第8話 最後の詰めなのです!

7月21日―P.M.2:00―コンゴ民主共和国北部サキス本部―


「応援に来ましたISISジュエルセクションのルビーとダイヤです」


基地に着くとまず、現場で指揮をとっている司令官さんのもとに挨拶に行く。

変にうろちょろしていると、撃たれるためまっすぐ向かう。


司令官は基地の比較的外部立っているテントにいた。


右肩に縫い付けられているISISのワッペンを見せ、中に入れてもらう。


中には椅子にふんぞり返った人と、神経質な参謀らしき人と、兵士が数名いた。


で、そんな司令官さんに挨拶をしにったのだが…


「あ”ぁ”っ”?スパイ野郎に用はねぇよ。帰れ!」


「いや、ここで制圧の手助けをするようジョン・バトラーISIS長官から伝令を受けております」


「いいから帰れ!!邪魔だ!!」


「いえ、ここで帰れば私達は処罰モノです。一応私達は防諜、スパイ組織の人間ですが、ジュエルセクションは戦闘任務や特殊任務、軍のバックアップもこなせるセクションです。そのため、私達にはここで制圧の手助けをする義務があります。それにコレはもう一度言いますが、ISISジャック長官からの命令です。これは現場の一指揮官の命令で覆るものではありません」


「そっちは俺から話しておく!!どうせ相手は椅子でふんぞり返っている老人だ!少し強く言やすぐ取り消す!!」


おお…白熱している。

私はあんまりこの国連軍とISISの溝がよくわかってないけど、仲が悪く、ハブとマングースであることはわかっている。


基本、司令官さんが怒鳴って、ルビーさんが冷静…いや結構内心でキレてるけど落ち着いて返すを繰り返している。


くるっと周りを見てみると、大体二パターンの人がいた。


司令官さんと同じく、私達に敵意がある人と、そこの参謀さんみたいにうんざりしている人である。


そんな風にテント内を見回していると、壮年の参謀さんに話しかけられた。


「やぁ、君があのヘリに乗っていた小さな兵士かい?」


「は、はい、そうです」


「いやぁ…昨晩はありがとう。どうやら、向こうは君たちのお陰で上手く言ったらしいからね」


「光栄です」


「ハハハ、そう固くならなくていい。普段道理に話せばいいさ。それにこんな小さな子に無理やり敬語を使わせる趣味は無いさ」


「あ、ありがとなのです」


「うんうん、君ぐらいの子はコレぐらいでいいさ。誰も怒りはしないよ」


「あ、あの私一応20は超えてるのです」


「それは驚いた。どっからどう見てもエレメンタリースクールに通っている子にしか見えなかったからね…でも、話しやすいよう話してくれ」


「ありがとなのです」


参謀さんは話してみると、なんかすごく話しやすい。

いかにも部下から尊敬される上司って感じがする。


「そういえば君はISISに来て長いのかい?」


「1年ほどなのです」


「ほー…ならうちとISISの仲が悪い理由がわからなかったりするかい?」


「そうなのです…うちにも国連軍さんを毛嫌いする人もいるのです」


「それはね…」


参謀さんいわく、元々は国連軍…つまり世界中の軍隊の方が、ISISを毛嫌いしていたらしい。

理由はなんでも、自国のスパイや、防諜機関には愛国心があるが、私達ISISの人には国を想う愛国心はなく、いざとなったら容赦無く生まれ育った国に矛を向けるのが許せないらしい。実際とある国で起きた不正をISISが調べ上げ、告発したのだが、それを行ったのはその国の人だったらしい。

そんなことがあり、国連軍はISISになにかと喧嘩を売るようになり、それにISISも乗っかってしまい、今に至るらしい。

でも、参謀さんのような私達を理解してくれている人も多いのも事実である。


と、そんな風に参謀さんと話し込んでいると、ルビーさんが、


「ダイヤちゃん、行くよ。こんなところに用は無い。私達は私達で、制圧の手助けだよ」


「でも、連携が取れないのはまずいのです」


「大丈夫。ここにも話の分かる人はいるから、全くの孤立無援じゃないよ」


「ああ、必要なことは伝える。これも立派な任務だからな。コレを放棄すれば俺は任務放棄みたいなものだ。つまり、軍法会議モノってな」


と、参謀さん。


「ありがとう。フランク中尉」


「こちらこそ、ルビー少佐」


「ありがとなのです」


「ハハハ、こちらこそだ、ダイヤ大尉」


むぅ、私が敬礼するとみんなほっこりとするんだよなぁ…

別に無理に見られたいわけじゃないけど、少しはかっこいい上官に見られたりしないかなぁ………


「おい!アルベルト!こいつらに少しでも情報を渡してみろ!!命令違反で軍法会議だぞ!!」


と、がなる指揮官さん。

どうやら彼は根っからのISIS差別主義者のよう。

どこ言っても面倒くさい上官はいるものだね………


「いえドラン大尉。彼女らに命令を与えたジュエル長官はあなたより立場は上。

そんな方の命令を無視するほうが軍法会議モノです。なので私はこの方達に資料を渡し、担当を振ります。では失礼します」


とだけ言うと、参謀さんは机に地図を広げて色々説明してくれた。


「この赤線で区切ってある中が制圧完了地域だ。

で、二人にはこのA10区域を任せる。一応部下として数名付けるがどうだ?」


「いえ、お心遣い感謝しますが、私達は集団行動より、二人ぐらいの方が動きやすいため、ご辞退させていただきます」


「そうか、なら頼んだ」


「「了解しました」」


私達は参謀さんの頑張りもあってA10区域の担当となった。

言われたからには頑張るよ。


ということでテントを出てA10区域に向かう。


その道中で…


「ダイヤちゃんあのドランっていう大尉には関わら無い方がいいよ。

あいつお父さんが元海軍中将なんだよ。で、あいつ自身コネで入った見たいなもんだから、選民思想がすごいんだよね。で、その選民思想が、私達への差別意識に繋がってるんだよね……」


「あー…察したのです」


完全に関わっちゃダメな人種だわ。

そしてそんな人の元で働いてる参謀さんの心労がヤバそう。


と、話している間に到着。

こっからは更に気を引き締めていくよ。


エメオリジナルを構えて、ツーマンセルで一部屋ずつ念入りに調べる。


「クリアなのです」


「よし、探索だよ」


なんか大きな部屋があり、ちょうどそこが作戦会議室の一つの様に感じたから書類を漁る。


その過程で………


「うにょっ!うにょっ!」


「どしたの?ダイヤちゃん」


「むむむ…!高いのです……!」


私は今壁に向かって立っている。

大きめの棚という壁に……


ジャンプじゃ届かずまさに万事休す。


こうなったら………


「とぉっ!」


近くの壁を蹴って跳び鮮やかに書類を回収する。


「おお〜」


後ろで拍手が聞こえる。


「やるねぇ〜」


といって頭をナデナデしてくるルビーさん。

こっちとしては複雑な気分になる…


そんなこんなで回収した資料を眺める。

書かれていた言語は普通に読める言語だったから、サクッと読む。

書かれていた内容は簡単に言うと、サキスの取引相手についてだった。

これは大事に持って帰らないといけない。


「これは、とっておこう」


「なのです」


「よし、じゃあ、あと一部屋だし制圧といこう」


ということで部屋を出て、廊下を進み、一番奥の部屋に入る。


私は後ろだから、先にルビーさんに入ってもらう。


「クリア」


「こっちもなのです」


一応、これで制圧完了。

そしてこの部屋もサクッと探索する。

まぁ、特になにもなかったわけだが。


「ふぅ…じゃあ、引き返そっか」


「なのです」


ポーチにちゃんと回収した書類や、道具類、光ディスク、USB等が入っているか確認し、銃器や兵器の弾も回収したかどうかを確認し、道を引き返す。


その道中で……


「おい、なんで売国奴がいるんだ!?」


「うわー…出たよ面倒くさいやつ」


兵に絡まれた。

こうなったら面倒くさいのはさっきから身にしみて分かっている。

こうなりゃ何言ってもキレられるから無視無視。


だから気にも止めず道を引き返そうとしたところ事件は起こった。


バンッ!


銃声がした、それも後ろから。

くるりと振り返り、こっちもエメオリジナルを抜く。

どうやらまだ敵が潜伏しているようだ。


「おい、構えろ!」


私達は構えているのに、国連軍の兵士は誰も構えない。

これじゃただの的だ。


「ハッ、敵なんぞいねぇよ。だって撃ったのは俺だからな!」


「「は?」」


まさかの若い兵のフレンドリーファイア※1のようである。

でも、敵影もいないし、こりゃターゲットは私たちのようだ。

はーあ…こりゃ一線超えたね。


「おい、何やってんの?こりゃ軍法会議モノだよ」


「そうなのです。味方への意図的な射撃。下手すりゃ除隊なのです」


「ハッ!それがどうした!女とガキはこんなところにいても迷惑だからな!とっとと帰らせるため撃ったのさ!グズでノロマな売国奴にはコレぐらいはしなくちゃだからな!」


周りも私達にはココにいてほしくないらしく、撃った奴に賛同している。

こりゃ酷い…若気の至りといってもやっていいこと悪いことあるんだよ…


現に結構ベテランの人は止めている。

そりゃそうか、やってることは軍規違反、軍法裁判からの除隊一直線のことだわな。

ここで賛同したら自分まで巻き沿いを喰らうからね。


「次は当てるからな。嫌なら早く帰れ」


「言われなくとも」


ここは大人しく、帰ってISISから国連の方に抗議したほうがいい。

だから、二人して引き返そうとしたところ、奥の戸棚が少し開いた。


あの戸棚…人が一人入れるぐらいはある!!


「ルビーさん!」


「確認するよ!」


戸棚に向かって銃口を向けて一言。


「味方なら出てこい!」


出てこなかったから迷わず1マガジン分撃つ。

散々.45ACPを撃ち込まれた戸棚の扉は壊れ、中からゴロリとサキスの兵が転がってきた。

ちゃんと制圧してほしいものだ。


「おい、なに俺等の区域で勝手に抜いてんだよ!」


「軍規的に問題はない。というかしっかり制圧作業はしろ」


「ふざけんな!!」


ついに私達に銃口が向けられた。

それもしっかりハンマー※2が起きている状態で。


「死ねぇ!」


ついに引き金が引かれた。

弾はコントロールが甘く、躱せると思ったが、これだと後ろからやってきた何も知らない兵が撃たれる。

ならここでは撃たれたほうがいい。


「う”っ」


弾は左胸に直撃したが、スーツのお陰で死なずには済んだが、衝撃はしっかり伝わった。

ロリボディにはこの衝撃は辛いものがある。


むこうも当てたことは流石にまずいと思っていたが、ここは軍人、表には出してないようだったが、こっちは表情を読み取るプロである。


「おいあんた!やっていいことわるいk「ルビーさんいいのです。ここで抜けば私達も同類なのです」そうね……」


もう、これ以上ココにいたら今度は頭を狙われるかもしれないから去る。

このことはしっかり抗議はさせてもらうけど…


二人で無言のまま基地を出て、テントへと向かう。

気は進まないが、報告のためだ。



◇◆◇◆◇



「ふざけんな!!だからお前らは売国奴なんだよ!」



案の定キレた。

一応テントで区域の報告と、先程あった発砲事件について知らせたところキレた。

まぁ、キレると思ったがここまでキレるとは思わなんだ。

まぁ、でも抗議はするけど。


でも何も言い返さず、無言の内にとっととテントをさり、ヘリを呼ぶ。

ヘリを待ってる間に参謀さんにはとても謝られたが、今後彼が他の諜報員に抜くとは限らないからここはしっかりさせてもらう。


まぁ、大体あの若者は良くて降格、悪いか普通だと除隊だわな。


と、思っている内にヘリが来た。


「話は聞いた。大変だったな。まぁ、乗ってくれ」


と言われ、ヘリに乗る。


そのヘリ内で…


「今日のことはしっかり報告し、抗議もしてもらう」


「そう、ならよかった」


「なのです」


「すまんな、まさかあんなことしでかすやつがいるとは思わなんだ」


そんなこんなで色々あった初任務は一応は終わった。



――――――――――――――――――――――――――――



※1:フレンドリーファイア

 …戦闘中、何らかの原因によって味方を攻撃してしまい損害を出してしまうこと。

  いわゆる誤射がが、その中でも味方だけに被害がある場合はこちらを指す。

  当たり前だが、やらかしてしまった場合は厳しい処罰が待っている。

  さらに当たり前だが、故意に味方を攻撃した場合はもっと重大な問題になる。

※2:ハンマー

 …トンカチのことではない。撃鉄とも言う。

  主にファイヤリングピン(撃針)もしくは弾薬の雷管を叩く為の部品。

  進んだ注※3

進んだ注※3

 …オートマティック(自動拳銃)ではファイアリングピン、

  リボルバー(回転式拳銃)では雷管を直接叩く。

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