第7話 後方支援なのです!
7月21日―A.M8:00―コンゴ民主共和国北部―
日が昇り、地平線の彼方に少々太陽の頭が見える頃、国連の連合軍はサキスの本部と、昨晩ダイヤたちが爆弾を仕掛けた発電所を制圧しにかかった。
合図は派手な爆発音である。
派手な爆発のあと一気呵成に攻め入った国連軍は相手が爆発で混乱しているところを潰しにかかったが、そうは問屋が降ろさなかった。
まるで爆発を気にもとめない戦いをするサキスの兵に押されていた。
そうこうしている内に2時間が経過した。
計画ではもう内部に踏むこんでいる頃だが、未だバリケードを破壊できていない。
挙げ句、増援までくる始末。
そんな折、ジュエルセクションに一本の無線が入った。
『ISISジュエルセクションは至急本部攻略をヘリから援護すること。オーバー』
返事も聞かずに切られた無線機の前でサファイアは「了解しました」とだけ言ってからダイヤたちの方を振り返って、
「さて、今聞いたとおりだが、今回の攻勢は中々手こずっているようだ。
そのため、私達もその援護に回る。
エメ、ヘリを出してくれ」
「了解ですぅ〜…あ、その前に援護ならダイヤちゃんにはこれ上げますよ〜」
といってエメラルドは近くに置いてあるケースから1丁の擲弾発射器―まぁ、グレネードランチャー※1を持ってきた。
「多分、ガトリングガンは大きくて使いにくそうだから、私特製のグレネードランチャー上げますよぉ〜。
急ぎなので、詳しいことはサファイアさんから聞いてくださいぃ〜」
とだけ言ってヘリの用意をしにいくエメラルドを横目にみんなそれぞれの準備にかかる。
ルビーはアサルトライフルのバレルをロングな16インチの肉厚バレル※2に変える。
マズルアクセサリはサプレッサーかからフラッシュハイダー※3に変える。
最後にアンダーバレルはグレネードランチャーに変える。
ダイヤはサブマシンガンのバレルを延長し、ホロサイトを1−3kショートスコープに変える。
そして、先程エメラルドからもらったグレネードランチャーを背中に背負う。
サファイアとトパーズはヘリに弾薬、銃器などの荷物を運び込む。
ものの数分で用意を終えたダイヤたちはヘリに乗り込む。
ちなみにジュエルセクション所有の中型多目的ヘリであるUN‐60Lのパイロットは基本エメラルドである。
乗り込んだことを確認したエメラルドはヘリを飛び立たせる。
そしてそのまま黒い鋼鉄の鳥は太陽が眩しいアフリカの空をものすごいスピードで飛んでいく。
◇◆◇◆◇
「さて、早速そのダイヤの持っているグレネードランチャーだが、分かってると思うが、エメが1から造ったオリジナルのものだ。
性能的には十分すぎるほどだ。
まず、弾は20mm特殊榴弾※4だ。
これもエメのオリジナルだ。
で、性能は当たりどころにもよるが基本装甲車なら6発、ヘリなら3発ほどで沈む。
うまく行けば1発2発少なく墜とせるかもしれん。
装弾数は2発、バレルは上下についた中折式※5だ。
弾は下のバレルから出る。
グリップはピストルグリップ※6で、ラバーグリップだ。
ストックは軽いスケルトンストックにしてある。
スコープマウントには専用のホロサイトを付けてある。
見たら分かるが、少々レティクル※7の表示が変わっている。
あと、コレが一番大事だが、こいつは反動は小さく、かつ、弾は結構水平に飛んでいくと思え。
だからこいつはグレネードランチャーとロケットランチャー※8を足して二で割ったみたいなものだ」
「わかったのです」
構えてみると結構構えやすく、私のちっこい体にあう。
そんな感じに新しい銃器についてのレクチャーを受けていると…
「そろそろ現場ですよぉ〜。お二人共準備をお願いしますよぉ〜」
と言われたのでドアを開ける。
そして下を見下ろすと、国連軍とサキス軍がぶつかっていた。
それも国連軍が押される形で。
見たとこ、向こうは地の利もあり、かつ、増援も来ているようだった。
「あー…
「なのです…」
「さて、やるよ。私は下を見るからダイヤちゃんは上をお願いね」
「わかったのです」
ルビーさんがアサルトライフル―NB−15で下にいる国連軍の援護を始めたところで私は私達のヘリと同じ様に基地周辺を飛び回る敵のヘリに狙いを定めた。
「まず一発なのです」
試しに一発撃ってみると思ったよりしっかり水平に飛んでいき、敵機の上部に命中した。
「おお…」
続けて二発目を撃ち込む。
標準はさっきより少し下げている。
放たれた榴弾は側面にジャストでぶつかった。
煙が晴れて敵機を確認すると、ヘリの床に座ってこっちを狙ってきていた兵が落ちたのかいなかった。
これで、あのヘリは一時離脱か、その場で旋回してこっちに襲いかかってくるかの二択である。
おっと、逃げていった。
「おお〜やるね~」
「そうなのです。この子すごくクセが無いのですよ」
このグレポン、クセがホントに無い。
素直で、扱いやすい。
それでいて威力もある。
現にあのヘリからは黒煙が立ち上っている。
そんな間にもルビーさんはNB−15をフルオートで撃ちまくる。
放たれた弾は恐ろしく良い精度で敵兵を射抜いていく。
「あっ、また増援」
「不味いな、ヘリも装甲車も増えてきたぞ」
「これじゃ埒が開かない」
というとルビーさんはNB−15を捨ててヘリに備え付けられているガトリングガンを構える。
「とりゃぁー!」
なんか妙にかわいい掛け声と共にガトリングガンで敵兵をなぎ倒していく。
その横で、私もヘリや装甲車にグレネードをぶち込んでいく。
「よし、雑魚の処理は任せろ」
サファイアさんはルビーさんが捨てたNB−15を手に取り、ガトリングガンでうち漏らした兵に弾を撃ち込んでいく。
「おいエメ、1回離脱だ。このままだと基地の中心部に追いやれれるぞ」
「わかりましたぁ〜」
エメさんが一気にヘリを旋回させ、包囲網を抜ける。
追ってくるヘリは私が撃ち落としていく。
このグレポンめっちゃ優秀で、あのガンシップのフロントガラスぶち破れるからコックピット狙って当ててやればパイロットが自然とヘリを地面に墜としてくれる。
やはり女性に優しいのは全世界共通と言ったところか。
「よし、そろそろ基地の端だ。もう少し行ったら旋回し、基地の周りを飛んでくれ」
「わかりましたぁ〜」
包囲され叩かれる状況から脱し、こちらにも余裕が出てきた。
が、依然地上は押され気味だ。
そんな風に地上を見てるとこっちもやばいことになった。
「ワンダーフォーゲルですぅ!フレア炊きますぅ!」
「IRサプレッサー※9も起動しろ!
「わかりましたぁ!!」
地対空赤外線・紫外線誘導ミサイル―
ヘリにとってはツバメやハトなんて可愛いものじゃなく、タカのような狩人である。
ただのフレアじゃ落とされ、このヘリみたいに最新の装備を積んで無いと落とされる悪魔のような兵器。
幸いにも今回は回避でき、ミサイルは空の彼方へと消えていった。
射手はルビーさんによって素早く殺された。
「ふぅ…」
「ダイヤ、一息つきたいところだが新手だ、装甲車を頼む」
「わかったのです」
銃口を装甲車に向けて一発二発素早く撃つ。
弾はキレイに装甲社の後部に着弾し、それと同時に、サファイアさんの持ってるBN−15のグレポンも着弾した。
素早くリロードし、先程撃った真ん中の装甲車の左右の装甲車に一発ずつ入れる。
「およ?なんで一発で潰れたのです?」
「おー!ダイヤちゃんすごいよ!!ジャストで装甲車のパッチの中に弾入ったよ!!!」
「そーゆうことなのですか!!」
「やるなぁ!!」
「すごいですよぉ〜!!」
ここでヘリ内が大いに盛り上がる。
よく見れば、内部での爆発だからか、外部には傷はあんまりない。
そのまま勢いづいたまま、装甲車、特に最連列を狙ってグレポンをぶち込む。
そんな風にして上空からの援護をすること早数時間。
ようやく、向こうの波も落ち着いてきた。
「こりゃもうラストウエーブだ。ここを押し切りゃサキスは落ちる」
「だね」
「なのです」
「ですねぇ〜」
「エメ、一気に行くぞ」
「わかりましたぁ〜!」
というとエメさんはヘリを大きく旋回させ、サキスの兵を正面に捉える。
「いっきますよぉ〜!」
エメさんのどこかほんわかした掛け声と共にヘリからとあるものが放たれる。
空対地ミサイル―装甲車程度なら軽く捻れるバケモンミサイルである。
そんなミサイルが4門放たれた。
迷うことなく装甲車数台に突っ込んだミサイルはキレイに敵兵を焼き払った。
「クリアですぅ。残敵なしですぅ」
「そうか、敵に注意してこの基地のヘリポートに降りてくれ」
「わかりましたぁ〜」
ようやく聞けたクリアの声。
これだけで、少しは肩の力が抜ける。
「お疲れ〜ダイヤちゃん、サファイアさん、エメさん〜」
「お疲れ様なのです〜」
「お疲れ様」
やっと一息ついたところで無線が。
『ただいま発電所の内部制圧が済みました。
完全制圧です。なので皆さんは本部の完全制圧の方、よろしくお願いします』
「オーケーロリコン」
『◯ね、サファイア』
無線が切れた。
と、同時にヘリが本部にあったヘリポートに着いた。
「降りるよ〜」
「わかったのです」
「ふたりとも頼んだ」
私とルビーさんが降りる。
ヘリは再び、空へと消えた。
さて、最後の詰めをしっかりするよ。
7月21日―P.M.2:00―コンゴ民主共和国北部サキス本部―
――――――――――――――――――――――――――――
※1:グレネードランチャー
…擲弾発射器とも言う。
簡単に言うと擲弾を発射するための銃器。
通常、口径20mm以上の火器は砲として扱われるが、
擲弾発射器は運用、形態などの問題から小火器として
扱われることが多かったりする。
代表的なものに
M320 グレネードランチャー、アメリカのM79グレネードランチャー、
イタリアのベレッタ社のGLX160、
南アフリカのアームスコー社のダネルMGLなどがある。
※2:肉厚バレル
…ヘビーバレルとも言う。
一般的なバレルより、重く、取り回しが聞きにくい代わりに強度が高く、
熱に強く、精度が高く、振動が少なくなっているバレルのこと。
※3:フラッシュハイダー
…フラッシュサプレッサー、消炎器とも言う。
銃身の先端に装着し、発火炎(マズルフラッシュ)の発生を抑える装置である。
フラッシュハイダーと同様、銃身先端に装着するものに
マズルブレーキがあるが、目的や効果は異なる。
しかし、現代の小火器においては
マズルブレーキとフラッシュサプレッサーの機能を兼用した設計のものが多い。
※4:榴弾
…主に爆発によって弾丸の破片が広範囲に飛散する爆弾のことを指す。
21世紀現在はである対戦車榴弾や粘着榴弾など、着弾時に火薬の効果を用いる
砲弾に限らず爆弾の内部に炸薬を詰めたものも指すとしての意味合いもある。
※5:中折式
…元折式、ブレイクオープン、ブレイクバレル、ブレイクトップ、
トップブレイクアクションとも言う。
銃身にヒンジを有する銃を示す方式であり、尾栓(ブリーチ)を銃腔の中心軸に
対して垂直に回転させることで弾薬の装填および排莢を行うものである。
進んだ注※11。
二連小銃において普遍的な方式であり、他にも単発の小銃、拳銃、散弾銃や、
信号拳銃、グレネードランチャー、空気銃のほか、
いくつかの旧式の回転式拳銃にも見られる。
※6:ピストルグリップ
…主機構(バレルなど)の下にはっきりと突き出たグリップのことで、
ピストルの持ち方で持てるグリップのこと。
イタリアのベネリ社のベネリM4などがピストルグリップである。
※7:レティクル
…スコープなどで標準を合わせる十字やT字の線のこと。
最近は距離を測るメモリや、落下予想線などのことも指す。
※8:ロケットランチャー
…ロケット弾を発射する兵器のこと。
単純に発射筒を肩に担いで手動で照準、発射する方式や、
ポッドとして航空機に搭載する方式や、
砲兵に準じて運用する大型のものもある。
代表的なものにドイツのパンツァーファウストシリーズや、
ソ連のRPGシリーズがある。
めっちゃロマンが詰まってる。(byよんごー)
※9:IRサプレッサー
…ヘリなどに備わっている防御機能の一種。
主に熱源探知ミサイルなどから逃げるため、熱がバンバン出てる
エンジン部分に熱を上に逃がし、熱源探知から逃れる装置のこと。進んだ注※12
※10:
…ヘリなどに備わっている防御機能の一種。
主に赤外線誘導ミサイルからの攻撃を防御する装置。
詳しいことは省くが、要はミサイルの赤外線探知部分を破壊するための仕組み。
進んだ注※11:
…銃によってはこの動作とは別に撃鉄を起こす操作(コッキング)が次弾発射前に
必要となる場合がある。
進んだ注※12:
…究極は某戦闘ヘリみたいに特別なダクトを備え、エンジン全体を外気で包み、
そのまま後方から排気ガスと混ざる様に層にして排出する装置である。
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