている。


「ここだね」


カチャリと鍵を開け中に入る。

普通の観光客ならベッドにダイブぐらいはするのだろうが、この二人はあくまでもプロ。

ダイブの前に部屋中を探索し、盗聴器、発信機、隠しカメラの類が無いかよく調べる。


あらかた調べたティリアが両手の指でバツを作る。

同じ様にノアもバツを作る。


「よし、無いね」


「無いのです」


「うん、ならベッドに行かない?」


「え?お昼寝なのです?」


「いやー…某スパイ映画でもホテルでしっぽりするのは定番じゃん」


「それならMI6に勤めてから言ってほしいのです」


「けちー」


「処女をそう簡単にやってたまるかなのです」


そんな感じに時間は過ぎていく………



◇◆◇◆◇



8月17日―A.M.9:20―イタリア・ローマ郊外―


ノアたちはホテルからしばらく言ったところのとある石造りの建物にいた。

手には可愛くデコレーションされたノーバSPPと黒のSPPをそれぞれ持って。


「ノア、作戦解ってる?」


「大丈夫なのです」


「ならいくよ」


こっそりと階段を登り、入口の扉をそーっと開け中に入る。

目の前の部屋には誰もおらず、奥の部屋へと入る。

すると……


「オラァ!」


男が一人飛びかかってきた。

それをティリアがくるりと一回転で躱すとティリアの後ろから入ってきたノアがSPPを突きつける。


「両手を挙げて跪くのです」


コツンと銃口を背中にくっつければいくら強くとも、跪く。


「ハロー。グレイルさんで合ってる?」


「………」


「よし、合ってるね」


「では数点訊くのです」


「スパイごっこか?」


「殺し屋ごっこでもいいのですよ」


「おいおい、それぐらいの年ならパティシエさんごっことかお花屋さんごっことかあるだろう」


「あいにくそれはもう卒業したのです」


「そうか…で、そんなゴツいものは似合わないぞ」


「なら似合うようにするのです」


パン!


サプレッサーを付けてないため、大きな音がしたがここら辺には目立った建物はなく、人通りも少ないため、気付かれることはない。


「お?殺しちゃったの?」


「なのです。どうせ、あの視線の先に情報はあると思うのです」


「まぁ、無くてもなんとかなるよ。取引の時間と場所と相手は割れてるんだし」


「なのです」


話しながらも部屋中を探す。

すると……


「おっ、おもろいもの発見」


「ふむ、グレイル・ジョー。一応本部に確認をとるのです」


「りょーかい」


スマホを操作し、サファイアに電話を掛ける。

ちなみに電話は完全暗号通信で傍受自体難しく、仮に傍受できても暗号を読み解くのは今のスパコンでもバカにならない時間を要するため、安心安全である。


「もしもしなのです」


『おお、もしもしノアちゃんか』


「急にノアちゃんとは恐れ入ったのです。ケーサツを呼んでおくのです」


『ちょっとそれはひどくないか!?』


「さて、本題なのですが、調べてほしい男がいるのです」


『おっと、緩急エグいね。で、誰だい?ノアちゃんのお願いなら仕事ブッチしてでも調べるよ』


「ノアちゃんで決まりなのですね……」


『まぁ、可愛いからな』


「そうなのですか…ではその男なのですが…グレイル・ジョーなのです」


『わかった。早速調べてみよう』


電話が切れる。

切れたのを確認するとノアはティリアに目配せして一言。


「私は少しホテルに戻るのです。後から届けて貰う予定の荷物があるのです」


「そう。では私は今夜の取引に向けて少し勉強しようかな…彼について…といっても私もホテルだけど…」


「わかったのです」


というとノアは自分の中ではかっこよくてってってーとビルを出て、ホテルに戻ろとしたところ……大事なことに気付いた。


「あれ?足が無いのです」


「だろうね」


と、後ろからティリア。

締まりが悪い小さな諜報員である。


「タクシー呼ぶわ」


無常にもティリアの大人の声がタクシーを呼んだ。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



よんごーです。


第二章的なやつ…FILE2始まりました。

今回はFILE1みたいな特殊工作的なやつではなく、スパイアクション的なテイストでがんばります。

スパイアクション恒例の秘密兵器も出します。

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