第12話 閑話その3 サファイアさんの苦労

7月31日―A.M.9:30―イギリスISIS本部―


やぁ、サファイアさんだ。

ジュエルセクションでオフィサーをやらしてもらってる。

そんな私の仕事は基本事務仕事だ。


だが、今日はそうは行かないらしい。

それもそう、何故かISISの本部にお呼ばれしたからだ。


大体この呼び出しにいい思い出はない。

だが私も組織の人間、行かなければならない。


面倒くさい、帰りたい、ロリを愛でたい。


そんな気持ちを奥底にしまい。

仮面を貼り付け本部へと向かう。


……あっ、今のロリ可愛い。



◇◆◇◆◇



本部に着いた私は受付に言われた通り、エレベータで会議室へと向かう。


会議室のある階に着いた私は気晴らしに窓からロンドンの街を見渡す。


空は私の気持ちなど知らない晴れ。

今日も元気にビッグベンは動いてる。


っと、そろそろ会議室だ。


軽く身だしなみを整え、扉をノックする。


「入れ」


と声がしたから遠慮なく入る。

入ると、中にはISISの重鎮が数名いた。


うわー…帰りたい。帰ってダイヤを愛でたい。


「とりあえず座ってくれ」


「はい」


はい、帰れなくなった。

そんな気持ちを胸に仕舞ってジャック長官のありがたい言葉を聞く。


「まず、任務ご苦労様。戦果は上々、国連にも恩を売れた。

そして、ジュエルセクションをISISの正式な1部隊として認める」


「ありがとうございます」


「だが、君たちの存在は軍部にとっては目の上のたんこぶになるかもしれん。よって君たちが著しくISISにダメージを与えるようでは部隊は容赦無く解体されると思っておけ」


と、私達ジュエルセクションの存在に反対する重鎮から釘を刺された。


「分かっております」


ちなみにジャック長官は私達にとっては大きなスポンサーだ。

常々、スパイの黄金期であった冷戦は終わり、スパイは冷戦期のままでは過去の遺物として葬られると思っている長官の意向で誕生したセクションがジュエルセクションであるため、私達にとっては大樹のような存在である。

最近は孫みたいに思っているダイヤを可愛がりたいから作ったと私は思っているが。


「まぁ、部下を守るのも儂らの任である。変に緊張せず、任務に励んでほしい」


「ありがとうございます」


「うむ。では本題に行こう。まず、サファイアは自分の部下が見つけてきた情報には目を通したか?」


「はい。サキスの取引相手のリストと、仕事内容のファイルですね」


「そうだ。国連の連中が見つけられなかったやつだな」


「私達が調べたのは戦略的に重要なものは無いと思われるところでしたから……」


「さて、そんなことはいい。で、だ。そのリストを辿るとどうやっても一つの組織の名前で止まったんだよ」


「それは一体?」


「イオプロスビブアンデだ。聞いたことは?」


「名前程度は」


「だろうな、儂らもそれぐらいだ。だが、念のため過去の資料も洗い直したところ、面白い事実が分かった」


「と、言いますと?」


「おっと、ここからは他言無用だ。ジュエルセクションのメンバーにはイオプロスビブアンデ…長いからイオでいいか…そのイオまでだ。今から話す事実はココだけの話だ」


「わかりました」


「よし、では言うが…少し前にアメリカ駐在のフランス大使が暗殺された事件を覚えているか?」


「ええ、確か犯人は……中国人の青年だったと記憶しております」


「ああ、その事件だが、裏で色々テロ組織が動いていたんだ」


へーそうだったんだ。

アレってつい一ヶ月前とかの話だよね。


「で、その動いていた組織は今うちの工作員が潜り込んでいるんだが、そこからも出てきたんだ。つい一昨日にイオプロスビブアンデが。さらに調べると、この組織は昔からそのイオとの取引があった。主に、金と引き換えに武器を与えていたようだ」


「なるほど…その武器が中国人の青年に渡ったというところですか?」


「多分な。そしてこの調子だと、まだ出てきそうだな。イオプロスビブアンデ。現にISISでは結構前からこんな組織はあると分かっていたが、人員が避けずに放っておいたんだ。だが、今回を期にいよいよ本腰を入れてやろうと思う」


「ですね」


「ちなみにサファイアはこのイオプロスビブアンデの意味は理解しているか?」


「なにかのアナグラムとは思いますが…」


イオプロスビブアンデねぇ……8文字程度のアナグラムは簡単なんだけどね〜…10文字となるとキツイものだね〜……


「わかったか?」


「いえ?アイ…なんたらでしょうか?」


「そこまでわかっていれば上出来だ。で、答えだが、アイ・オブ・プロビデンスだ」


「プロビデンスの目……」


「ああ、神の全能の目だ。儂はクリスチャンだからな、相手が神となると勝ち目がない」


「私もです」


でたよ秘密結社あるある。

とりあえずプロビデンスの目推しときゃなんとかなる。

フ◯ーメ◯ソンとかフ◯ーメ◯ソンとかフ◯ーメ◯ソンとか。


「さて、こっちでも本腰入れて動くが、そっちはそっちで軽く気には置いといてくれ」


「わかりました」


「では、この話はココまでだ。さて、次は………おっと、サファイア以外は全員出てくれ」


というと、私とジャック長官以外が会議室から出ていく。

残ったのは私と長官のふたりである。

もうマヂ無理……上司と二人っきりは胃が痛くなるのよ。

リスカはしないぞ。


「さて、君たちにとっては任務の成果以上に気になる問題だと思うが…あの発砲事件についてだ」


「どうなりました?」


「まぁ、強く抗議はした。情報提供を打ち切るぞ、と」


「おお、強く出ましたね」


「ああ、ダイヤは儂の孫みたいなものだからな、じいちゃん頑張ったぞ」


「こうなれば泣く子も黙るを通り越して失神するISISの長官もただの孫バカですね」


「そうか、孫バカはじいちゃんにとっては最大の褒め言葉だ」


「それは良かったです」


ほんまこの人孫煩悩なんだよな〜

実際初の顔合わせの時部下を見る目もしてたが、少ししたら孫を見るおじいちゃんだったし……

なにげに1年ほど任務はなかったが、本来一ヶ月ほど前に一件入ってはいたが、この人が孫可愛さに別のセクション担当にしたしな。


「まぁ、国連は一応は儂らの上にあたるが、うちからの情報提供は国連にとっては耳だ。わざわざ自らの耳を切り落とすことはしまい」


「また別の耳を付けるかもしれませんよ?」


「手術、特に移植は時間がかかるというだろ。その間に心臓を貫かれるのは向こうも理解しているはずだ」


「ですね…」


「さて、そろそろ儂は次の仕事があるのでな…失礼する。

あ、今度、ダイヤの写真くれ」


「わかりました。選りすぐりのをお届けします」


「うむ、頼んだ」


というと長官も部屋を出ていった。

ようやく終わった……

帰ろ。


帰って写真の精査をしないと……

いや、この際新しいのを数枚撮ってそれ渡すか?

ついでに私のダイヤフォルダも潤うしな。


まぁ、何にせよ、こんな格式張ったところは長居したくない。

とっとと帰ろう。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



よんごーです。

今回は9話の午前中の話でした。

まぁ、2章に繋げるためのつなぎ?みたいな話でした?


さて、ここで閑話は終わって次は2章に突撃します。


そして、年末とか色々あるので更新が少し滞る可能性があります。

ご容赦ください。

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