第5話 初任務なのです!その1
7月20日―P.M10:30―コンゴ民主共和国北部上空―
ダイヤが着任してからおよそ1年と少し。
ジュエルセクション初の任務である。
任務は発電施設の破壊。
ターゲットは配電盤、電源設備、送電設備、通信用アンテナ。
敵に見つかってはいけないスニーキングミッションである。
空に響くのは一機のヘリの羽音だけである。
「よし、そろそろ目的地だ。で、ヘリは発電所の近くに降下する。同時に降下地点がランデブーポイント※1となる。いいか、これはスニーキングミッションだ。敵に見つかるな、面倒なことになる」
「「了解(なのです)」」
というとルビーはヘリのドアを横にスライドさせ開け、外を眺める。
その目は緊張しているが、自信のある目つきである。
ダイヤは同じ様に外を眺め、覚悟の決まった目をしている。
二人が最後の武器点検をしていると降下地点に到着したようでふたりともヘリから飛び降りる。
「Good Luck!」
「「そちらこそGood Luck」」
とだけ交わし、二人は発電施設に向かって走り出した。
◇◆◇◆◇
ランデブーポイントから十数分走ると発電所が見えてきた。
距離にしておよそ数百メートルといったところである。
発電所は三方が岩山に囲まれ正面からしか入れないようである。
だが、私たちはスニーキングミッションとして来ているため、警備がしっかりしている正面からは避けたい。
「どうする?」
「正面からは避けたいのです…」
「でも、あの山を登るには辛くない?」
「そうなのです…」
「一応潜入ルートはあるけど…今日に限って警備状況が変わってるんだよね……」
そう、なぜか知らないけど、今日に限って警備がいつもと違うのだ。
だから、考えたルートは使えない可能性がある。
「おっと」
双眼鏡を覗きながら考えていると、車の走る音が聞こえた。
そのため素早く岩陰に隠れる。
するとすぐにトラックが1台走ってきた。
そのトラックは見たとこ発電所に向かっているみたいである。
キキー!
ん?なんか止まった。
双眼鏡に付いている指向性マイクで音をひろうとどうやらパンクしたみたいである。
なら一ついい作戦ができた。
「ねぇ、今のうちにあの荷台に忍び込んでトラックに運ばれて潜入しない?」
「そうするのです」
ルビーさんも同じこと考えてたのです。
ということで兵士二人が前輪のパンクを治すため、色々している隙に荷台にサクッと忍び込む。
トラックの荷台は嬉しいことにシートで覆われていたため、外から見えることはまず無いだろう。
荷台に乗ると無線が来た。
『どうだ?』
「なんとかトラックの荷台から侵入できそう」
「なのです」
『そうか、くれぐれも気をつけてくれよ。あとジャパンにはこんな言葉がある。いのちだいじに、だ。危ないと思ったら途中でもいいから帰ってきてくれよ』
「わかった」
「なのです」
『あ、あとジャパンでは断じてとある王国でプラプラ様の石像の前で、パンを尻に挟んで右手の指を鼻の穴に入れて左手でボクシングをしながら「いのちだいじに」と叫んではいけないらしいぞ。まぁ、注意してくれ』
「「は?」」
無線が切れた。
え?なに最後の意味深な発言は?
え?なに?ナニイッテンノ?
ま、ままええわ。そろそろ目的地っぽいし、降りる準備と行こうか。
トラックが止まったのを確認し、ひょっこりシートの隙間から外の様子を伺い、サッとトラックを降りる。
そして素早く物陰へ。
ここで一度無線。
「こちらダイヤなのです」
「同じくルビーだよ」
「潜入したのです」
『そうか、では、C-4※2を仕掛けてくれ。オーバー』
報告を済ませ、破壊するもの類が集まっている大きな建物目掛けて進む。
道中はなるべく戦闘を控え、隠れて進む。
足音はブーツが消してくれるからなんかの拍子に
そんなこんなで入口に着いた。
「あれいけそう?」
「無理なのです」
「だよねー」
なんか監視カメラとか、兵士が多いから諦め、どこか別ルートからの侵入を試みる。
「お、あそこ、窓空いてね」
「なのです」
はいご都合主義的なアレ。
早速窓枠に手をついて中に入る。
うん、なんかあれだね、ルビーさんはスタイリッシュにスッと入るけど、私の場合、ジャンプして手をついてそのままの勢いで侵入するわけですよ。
だからね、なんかすっごい見てて和むらしいのよ。
私としてはもっと某インポッシブルな任務の映画みたいにかっこよくしたいわけですよ。
さて、そんなこと…では無いけど置いておいて侵入した部屋はどうやら仮眠室のようで、ちょうど一人、兵士が眠っていた。
「よし、侵入完了したし報告するね」
「おっけーなのです」
「侵入完了。これより破壊工作に入るね」
『分かった』
『大丈夫ですか?』
「ああ、問題ない」
「なのです」
『そうですか…お二人とも、特にダイヤちゃん、気をつけてくださいね。世の中家のオフィサーみたいなロリコンで溢れてますから…』
『おい誰がロリコンだと言ってるんだお前は』
『どこぞのオフィサーですよ~だ』
なんか喧嘩始まったし、スッと無線を切る。
「よし、出発だね」
コクリと頷くと、ルビーさんがハンドガン―エメオリジナルを構え、ドアを押す。
ドアが開くとそこには…
交代に来たであろう兵士がいた。
みんな1秒ほどときが止まり、一番はじめに動いたのはルビーさんだった。
素早く兵士の口元と右腕に手を伸ばし、拘束。
すかさず私がエメオリジナルを抜いて銃口を向ける。
そしてそのままルビーさんが首を絞め殺す。
「こいつはベッドで寝かせとこっか」
「なのです」
ベッドに寝かせると改めて扉を開け探索を開始する。
ルビーさんが前、私が後ろを警戒するツーマンセル※3である。
「前方に二人、おそらくあの中に送電設備、電源設備のメインコンピュータがあるはず」
「アレを落とせば、配電盤自体も落ちるはずなのです」
「だね、あそこを制圧してC-4を仕掛けりゃ一気に3つ目標達成できそうだね」
「いやーこういうときのいろんなシステムを統括しているコンピュータがあるだけでこっちとしてはやりやすいのです」
「だね〜…」
と、会話もコレぐらいで、私は右の兵士、ルビーさんは左の兵士目掛けて銃口を向け引き金を引く、放たれた弾は確実にバイタルを射抜いた。
ちょうど、ボディアーマー※4は来てなかったし、頭は色々飛び散って処理が面倒くさいからちょうど良かった。
一応2発は撃ち込んでおく。
死んだふりとか勘弁だからね。
倒れたのを確認するとルビーさんが周囲を警戒し、私はその隙にドアの鍵をピッキングする。
カチャカチャとしていると開いたため、倒れている二人を室内に運び込む。
この際地面とかに付いている血は近くにあったタオルで軽く拭いておく。
こうすればしばらくはバレないはず。
「よし、ココに置こっか」
「わかったのです」
小さなウエストポーチに入ってる超小型のセムテックスをコンピュータに仕掛ける。
なんかあったときのため2個ほど置いておく。
「ダイヤなのです。メインコンピュータにC-4を設置、これで、配電盤、電源設備、送電設備が落ちるのです」
『そうか、よくやった。ところで、大丈夫か?』
「うん、バレてないよ」
『そうか、では引き続き通信用アンテナを頼む』
「了解なのです」
報告を終えて、私達は次のターゲットであるアンテナに向かおうとする…
「おい、交代の時間だぞ…」
「たく、しっかり立っておけってんだよ…」
と言いながらドアが開く、
これで反応が遅れたら、それこそ工作員としては失格である。
なので交代でやってきた兵士が状況を飲み込む前にエメオリジナルを向ける。
「動くな」
相手は驚いた様子で手を挙げる。
「跪け」
と、ルビーさんが言うとルビーさんが銃口を向けている相手は大人しく、膝を着いたが、私の方はそうは行かないらしい。
「へっガキは帰って寝る時間だぜ。お嬢さん」
「いいから跪くのです」
「なにガキがいっちょ前に言ってんだ」
「これが最後なのです。跪いて両手を後頭部に持ってくのです」
「はっ、お前みたいなガキにやられるほどやわな訓練してないんだよっ!」
といって腰からナイフを抜いて襲いかかってくる。
でも、コレぐらい止まって見える。
下に出された右手をひらりと避け、跳び上がり、足を首に巻き付ける。
そしてそのまま、地面に投げる。
最後にうつ伏せに倒れた兵士相手にハンドガンを頭に突きつける。
「もう一度言うのです…頭を後頭部に載せるのです」
とだけ言うと流石にわかったのか恐る恐る手を後頭部に持って行く。
その横でルビーさんもうつ伏せにさせていた。
「よし、二人には一つ聞きたいけど、この上の階に通信設備があるんだよね」
「あ、ああ、あるぞ」
「嘘言ってるのです」
「だね」
パスっと軽い音と共に一人の兵士の命が消えた。
心臓を確実に射抜かれ、絶命した。
「さて、本当はどこにあるのかな?」
「さ、3階の指揮本部だ」
「そ、ありがとね」
こっちも天国に送ってやる。
死因は脊椎の骨折である。
「こいつらも奥に置いておこう。ダイヤちゃんは血の処理頼んだよ」
「わかったのです」
ささっと血の処理を済ませ、改めて2階へと向かう。
――――――――――――――――――――――――――――――
※1:ランデブーポイント
…合流地点のこと。
主にヘリが待機できるところなど、安全なところが選ばれる。
※2:C-4
…高性能プラスチック爆弾の一種。
B1とかテロリストのC-4とも呼ばれてたりする。
※3:ツーマンセル
…二人一組で組む最小ユニットのこと。
バディとも言う。
三人一組はスリーマンセルと言う。
※4:ボディアーマー
…フラックジャケット 、バリスティックベスト 、ブリットプルーフベスト 、
防弾チョッキ、防弾ベスト、防弾衣などとも言う。
銃弾等から体を守るための防護服のこと。
性能はピンキリでピストル弾程度しか阻止できないものから、
徹甲弾をも阻止できるものまである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます